『あなたの番です』を深読み考察 真犯人はいったい誰!?  伏線は「反撃編」で回収されるのか?

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2019年06月30日 06:11  リアルサウンド

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『あなたの番です-反撃編-』(c)日本テレビ

 いよいよ「反撃編」がスタートする『あなたの番です』(日本テレビ系)。4月の放送開始時からこれまでの視聴率を見るとヒットしているとは言い難いが、録画視聴やTVer(ティーバー)などのイッキ見で、どんどんハマる人が増えてきたようだ。2クール全20話への挑戦は、かなり厳しい戦いになるように見えたが、「反撃編」の始まりと共に作品としても反撃しそうな勢いがある。こういうことがあるから連続ドラマは面白い。


参考:『あなたの番です』特別編、原田知世は誰に怯えていた? 「反撃編」に向けた重要な物語に


 第10話と特別編までは、東京イーストサイドのマンション「キウンクエ蔵前」に引っ越してきた新婚夫婦、手塚菜奈(原田知世)と手塚翔太(田中圭)が、住民たちが余興で「自分が殺したい人」を紙に書いて交換したことから起こった連続殺人に巻き込まれていった。マンションにはサラリーマン家庭や独身の男女、外国人の日本滞在者など、さまざまな立場の人が暮らしている。ただ、全員が「ちょっとずつ変」(菜奈の言葉)で、連続殺人も含め、現実ではありえないようなことが起こる。


 しかし、イッキ見していると、袴田吉彦演じる久住が唐突に「袴田吉彦って知っていますか?」と言い出しても、それを受けた菜奈が「知ってますよ」とブレンディな笑顔で応じ、袴田の唯一のCDリリース曲「本トの気持ち」をブレンディな声で歌っても、翔太が妻相手とはいえ「めちゃくちゃ気持ちいいセックスしよう」と赤名リカ(『東京ラブストーリー』)のようなあざといことを言っても、はたまたギャグとしか思えない土下座よりきついポーズで本気を表現しても、劇団そとばこまち出身の生瀬勝久が演じる田宮とその妻(劇団第三舞台の看板女優であった長野里美)が演劇活動をめぐってケンカしても、犯行がバレて錯乱した早苗(木村多江)がハンドミキサーを目撃者たちに突きつけ、「ミキサーが止まったときには、今見ていることの記憶をなくしてますよ!」とかなり無理めの催眠術をかけようとしても、そのツッコミ待ちの場面の数々が妙なグルーヴ感を生み出して、むしろクセになってしまう。そんなB級感のある作りゆえ、毎週1回の放送より連続して見る視聴スタイルの方が向いていると思われる。そう、これは豪華キャストによる“昼ドラ”なのだ!


 さて、「反撃編」を前に、「一番悪いやつは誰か?」と真犯人探しをしてみたいと思う。最初に死んだ管理人から第10話で死体となって発見された菜奈まで10人が亡くなったが、早苗が医師の山際を、藤井(片桐仁)がブータン料理屋の田中を、そして久住が細川(野間口徹)を殺したことはほぼ確定のため、殺人犯はひとりではない。ここでは菜奈を殺し、「反撃編」で翔太の復讐する相手になるであろう犯人に限定して考えてみる。ずばり、怪しいのはこの人たち!


■怪しさナンバーワン 202号室 黒島沙和(西野七瀬)


 Twitterの考察タグで大本命。筆者の個人アカウントで行ったアンケートでも、715票のうち293票を獲得し、約41%の人が黒島を真犯人だと予想していた。決定的なのは、菜奈のPCに残された「翔太くんへ」というテキストメッセージを読み上げる声が、菜奈に似せてはいるが黒島の声に聞こえること。菜奈殺害時に録画された動画にも、黒島の口調に思える箇所がある。黒島はこれまで殺人現場付近で目撃されたことはないが、103号室の田宮が廊下に監視カメラを仕掛け、その映像から何かに気づいたようで、黒島のことをいぶかしげな目で見るようになり、外でも彼女の後を付けている。また、黒島が交換殺人ゲームで書いたという「早川教授」はいまだに登場せず、引いたという「織田信長」を書いたと言う人もいない。少なくとも「織田信長」は嘘ではないだろうか? そして、公式サイトのキャストコメントを縦読みすると「黒このこだよ(犯人はこの人だ)」と読めるという情報を検証してみたが、他と比べて明らかに不自然なコメントになっており、これは意図的に縦読みを作ったと断言できる。


 しかし、黒島が犯人だとすると動機は何か? 序盤では体にあざがある描写もあって、何者からか暴力を振るわれている様子だったが、連続殺人が始まってからはそれがなくなった。その理由は? もしかすると、彼女はサイコパス的な愉快犯で、「ジコチューで行こう!」とばかりにやりたいこと(殺人)を実行しているのかもしれない。


■怪しさナンバーツー 301号室 尾野幹葉(奈緒)


 初登場時から怪しさしかないが、殺人者というよりは彼女や妻がいる男性を奪おうとするストーカー気質の女性らしい。しかし、「まさか付き合っていたつもりはないなんて言わないですよね?」と翔太に聞き、否定されると、「こういう捨てられ方をしたときの私、怖いから」と宣言したときは、貞子ばりに怖い表情を見せた。さらに、菜奈から「翔太くんへ」と宛てたテキストメッセージの最後には「翔太くんへのプレゼレントです」という仕掛けが隠されていたが、翔太のストーカーと化していた尾野がプレゼント攻撃をしていたことを連想させる。翔太に付きまとっていることから考えて、その妻である菜奈を殺す動機が一番分かりやすいのは彼女だ。


■怪しさナンバー3 302号室 手塚翔太(田中圭)


 翔太が二重人格である、または双子で、その“片われ”がサイコパス的だと仮定すると、辻褄の合うところがたくさん。特別編で刑事に疑われていたとおり、翔太は死体の第一発見者となることが多いし、黒島や尾野が犯人だとすると、浮田(田中要次)みたいな屈強な男を絞殺できるだろうか? という疑問が生まれるが、男性で体を鍛えている翔太なら可能だろう。ネットの考察でも、タイトルバックで翔太の顔写真だけ紙がめくれ下に違う顔が見えるとか、尾野が「付き合っていたつもりないなんて言わないですよね?」と聞いたのは、翔太のふたつ目の人格が尾野と関係していたからではないかとか、嘘をつくときに右の胸を掻くのも右脳と左脳で別人格が? などの深読みが投稿されている。あんなにストーカー気質の尾野を警戒していたのに、その部屋の中まで入っていた場面も二面性を感じさせた。


 また、第1話で映し出された婚姻届では、翔太の両親が証人になっており、なんと両親が20〜21歳のときに生まれた“三男”であることが明らかに。これは双子という線もありえそう? しかし、翔太やその兄弟が菜奈を殺したということになると、これ以上ないバッドエンドで終わってしまうのだが……。


 他には、102号室の児嶋佳世(片岡礼子)の足が発見されたとき、大きなクーラーボックスを運んでいた501号室の佐野豪(安藤政信)も、明らかに怪しい。彼には殺された赤池夫妻(隣室)から「悪臭と変な声がする」というクレームが入っていた。203号室のクオン(井阪郁巳)とイクバル(バルビー)も、管理人が屋上から吊り下げられ殺されたとき、非常階段にいたし、イクバルはSEなのでハッキングもできそうだ。また、404号室の江藤祐樹(小池亮介)は赤池家で唯一生き残った姑の幸子(大方斐紗子)を慕っていたし、IT企業を経営しアプリを開発していることから、彼にとって脅迫動画を作ることは簡単だろう。住民以外ではマンションに出入りできる神谷刑事(浅香航大)も意味ありげで、真犯人ではなくてもその協力者かもしれない。


 次に未解決の謎をピックアップしてみたい。このように張られた伏線は「反撃編」で回収されるのか?


「死体が笑っているのはなぜか」
 死体で発見された赤池夫妻、浮田、そして菜奈は、みな口角が上がって笑っているような顔に見えた。そして、タイトルバックにも犯人らしき人物が手袋の指で女性の口角を上げている映像がある。ここが最も猟奇殺人的なポイントになるが、犯人は菜奈の殺害時の動画でも「最後なんですから、笑ってください」と言っており、強いこだわりがあるようだ。


「菜奈の過去に隠された秘密とは?」
 菜奈が戸籍上の夫である細川と別居した理由を「どうしても許せないことがあったから」と語っていた。細川もそれは納得しているようだった。菜奈が殺された現在、この「許せないこと」とはなんだったのかということがかなり重要になってくる。もしかすると、菜奈と細川の間に子供がいたのかもしれない。


「浮田が死ぬ前に疑っていた相手は誰か?」
 浮田は自分が紙に書いた赤池美里(峯村リエ)が殺されたあと、「あなたの番です」という脅迫状を受け取るが、「俺はやんないぞ」と無視。同時期に脅されていた久住に「(脅迫状を書いた人の)見当はついている。ちょっとカマかけてくるわ」と言ってエレベーターに乗った。その直後に殺されたことから、疑っていた人物に殺された可能性が高い。


「空室の303号室で何が起きているのか?」
 菜奈と翔太の入居した302号室の向かいにある303号室。なぜそこだけ人が住んでいないのかは明らかにされていない。これまで、301号室の尾野が慣れた様子でそこに入って行き、402号室の榎本夫妻が監禁していた黒島と翔太をそこに移そうとした。関連しそうな伏線は菜奈たちが引っ越した日、管理人が302号室に入り込み「天井に気味の悪いシミ2つ」とチェックしていたことと、その日の住民会で「ここ、事故物件だから」という発言が出たこと。現在の303号室というよりは、過去にそこで何かが起こったのかもしれない。


 これらの謎がすべて説明され、さらに真犯人が視聴者の予想を裏切りつつ納得できる人物であれば、『あなたの番です』は傑作になりうる。果たして2クール連続ドラマの成功例になれるかどうかは、謎解き編とも言えるこれからの「反撃編」にかかっている。ぜひ後半もドキドキさせてほしい。(小田慶子)


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