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何で「コピペ」が辞書に載ってるのに「ティラミス」はないんです? 辞書マニアが教える“ちょっと不思議な岩波国語辞典”

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2019年07月04日 12:33  ねとらぼ

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ねとらぼ

写真問題
問題

 「国語辞典には個性がある」という事実は、かなり知られるようになってきました。世には大小さまざま、編集方針も異なる国語辞典が数多く刊行されており、どれも違った性格を備えているのです。



【全ての答え】



 そんな国語辞典の個性の一端に、クイズを通して触れてみましょう。今回は、『岩波国語辞典』(通称『岩国』)第7版新版から出題。『岩国』に載っていることばはどれで、載っていないことばはどれか、考えてみてください。



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●ライター:ながさわ



数百冊の辞書を保有する辞書コレクター。暇さえあれば辞書を引いている。「四次元ことばブログ」で辞書や日本語について発信中。



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●【問題】次の5つのことばのうち、『岩波国語辞典』第7版新版の見出し語になっていることば(3つ)はどれでしょう。



・バーチャルリアリティ



・ティラミス



・コピペ



・ハロウィーン



・コスプレ



 『岩国』は、序文で「この辞書が視野に収めるのは過去百年の(一時的流行ではない)言葉の群れである。それゆえごく最近の新語・俗用にはかなり保守的な態度となる」と宣言しており、実際にカタカナ語の項目は他の辞書と比べてもかなり少ないほうです。



 そんなおカタい『岩国』ですが、今回はあえてカタカナ語から出題します。果たして、『岩国』も認めたカタカナ語はどれでしょうか。ちなみに、第7版の刊行は2009年で、常用漢字表の改定に合わせて改修された第7版新版の刊行は2011年です。













【回答】



●バーチャルリアリティ



・答え:○



・バーチャルリアリティ コンピュータの作り出す仮想の空間を現実であるかのように知覚させる技術。また、そのように作り出された仮想的な現実。仮想現実。人工現実感。広義には、コンピュータ ゲームやアニメなどの電子メディアによる疑似体験も含める。 ▽virtual reality



 『岩国』はコンピュータ用語にかなり詳しいのが特徴のひとつです。2000年の第6版から項目がありますが、これは『新明解国語辞典』よりも早い立項です。



●ティラミス



・答え:×



 1990年ごろに大ブームを巻き起こしたお菓子で、後を追うようにこの語を載せる辞書も複数出ましたが、『岩国』には立項されずじまいでした。



●コピペ



・答え:○



・コピペ 〔名・ス他〕〔俗〕(コンピュータを使って)他の文章や画像から必要部分の写しを取り、別の場所に貼り付けること。「―で同じようなレポートが幾つも出た」 ▽copy and pasteから。



 この語を載せていない辞書が多いなか、コンピュータ用語だからか、『岩国』はしっかり記録しています。用例もオツです。編者の実体験でなければいいのですが。



●ハロウィーン



・答え:×



 日本でイベントごととして定着したのはここ数年のこととはいえ、英米では伝統的なお祭りであり、最近の辞書では載せているもののほうが多いくらいですが、『岩国』にはありません。



●コスプレ



・答え:○



・コスプレ 〔俗〕漫画・アニメ・ゲームなどのキャラクターに扮装すること。 ▽costume play(=衣装劇・時代劇)からの略語。



 第7版で立項されました。遅くとも1990年代前半には使われていることばで、最新の『広辞苑』第7版にも立項されたほか、今や大抵の辞書に載っています。



 『岩国』にあるコンピュータ用語にもう少し注目してみます。「TSS」という語を引いてみましょう。そもそも『岩国』と同規模の小型の辞書でこの項目を立てているものがほとんどないうえ、語釈も詳しく丁寧です。



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ティーエスエス【TSS】



コンピュータの中央処理装置(CPU)での処理を小刻みな時間帯に振り分けることによって、複数の端末利用者があたかもコンピュータを占有しているかのように使用できる方式。時間分割処理方式。 ▽time-sharing systemの略。



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 なぜ『岩国』がコンピュータ用語に詳しいのかというと、この辞書の中心的な編纂者であった水谷静夫が、コンピュータを用いて言語の分析を行う「計量言語学」を専門としていたからではないかと思われます。



 もちろん、この辞書の原則は「過去百年の(一時的流行ではない)言葉の群れ」を射程とするということで、基本的には古くからあることばに強い辞書であるといえます。



 また、特に語誌(ことばの用法の変遷)に詳しいのも身上です。「演歌」の項目を見てみます。



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えんか



(1)【演歌】明治十年代から(時世を批判し)自由民権思想を大衆に訴えるため、壮士(2)(ア)が演舌の代わりに歌った歌。



(2)【演歌】【艶歌】



(ア)演歌(1)から転じ、後に、政治思想から離れ、バイオリン、後にはギターなどに合わせて演歌師(1)が街頭で歌った歌。 ▽悲恋物がよく歌われたので「艶歌」とも書くようになった。



(イ)昭和三十年代から、当世風の歌に対し、(ア)を思わせるような調子の歌謡曲。



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 とても行き届いた説明です。『岩国』は、使っているうちにどんどん日本語の知識が身につく辞書ではないかと思います。



※辞書の引用に際しては、記号(約物)の一部を省略している場合があります


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