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中華料理チェーンを不当解雇され訴えたら…「雇ったのは別の会社」と3つの会社をたらい回しに! うち1社は連絡先も不明

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2019年06月26日 15:00  リテラ

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リテラ

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 労働条件の確認はとても大事という話をしたい。



 少しだけ理屈を言うと、労働契約は、働くこと、賃金を支払うことについて「合意」すれば成立することとなっている(労働契約法6条)。ようするに、雇用契約書などの書面がなくても、口約束をすれば、労働契約は成立してしまうのである。

 ただ、口約束で済ましてしまうと、後に、言った言わないの話になり、大きなトラブルになってしまうことがある。今日はその話をしたい。



  担当事件は、「使用者」が誰かわからない事案である。

依頼者は、ハローワークで、中華料理チェーンA社の求人票を見て、そこに書かれた住所を訪れて、D社長から面接を受けて、内定をもらった。給料は月30万円とのことであった。でも、雇用契約書や、労働条件通知書などの書面はまったくもらわなかった。

相談者は、その中華料理チェーンで、ホールスタッフや宅配スタッフとして働き始めたが、給料が25万円しか払われないなどの苦情を言ったところ、結局、解雇されてしまった。



 相談者は、この解雇はおかしいと考えて、労基署に相談の上、A社に内容証明を送ってみた。すると、A社の回答は「いやいや、あなたを雇ったのはA社ではありません。B社です」というものであった。



 相談者は、「それでは」ということで、今度は、B社に対して、簡易裁判所での裁判を起こしてみた。すると、B社の回答は、「いやいや、あなたを雇ったのはB社ではありません。C社です」というものであった。



 確かに、相談者が、働いていたときの給与明細を確認してみると、給与明細は、「C社」名義で発行されていた。

 でも、C社は、住所もわからないし、電話番号もわからないし、代表者も、その他の連絡先もわからない……。そもそも、入社時に契約書もつくっていないし、労働条件通知書ももらっていない……。



「いったい誰が俺の雇い主なんだ!」困った相談者が私のところに相談に来た。

これは悪質な事案であるということで、弁護団を組んで、知恵を絞り、A社、B社、C社の3社と、さらにD社長も加えて、被告を4人として、まとめて一本の訴状で提訴することにした。こうすれば、他社に責任をなすり付け合うこともしづらくなるし、D社長は実在の人物だし逃げられないだろう。



裁判を起こしてみると、被告4人の代理人に同じ代理人弁護士がついた。

当方は、A社・B社・C社の役員が共通することや、B社宛ての裁判所からの手紙をA社の従業員が受け取っていることや、労基署や裁判所に対するD社長の弁解内容など、もろもろの調査をして主張立証を尽くしたところ、裁判所の説得もあって、なんとか相談者が満足する和解にこぎつけることができた。



●雇用契約書、労働条件通知書をもらって保存しておくことが重要



 このケースで伝えたいことは、裁判では基本的に訴えた側が立証責任を負うこと、労働契約内容の立証責任は労働者が負うこと、この事例で言えば、「誰が使用者か」や「賃金を月30万円とする合意が成立したこと」などは労働者で立証できないと敗けてしまうということである。



 こういうこともあるので、労働基準法15条(と労働基準法施行規則5条)は使用者に、労働条件明示義務を課している。「労働条件通知書」という書面で示されることが多いから、この通知書については知っている方も多いかと思う。

 とにかく、労働契約締結時には、雇用契約書、労働条件通知書などを貰っておいて、これを保存しておくことが重要なのである!                 



【関連条文】



労働契約法6条(労働契約の成立)

労働基準法15条(労働条件の明示)

労働基準法施行規則第5条(労働者に対して明示しなければならない労働条件)

労働契約法4条(労働契約の内容の理解の促進)



労基法15条1項、及び、労基法施行規則5条1項に基づいて

※書面で明示しなければならない事項

1 労働契約の期間

2 有期労働契約を更新する場合の基準

3 就業の場所、従事する業務の内容

4 始業・終業時刻、残業の有無、休憩時間、休日、休暇、就業転換(交替制勤務のローテーション等)

5 賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締切り・支払いの時期

6 退職に関する事項(解雇の事由を含む)



※口頭の明示でもよい事項

7 昇給に関する事項

8 退職金の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法、支払いの時期

9 臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項

10 労働者に負担させる食費、作業用品、その他に関する事項

11 安全・衛生に関する事項

12 職業訓練に関する事項

13 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項

14 表彰、制裁に関する事項

15 休職に関する事項



(弁護士 蟹江鬼太郎/旬報法律事務所 http://junpo.org/labor)

主な担当事件:

洋麺屋五右衛門(変形労働時間制)残業代請求事件

阪急トラベルサポート(事業場外みなし労働時間制)残業代請求事件

阪急トラベルサポート(アサイン停止)不当労働行為事件

阪急交通社(団交拒否)不当労働行為事件

リコー(技術者・出向無効確認)事件

営業職員の脳梗塞事件(2010年労災認定)

大手塾講師の過労うつ病事件(2010年労災認定)

物流管理職の過労自死事件(2015年労災認定)

若年管理職の心筋梗塞事件(2014年労災認定)

外勤職員の心停止事件(2014年労災認定)

トラックドライバーの脳内出血事件(2014年労災認定)

出向後・過労自死事件(2012年労災認定、2016年3月17日東京地裁判決)

NHK女性記者の心停止事件(2014年労災認定)

電通新入女性社員過労自死事件(2016年労災認定)



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ブラック企業被害対策弁護団

http://black-taisaku-bengodan.jp



長時間労働、残業代不払い、パワハラなど違法行為で、労働者を苦しめるブラック企業。ブラック企業被害対策弁護団(通称ブラ弁)は、こうしたブラック企業による被害者を救済し、ブラック企業により働く者が遣い潰されることのない社会を目指し、ブラック企業の被害調査、対応策の研究、問題提起、被害者の法的権利実現に取り組んでいる。

この連載は、ブラック企業被害対策弁護団に所属する全国の弁護士が交代で執筆します。


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