『X-MEN』も『ゴジラ』も『ジョン・ウィック』も ハリウッドを席巻する『ゲースロ』スターたち

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2019年06月27日 13:21  リアルサウンド

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『X-MEN:ダーク・フェニックス』(c)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

 先週末の映画動員ランキングは引き続き『アラジン』が2位以下を引き離して独走。土日2日間で動員69万1000人、興収9億9600万円をあげて、これで3週連続1位となった。6月23日(日)の時点で動員385万人、興収55億円を突破。今週末には超強力作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』の公開が控えているが、『アラジン』の現在のペースが続くようだと初登場1位を阻まれる可能性も?


参考:『X-MEN』ソフィー・ターナーのインタビュー映像 「ジーンは単なる主役ではなく“敵”でもある」


 通常期だったら十分に1位を狙えたという意味では、先週末初登場2位の『ザ・ファブル』も惜しかった。土日2日間の動員は22万9000人、興収は3億1000万円。初日から3日間の累計では動員30万人、興収4億円に届く勢いの好調なスタート。配給の松竹は、今年どころか一昨年11月公開の『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』以来1年半以上、作品を首位に送り込んでいないが、今回は久々となる絶好のチャンスを『アラジン』現象に潰されたかたちだ。


 今回注目したいのは、3位に初登場したX-MENシリーズの最新作『X-MEN:ダーク・フェニックス』。土日2日間の動員は9万5000人、興収は1億3200万円。『LOGAN/ローガン』や『デッドプール』シリーズといったスピンオフ作品を除いたX-MENシリーズの新作としては、2016年8月公開の『X-MEN:アポカリプス』以来約3年ぶりとなる本作。2000年に始まったX-MENシリーズは、スーパーヒーロー作品にシリアスな社会的テーマやキャラクター造形を導入し、ある意味ではその後のダークナイト3部作、MCU作品、DCユニバース作品の先駆け、つまり現在のスーパーヒーロー映画ブームの発火点でもあった。ディズニーのフォックス買収完了によってフォックスによるX-MENの本シリーズは今作で幕を下ろす(スピンオフ作品『The New Mutants』はアメリカ本国では来年4月劇場公開される予定)こととなったが、結局日本ではスーパーヒーロー映画ファンの外への広がりをみせることはなかった。


 『X-MEN:ダーク・フェニックス』が日本で一般層を取り込めなかった理由として、「スーパーヒーロー映画であること」「制作者たちの意図しないシリーズ最終作に結果的になってしまったこと」「海外での評価が今ひとつなこと」(これは一般層はあまり気にしないかもれないが)以外に考えられるとしたら、タイトルにもなっているダーク・フェニックスを演じた主演のソフィー・ターナーの知名度かもしれない。期間限定の企画上映された作品(『ベアリー・リーサル』)を除くと、彼女がこれまで出演したことのある日本での劇場公開作はシリーズ前作『X-MEN:アポカリプス』の1作品のみ。にもかかわらず、今作ではジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、ジェニファー・ローレンス、ジェシカ・チャステイン、ニコラス・ホルトら並みいる名優たちを従えて堂々とメインロールを張っている。


 もちろん、別にこれは「大抜擢」というわけではなく、今年5月に最終章のフィナーレを迎えたばかりのテレビシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』の異常人気と同作における彼女の存在感の大きさをふまえれば順当な役者としてのステータス。日本でもここにきてメディアで特集が組まれるなど認知度が増してきた『ゲーム・オブ・スローンズ』だが、まだ同時代の海外の人気テレビシリーズを見ることがそこまで日常化してない日本の観客の中には、彼女がどうしてこんなに大きな役をやっているのか不思議に思った人もいただろう。


 2010年代に入ってから、テレビシリーズで大きく知名度を上げた役者がハリウッド大作で重要な役を演じることは常態化しているが、中でも『ゲーム・オブ・スローンズ』は群を抜いて大きな影響力を映画界に及ぼすようになってきている。今年のヒット作だけでも、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』で(モンスターではなく人間の)敵となる環境テロリストのボスを演じたのは、『ゲーム・オブ・スローンズ』でラニスター家総督タイウィン・ラニスターを演じたチャールズ・ダンス。日本では10月公開となる『ジョン・ウィック:パラベラム』で暗殺者のボスを演じたのは、『ゲーム・オブ・スローンズ』で切れ者の傭兵ブロンを演じたジェローム・フリン。ソフィー・ターナーによるダーク・フェニックスと『ゲーム・オブ・スローンズ』終盤以降のサンサのキャラクターのシンクロぶりもそうだったが、注目すべきは、ただ映画で大きな役にキャスティングされているだけでなく、そこには必ず『ゲーム・オブ・スローンズ』での役への目配せがあること。


 既報の通り、『ゲーム・オブ・スローンズ』の主要クリエイターは2022年から始まる新しい映画版『スター・ウォーズ』シリーズを手がけることが決定しているが、それを待たずして、もはや『ゲーム・オブ・スローンズ』を見ていなければハリウッド映画の大作で制作者たちが何を意図しているのかが正確にはわからない時代へと突入している。(宇野維正)


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