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ゆず、ギターと歌だけで5万人の観客をひとつに 日本音楽史上初の弾き語りドームツアーを見て

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2019年07月07日 21:11  リアルサウンド

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リアルサウンド

写真ゆず(撮影:太田好治)
ゆず(撮影:太田好治)

 日本の音楽史上初となる弾き語りのドームツアー『ゆずのみ〜拍手喝祭〜』、東京ドーム公演の2日目(5月30日)。会場を埋め尽くした5万人の観客の前でゆずは、弾き語りというもっともベーシックなスタイルによって、身近なのに奥深い歌の世界、そして、大スケールのエンターテインメントを同時に体現してみせた。


(関連:ゆずはルーツを重んじながら未来へ進む 新曲「SEIMEI」と弾き語りドームツアーのメッセージ


 ステージの上には、巨大な木のオブジェがそびえ立っている。新曲「SEIMEI」のアートワークにも描かれた、今回のツアーのシンボル・YUZZDRASIL(ユズドラシル)。現代美術家の名和晃平氏の手によるこの世界樹は、生命の起源の象徴。根っこの部分が上に来ている巨木を眺めていると、力強く、大らかな生命のパワーが伝わってくる。


 恒例のラジオ体操の後、ライブのスタートを告げたのは「SEIMEI」の旋律をモチーフにした壮大なSEだった。いにしえからの生命のつながりを想起させる映像とともにステージに登場したき北川悠仁、岩沢厚治はまず、〈灯されたSEIMEI/生命 そう辿り着けるさ〉(「SEIMEI」)というフレーズを歌い上げ、そのまま1曲目の「青」へ。「東京!!」と北川が叫んだ瞬間、観客から大きな歓声が起きる。〈泪が溢れて/途方にくれた夜に〉のサビでは早くも大合唱。激しくストロークされるアコギ、切なさと朗らかさを併せ持ったメロディ、苦しみと葛藤を優しさで包み込む歌詞。ゆずのすべてが溢れ出すパフォーマンスに、早くも感動が押し寄せる。


 北川がバスドラムを鳴らし、主旋律を鍵盤ハーモニカで演奏した挨拶ソング「DOME★BOMBAYE」で一体感を演出し、最初のMC。


「日本音楽史上初となる、弾き語りによるドームツアー『ゆずのみ 拍手喝祭』。今日は俺たち二人だけです。ゆずのみです」


「後ろの大きな木をご覧ください。名前はYUZZDRASIL(ユズドラシル)と言います。これは命、生命の象徴です。すべての命のルーツを表わしています。僕たちのルーツはやっぱり弾き語り。そしてこの木は、僕たちと、集まってくれた一人一人の絆、つながりを表現しています。この木の下で、思い切りやりまくっちゃうから、みんなもどうか、何も気にしないで、思い切り楽しんでくれよ!」


 今回のツアーに臨む思いをはっきりと言葉にした後も、“ゆずのみ”によるステージが続く。岩沢がギターとブルースハープを演奏、北川がハンドマイクで歌った「贈る詩」(間奏部分では会場を右半分、左半分に分け、サビのコーラスを交互に合唱)、岩沢が主旋律を力強く歌い上げた「飛べない鳥」。さらに素朴な温かさに溢れたフォーキーなナンバー「スミレ」、ふたりの地元の風景と大切な人との別れを描いた「桜木町」も。日々の生活のなかにある様々な感情――楽しさ、悔しさ、怒り、切なさ、嬉しさ――が真っ直ぐに歌になり、それを5万人のオーディエンスが共有している。その事実を目の当たりにするだけで、グッと胸に迫るものがある。


 中心にあるのはもちろん、北川、岩沢のアコギと歌だ。2本のアコギの音色、2つのボーカルの声色が有機的に結びつき、互いに振動しながら、ゆずでしかありえないグルーヴにつながる。そこで生まれる豊かな情感、独特の揺れを含んだフロウの魅力は、生で体感しないとわからない。そのこともまた、ゆずのライブに多くの人が足を運び続ける理由なのだと思う。


 「タオルは拭くだけではなくて、振り回したり、上に投げたりできます。上に投げるときは4拍目の裏で(笑)」(岩沢)という言葉に導かれ、観客がサビに合わせてタオルを投げた「陽はまた昇る」、「歌って!」(北川)というシャウトとともにこの日もっとも大きいシンガロングが巻き起こった「嗚呼、青春の日々」によって一体感を演出、巨大な木がグリーンとブルーのライトで照らされ、北川がピアノを演奏した哀切なバラードナンバー「マボロシ」の後は、壮大すぎるスケールと遊び心をたっぷり含んだステージが続く。


 まず、スクリーンに路上ライブ時代から始まる、ゆずのキャリアを紹介する映像が映される。「デビューからどんなときも、どんな場所でも、ふたりは弾き語りを思い出の場所にしなかった」「剥き出しの音楽、ありのままの音楽。ゆずにしかできない、弾き語りライブがここにある」というナレーションの後、“ゆずマン”(北川が描くマスコットキャラクター)が巨大な木を登っていくシーンが映し出されると、なんとゆずのふたりがYUZZDRASILのてっぺんに登場。観客がかざすスマホのライトがオレンジ色に光るなか(入場時にスマホのライトに貼るオレンジと緑のシールが配られていた)披露されたのは、「Hey和」。「ツアー中に年号が変わりました。“Hey”と“令”が似てるかなと思って」という北川の言葉をきっかけに、“令和”の合唱も。メンバーの呼びかけに素直に応じる観客の対応力も心に残る。続く「うたエール」(掛け合いのパートは観客が合唱)では、マイクから遠ざかり、生声に近い状態で〈あなたにエールを 歌ういつの日も〉というフレーズを響かせた。


 ここからはエンターテインメントに振り切ったセクションへ。北川が扮する天使と岩沢が扮する悪魔が、天上界で謎の“ボタンスイッチ”を取り合ってるうちに誤って落としてしまう――というムービーが映された後、“ボタンスイッチ”を持ったゆずマンがアリーナに登場。観客にスイッチを押してもらうと、何か予期せぬことが起きるという演出だ。北川、岩沢はフルーツのオブジェをあしらったカラフルな車に乗ってアリーナを1周しながらポップチューン「マスカット」を披露。そのままアリーナの後方で「シュビドゥバー」へ(天使と悪魔がレバーを回すと、北川、岩沢が乗ったミニステージがどんどん高くなるという仕掛けも!)。アコギの弾き語りという軸をしっかり保ったまま、観客を一瞬たりとも飽きさせず、“こんなの見たことない!”というステージが繰り広げられた。


 北川がボイスパーカッションを披露した「3番線」、アリーナど真ん中のセンターステージでパフォーマンスされた「タッタ」、さらに童謡のようなメロディが印象的な「岡村ムラムラブギウギ」、北川が嵐に提供した「夏疾風」のセルフカバーなど色彩豊かな楽曲を挟み、ライブは終盤。「偉くない? ずっと2人で。みんなも歌ってね」(北川)というMCにリードされた「サヨナラバス」は冒頭からオーディエンスの大合唱。そして「夏色」では「もう1回!」のコールとともに気持ちいい解放感を生み出す。どちらの曲もすでにスタンダードになっていて、数えきれないほど耳にしているにも関わらず、ライブで聴くたびに瑞々しさが伝わってくる。ゆずの音楽世界は確実に深まり、スケールを増しているが、ヒット曲を当時の新鮮さを保ったままパフォーマンスし続けていることも彼らの大きな魅力だろう。楽曲の途中で北川が“ゆずマン”に変身する演出も楽しい。見事な振り切れっぶりだが、これもまた“最後まで徹底的にお客さんを楽しませたい”という意思の表れなのだろう。


 本編のラストはこのツアーのテーマ曲とも言える「SEIMEI」。ギターの弾き語りというミニマムな形で、“命の根源”という壮大なテーマを含んだ歌をストレートに表現する。それはこのツアーを象徴すると同時に、ゆずの本質が強く感じられるシーンでもあった。


 観客が掲げたスマホのライトがグリーンに輝くなか、アンコールは「栄光の架橋」から始まった。音数を抑えたアルペジオとふたりの声、観客の合唱が重なり、強く心を揺さぶられる。さらに純粋な疾走感に満ちた「少年」を披露した後、北川がゆっくりと観客に語り掛ける。


「2001年、初めてドームをやったときは、来てくれたお客さんには申し訳ないんだけど、そのときは俺たちはね、“5万人に負けるもんか。絶対に勝つんだ”と立ち向かうような気持ちだったんだ。でも、それから何年も経って、9回もドームでやらせてもらって。こんなに大きい会場なのに、ひとりひとり、みんなをすごく近くに感じています。もし、みんなもそんなふうに思ってくれていたらとっても嬉しいんだけど」


「ふたりでやれることには限界があります。だけど、ふたりでできることは無限だなと思っています」「令和の時代も、いや、死ぬまで俺たちと一緒に生きていこう」


 そんな真摯な言葉に導かれた最後の曲は「終わりの歌」。“路上の弾き語りから始まり、ここまで来た”という物語を込めたこの曲によって、ライブは幕を閉じた。


 ヘコんだり、がんばったり、哀しみに沈んだり、喜びに溢れたり、人を妬んだり、慈しみの情を感じたり。ゆずの歌には、年齢、性別、生まれ育ちを超え、あらゆる人の人生や生活のなかで起こる全てが含まれている。ギターと歌だけで5万人の観客をひとつにできるのは、彼らの歌がリスナーにとって人生そのものであり、それが広く深く共有されているからに他ならない。史上初の弾き語りドームツアーでゆずは、そのことを改めて証明したのだと思う。(森朋之)


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