「ロエベ」2020年メンズ春夏は南仏のリゾートへ誘うリラクシングな装い

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2019年06月24日 20:03  Fashionsnap.com

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今シーズンのパリ・メンズは、ヨーロッパのリゾートを連想させるスタイルが様々なメゾンから提案されている。なかでも白眉だったのが「ロエベ(LOEWE)」だ。
(文:ファッションジャーナリスト 増田海治郎)

 クリエイティブデイレクターのジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)は、アートと伝統工芸に造詣が深い。2回目のメンズのショーとなる今シーズンの会場は、ウィメンズと同じくパリ左岸のユネスコ本部のホール。ロンドンを拠点に活動するアーティスト、ヒラリー・ロイド(Hilary Lloyd)の作品9点が、クロム製の円柱と台車の上に置かれたモニターに投影されている。やや難解な表現だが、ジョナサンは「彼女の作品は、様式化された建築的なフレームを強いながら、持続する時間の伝統的な概念に抵抗している」と説明している。

 今回のコレクションは、そんなヒラリーの作品との対話の中から生まれた。「宇宙的な遊牧生活の夢のようなフィルターを通して、ありふれた日常を格上げし、身も心も旅に出る」というコンセプトのもと、縦長のロング&リーンなシルエットで、上質でマリンリゾート感あふれるスタイルを提案している。
 まず言及したいのは、ロエベのシグネーチャーであるカシミアのように滑らかなスエード「オロ」を使ったアイテム。中東のカフタン調のプルオーバーや、ワークテイストのオーバーオールなどを、ブラウン、ピンク、ネイビーなどの柔らかい色味のオロで作っている。サステイナブルの流れの影響でリアルレザーの使用を控えるブランドが多くなってきているなかで、本物の上質さが際立って見える。

 ジョナサンにとって、メンズのワンピースはもはや"日常運転"のアイテム。今シーズンは、バングラデシュで織られているという白地に赤の刺繍が施されたヴィンテージのテーブルクロスのようなコットン、ざっくりしたリネンのマルチストライプ、ビーチタオルをそのまま身につけたようなワッフルなどで表現されている。

 ニットが充実しているのも特徴のひとつ。ボーダーのリブ編みのプルオーバーのニットは、コート並みの膝下までの長さで、同じ素材&柄のニットパンツをセットアップで合わせる。大きなシェブロン柄のローゲージのニットは、春先の湿度が低い日にざっくり羽織りたい1枚だ。

 靴は、切り込みが入ったダブルリングモカシンや、グラディエーターサンダルなど。オーガンジーで作られた耳や胸元を飾るユリの花弁のようなアクセサリーもリゾート感を盛り上げるアクセントになっており、エレファントがあしらわれたフォンケースは遊び心を感じさせる。

 「真夏のような気候のパリを抜け出して、南仏のビーチで太陽と戯れたい!」。そんな叶わぬ妄想をしてしまう、ハッピーでしなやかで肩の力の抜けたコレクションだった。
【全ルックを見る】LOEWE 2020年春夏メンズコレクション
増田海治郎雑誌編集者、繊維業界紙の記者を経て、フリーランスのファッションジャーナリスト/クリエイティブディレクターとして独立。メンズ、レディースの両方をカバーし、「GQ JAPAN」「OCEANS」「SWAG HOMMES」「毎日新聞」などで健筆をふるう。初の書籍「渋カジが、わたしを作った。」(講談社)が好評発売中。
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