深夜、酔った勢いでつい…飲酒後の“欲望”を克服した秘策とは?【Dr.山村の診察余録】

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2019年07月01日 16:00  citrus

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「先生、最近おかしいんです。食事に気を使っているのに、体重がまったく減らないんです。アラフォーだからでしょうか……」


諦め気味の表情で柏原さん(仮名、40歳)が診察室へ入ってきました。柏原さんは初めてのメタボ健診に引っかかり、3ヶ月前から私の外来に通い始めたサラリーマンです。糖尿病の一歩手前、いわゆる「糖尿病予備群」です。


通院を始めたころは「先生、痩せます!」と意気込み、ご飯大盛りを止め、微糖のコーヒーをブラックに替えて、3kgほど減量に成功。薬は使わずに、食事療法だけで糖尿病予備群から正常域へ近づきつつあります。ただ、最初は面白いように減った体重も、ここにきて停滞気味。本人は体重が減らなくなってきたことに意気消沈している様子です。生活習慣病の治療は、検査データが良くなっても実感がわかないもので、「体重が減った」「家族から『痩せた』と言われた」など目にみえる指標がほしいところです。


ごはん普通盛りが習慣化できたところで、あらためて食事を見直します。朝昼の食事は腹八分目に抑えられているものの、夕食の食べ過ぎが目に余ります。柏原さんの職場は飲み会も多く、夜は外食がちで、飲み会のあとはシメのラーメンまでがルーティンとなっていました。ダイエット開始から3ヶ月、「朝昼の食事に気をつけているから、夕食くらいは大丈夫……」という都合のいい言い訳は柏原さんに限った話ではありません。


苦笑いする柏原さんに飲酒量と、飲み会のときの食事量をしっかりと白状してもらい、ダイエット強化のポイントを探ります。“体重停滞”の原因は間違いなくシメのラーメン。なぜ飲むとシメのラーメンに行ってしまうのか……そこには酔っ払ったわれわれの意思ではどうしようもない「医学的な理由」があったのです。

 

 

 

■2次会のカラオケのころ肝臓の働きが…

 


肝臓の大事な役割のひとつが、糖質の蓄積と供給です。食事から摂取したブドウ糖をグリコーゲンとして蓄えておき、食事から時間が経って、血糖値が下がってくるころにグリコーゲンを分解、ブドウ糖を放出しエネルギーを供給しはじめます。こうして、しばらく食事を取らなくても必要なエネルギーが供給され、眠っているあいだも血糖値が一定の値に保たれるわけです。


もうひとつ肝臓の大切な役割に「アルコールの代謝」があります。アルコールの分解に忙しくなった肝臓は、エネルギーの供給に手が回らなくなってきます。1次会を終え、2次会のカラオケを終える頃には、食事で上昇していた血糖値が一段落し、肝臓からのエネルギー供給が必要となりはじめます。しかしそのとき、肝臓はアルコールの分解に大忙しです。エネルギー供給どころではありません。


こうしてエネルギー不足を感知しはじめたカラダは、空腹中枢を刺激し、食べることでエネルギーを摂取するように促します。ここで、シメのラーメン、シメのスイーツに手が伸びてしまうというワケ。摂取カロリーは夕飯1食で1日分を優に超え、翌朝はアルコールによるむくみもあって体重2〜3kg増となるわけです。


一番の対策は、アルコールの分解のために肝臓を働かせすぎないこと。つまり飲みすぎないことです。シメのラーメンを切望する夜ほど飲みすぎているものです。逆に、シメのラーメンがいらない夜もあったはず。水、烏龍茶をチェイサーとしてはさみながら、自分の肝臓にとって「適量」のアルコールを見極められるスマートなオトナになりたいものです。


柏原さんはその後、自分に合ったアルコール量を試行錯誤し、シメのラーメンへの欲望を克服。飲み会での食事量も減ってさらに4kgの減量に成功しました。通院半年で血液検査もすっかり正常値となりスーツを買い直すことになりました。

 

※情報は2019年3月14日時点のものです

 

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