杉野遥亮、『スカム』で学んだ“主役”の醍醐味 「監督の近くで寄り添って話ができる」

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2019年07月09日 08:01  リアルサウンド

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連続ドラマ初主演となる杉野遥亮

 杉野遥亮が連続ドラマ初主演を務めるMBS/TBSドラマイズム『スカム』が現在放送中だ(MBS:毎週日曜24:50〜、TBS:毎週火曜25:28〜、他)。


 本作の原案は、ルポライター鈴木大介が振り込め詐欺に従事する若者たちの実態を取材した『老人喰い』。社会から見放され、絶望的な状況に追い込まれた若者たちが、振り込め詐欺に手を染めていく姿を描くオリジナルストーリーだ。


 杉野が本作で演じるのは、順風満帆な勝ち組人生を歩んできたが、リーマンショックによる新卒切りで無職となり、時を同じくして発覚した父親の難病治療のため、振り込め詐欺をはじめる主人公・草野誠実。映画『全員死刑』を手がけた小林勇貴が演出を担当する。


 杉野に、初主演作への思いや、小林監督との現場で培った空気感、役作りのこだわりなど語ってもらった。


■「自分だからできることを探しました」
ーー今回、連続ドラマ初主演ということで、思い入れは強かったですか?


杉野遥亮(以下、杉野):主演という特別な気負いはなくて、「やった!」という喜びはありました。ただありがたかったのが、長い間現場に居て見ることができるし、共演の方も、僕が普段映画を見ていて素敵だなと思う方たちばかりで、現場にいるだけで自分が学べたりしたこと。あと、一番監督の近くで寄り添って話ができることはワクワクしました。


ーー事務所の先輩からは何かお言葉をいただきました?


杉野:ちょうど『居眠り磐音』の舞台挨拶の時に「明日から撮影に入るんです」と松坂(桃李)さんに言った時は、からかわれたわけではないけど、座長というところに発破をかけられました。でも作品を見てくれると言ってくれたので、そういった意味でも、頑張りたいと思いましたし、初めから一番近くで見てくれている先輩だったので、自分が主演をやるって知ってくれているのは嬉しかったし、その過程を見てもらえればなと思いました。


ーー今回、座長を経験するというところで、先輩方の姿から参考にした部分もあったのでしょうか?


杉野:座長というと、その方なりの立ち方はあると思っていて。みんなが頼りたくなる背中や佇まいを模索しながら自分だからできることを探しましたけど、そこに行き着くまでに、先輩方はどうやっていたかというイメージが流れたりはしましたね。これまで素晴らしい先輩の背中を見てきたので、その中で自分がどういう立ち方ができるだろうかと常々考えていたし、いつかできたらいいなというのもありました。


■「監督の大きなオッケーをもらいたいという感覚がありました」
ーー最初に脚本を読んだ際はどのように感じました?


杉野:まず、はじまり方がめっちゃ好きでした(笑)。物語にスピード感や臨場感があって、これが映像になったら面白くなるんだろうなと。頭の中でストーリーを流してみても、どういう風に撮影してどんな顔になるんだろうと想像が膨らんでいく感覚はありました。誠実という人がその瞬間瞬間に感じたことを丁寧に表現していきたいなと。


ーー詐欺をテーマにしたドラマはこれまでもいくつかありましたけど、本作はリアル志向というか、少しテイストが違いますよね。


杉野:見ていただけたらわかると思うんですけど、フィクションだけど、ノンフィクションでもあるなと。もちろん詐欺に対しては肯定できなくて、見ていただいた方に教訓にしていただきたいし、こういう手口をドラマで見せていくので、実際に引っかからないでほしいという気持ちもあります。でも、詐欺というものに行き着いてしまった若者たちの生き様を、社会問題として提起できる部分もあるんだろうなと思います。若者が持つ社会に対しての疎外感だったり世代間格差の問題だったり、閉塞感や生きづらさに行き着いてしまうようなシステムがあるということも投げかけていたりもするので、誠実たちを笑って貶したりドキドキワクワクもしていただいて、最終的にぽろっと涙するようなことがあってもいいのかなと思います。


ーー今回監督を務められた小林監督は若手の映画監督で、前作『全員死刑』では衝撃的な作品を撮られた方です。現場での印象はいかがですか?


杉野:すごく素直な方で、喋っていてもいい意味で子供っぽさがあるのかなと。自分がいいと思ったことに対しては、すごく素直にリアクションしてくれますし、それが僕たちスタッフキャストのやりがいや次のステップに進むためのヒントのように感じたりしていたので、監督の大きなオッケーをもらいたいという感覚がありました。


ーー役柄についてはどんな話をしましたか?


杉野:クランクイン前に小林監督と何度か話す機会がありました。お互い作品に対して思うことをいくつか話したのですが、その段階で、すごく明るい未来が見えたというか、現場が活気付いているイメージが湧いてきたんです。実際最初の方は、「今の誠実の心情的にどうなの?」と聞かれて、僕が説明して、「そうだよね。そういう風に感じるよね」といった具合にすり合わせをしました。でも撮影が進むにつれ直接会話をするということがなくなってきて、誠実がこういう風にあってくれればいいなという監督の思いと、こういう風にいたいなという僕の思いがリンクして、信頼関係を作ることができたなという印象でした。


■「生き生きとしていたかった」
ーー予告編でもありますが、クレーンで吊られて泣き叫ぶ姿が印象的でした。


杉野:あそこは序盤に撮影があって正直まだちょっと探っていました(笑)。クレーンで吊られること自体はなんの疑問もないし、むしろ吊られたいなって思うくらいで(笑)、楽しんではできたんですけど、そこで誠実がどんな心情でいるのかというのは正直わかっていなかったです。ただ、見てくれた方に誠実に感情移入してほしいから、自分なりに想像できる余白を残せるよう、その時出たものをぶつけました。


ーー誠実は等身大の地に足ついた若者という印象です。


杉野:誠実の境遇や、詐欺をやる一歩手前の段階っていうのは自分に似ても似つかないものがありましたし、最初にプロットを読んだ時もなんだかしっくりこず、詐欺に対しても全面的に悪いものという固定観念が捨てきれませんでした。でも台本を読み進めるうちに、誠実が奥底で考えていることや不満、プライドなどを、自分でも想像できるようになっていきました。最初に監督やプロデューサーさんとお話しした際には「リアルにやってほしい、変に役を作るのではなく、杉野くんが思って感じたことを誠実として表現してくれればいい」と言っていただいて。そこから次第に自分が杉野として生きているのか誠実として生きているのかがわからなくなってくる瞬間もあって、そこは少し自信にもなりましたし、収穫にもなりました。


ーー1話の冒頭では誠実が詐欺のプロフェッショナルとなっている姿が描かれますね。普通の若者からアウトローに振り切っていく様子にどのように挑んだのでしょう。


杉野:いくつかターニングポイントや、誠実なりに一段階ギアが上がる瞬間がストーリーの中にあって、そこから逆算してやっていました。衣装に頼ったところもありますが、苦労は感じませんでした。誠実が詐欺をやっている瞬間に、生き生きとしていたかったんです。それは、詐欺だからというわけではなく、自分で考えて上を目指せて、上昇志向も野望もあって、そういう人間って実はキラキラしているんじゃないかと思っていただきたかったんです。


(取材・文・撮影=安田周平)


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