ホーム > mixiニュース > IT・インターネット > モバイル > ドコモは分離プラン/5G時代をどう戦い抜くのか? 吉澤和弘社長インタビュー

ドコモは分離プラン/5G時代をどう戦い抜くのか? 吉澤和弘社長インタビュー

0

2019年07月11日 18:43  ITmedia Mobile

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia Mobile

写真NTTドコモの吉澤和弘社長
NTTドコモの吉澤和弘社長

 2019年は、モバイル業界が大きく変わる年になる。改正された電気通信事業法が2019年秋に施行され、分離プランが義務化される。これを見据えて、NTTドコモは6月から新料金プランを提供している。



【その他の画像】



 分離プランだけでなく、改正法案の詳細を決める研究会の終盤では、「行きすぎた囲い込みを防止する」という名目で、解約金の値下げ、端末購入補助と長期割引の制限といった案も出された。



 10月には楽天モバイルがキャリアに参入し、台風の目になりそうな予感が漂っている。2020年春に商用サービスが開始する「5G」では、各社がプレサービスを準備しており、ドコモが2019年9月20日のラグビーワールドカップに合わせてプレサービスを提供する。



 今回、NTTドコモの吉澤和弘社長にインタビューをする機会に恵まれたので、改正法や5Gを中心に、お話を聞いた。



●新料金プランの契約数は300万を突破



―― 新料金プラン「ギガホ」「ギガライト」の手応えを教えてください。



吉澤氏 6月1日にスタートし、先週の土日(7月6〜7日)で300万を超えて、301万契約になりました。(2019)年度末で1700万契約を計画していますが、われわれが想定しているペースで推移しています。2014年6月に開始した「カケホーダイ&パケあえる」は、実はもっと初速はよく、1カ月で500万契約になりました。それに比べると少ないですが、カケホーダイでは通話定額を入れたので、どっと来ました。



 今回は月々サポートが終わった方から順番に来ると想定していて、徐々に年度の目標に近づくと思います。そういう意味では順調ですし、いろいろ言われてはいますが(苦笑)、お客さまからは「安くなった」と言われています。



 今までよりも使いやすいこともCMでやっていて、だいぶ浸透もしています。店頭では料金相談を今まで以上にやっています。Webサイトでも、簡易シミュレーションだけでなく、dアカウントを入力するだけで新料金プランに乗り換えるべきかをアドバイスする「しっかりシミュレーション」を提供しています。



―― ギガホとギガライト、どちらが特に選ばれていますか?



吉澤氏 比率はギガライトの方が高いですね。契約率でいうと、3割弱がギガホ、残りがギガライトです。



●auの新料金プランは問題視していない



―― ドコモが料金を発表した後の5月に、KDDIも対抗プランを発表しましたが、どう見ていますか。



吉澤氏 ライトユーザー向けのプランは同じような立て付けで、同居家族3人で1000円引きと、完全に合わせてきました。ただ、われわれがPRしなければいけないのは、ドコモは同居家族でなくても、3親等の関係さえあれば、全ての方が割引を受けられることです。



―― KDDIが「auデータMAXプラン」で展開する完全使い放題や、「auフラットプラン7プラス」で展開するカウントフリー(ゼロレーティング)に対応するプランは提供しないのでしょうか。



吉澤氏 7GB(のauフラットプラン7プラス)は、そういったものもありだと思います。データMAXプランはギガホの対抗プランだと思いますが、テザリングは20GBといった条件もありますし、3日間なのか何日なのか分かりませんが、時間の制限もある。映像をずっと見ていると速度が落ちるので、「完全(使い放題)」ということにはならないと思います。



 対抗上は、それほど問題視していませんが、5Gを見据えたときに、ギガホをどう発展させていくのかは検討していきます。ギガホは(ギガライトの)7GBから+1000円なので、旧プランで5GB以下だった方で、ギガホに来る方が増える傾向にあります。



―― つまり大容量プランの利用率が、新プランでは増えていると。



吉澤氏 そういうことになります。使い方自体は月ごとに濃淡がありますが、そうはいっても1000円違いなので、知らず知らずのうちに使ってしまう……という方々が乗り換えやすいのでしょう。



―― ファミリー割引が適用されれば500円〜1000円が割り引かれるギガホとギガライトですが、以前、吉澤社長は、旧プランの「シェアパック」を契約していないと、「ファミリー割引」の対象にならない……と誤解している人がいるとおっしゃっていました。この誤解は解消されましたか?



吉澤氏 しっかりシミュレーションでもご案内していますし、コールセンターにお問い合わせがあったときに「シェアしていないとファミリー割引にならないわけではない」とご案内しています。ファミリー割引のグループに入っているかどうかは、すぐに調べられます。



●夏モデルは「Xperia Ace」が特に売れている



―― 夏モデルの販売状況はいかがでしょうか。特に人気のモデルがありましたら教えてください。 



吉澤氏 分離プランを踏まえて、端末はミッドレンジで4万円以下のモデルを充実させました。そちらは順調で、特に「Xperia Ace」が売れています。フラグシップは、「Xperia 1」や「Galaxy S10」はよく売れていると感じています。



 フラグシップとスタンダードの違いは通信速度が1つ。カメラ性能の違いもありますが、スタンダードモデルでもスマホの機能を十分果たせていますし、何ら支障はない。まだフィーチャーフォンもたくさんあるので、早くシフトさせたい。



―― 米国からHuaweiに対する禁輸措置の影響で、「HUAWEI P30 Pro」の予約がいまだ停止していますが、再開のめどは立っているのでしょうか。



吉澤氏 「G20」でトランプ大統領から(禁輸措置を)緩和する旨の発言があり、その後、商務省長官が「安全保障上の脅威がなければ許可する」という発言もありました。ただ、P30 Proをどうするかは、AndroidのOSと半導体、そこについてはまだOKとは言われていないので、そのOKが出ないと、OSバージョンアップもできなくなりますし、それでお客さんにご迷惑は掛けられないので、今は状況がハッキリするまでは注視しています。



【訂正:2019年7月12日10時9分 初出時に、「AndroidのOSとQualcommのチップ」と記述していましたが、P30 ProはQualcommのチップを採用していないため、「AndroidのOSと半導体」と訂正致しました】



●解約金が1000円になったからといって値上げをするのは難しい



―― 総務省の研究会で、解約金、端末割引、長期利用割引を制限する話が突如降ってきました。率直にどう見ていますか?



吉澤氏 回線と端末を分ける“完全分離”の方向性には、われわれは賛同しています。一方、省令を策定する上で、当然、論点整理はされるわけです。解約金や端末購入補助の話が論点としてあることは分かりますし、われわれも5月末に、端末購入補助は3万円までという額を示させていただいた。



 その後、研究会が非公開になって、解約金や端末購入補助の数字が出てきた。端末購入補助が3万円から2万円になったことや、解約金が1000円としたのは……政策判断ですが、どういうロジックで決めたのか、理由をハッキリさせてくださいとしか言えません。



 長期割引の件は、ほとんど議論していません。突然出てきた話ですが、今のままで問題ないと思っています。われわれは、お客さんを過度に囲い込むために長期割引をやっているわけではなく、長年使っていただいていることに対する感謝の印です。それで3000ポイントを贈呈するのは何ら問題ないと思います。



―― 解約金が1000円になり、2年契約あり/なしプランの料金差は170円にするなど、具体的な数字が出てきましたが、これによって、料金プランは見直すことになるのでしょうか。



吉澤氏 状況に応じて微調整もあり得ます。2年間使うことを約束すれば料金が安くなります、ということで現在は9500円を解約金にしています。お客さんにとっては、2年使うから安い方がいい、というニーズがあります。われわれにとっては、2年間の収益が確保されます。ただ、途中で解約されると、もともと得られた収益が減るので、その分を(2年契約あり/なしプランの差額である)1500円の約6カ月分に設定しています。それが1000円になると、6で割って170円になるので、定期契約なしプランの料金がベースになると、今よりも1330円高くなってしまいます。



 新料金プランの構造そのもを変えるつもりは全くありませんし、値上げをするのも難しいと思っています。



―― プランの料金は変えなくても、手数料など、他の料金に影響が出る可能性もあるのでしょうか。



吉澤氏 おっしゃる通り、いろいろなアイデアはあると思います。一方で、改正法案の施工と同時期に、楽天さんの(キャリア)参入もあります。「楽天さんが出てきたら、今の料金はどうするのか?」とよく聞かれますが、楽天さんが発表する料金も踏まえながら考えていきます。



―― 楽天が極端に安い料金プランを提供した場合、そこに追随する可能性はあるのでしょうか。



吉澤氏 極端に安い料金を出せるのか? というのはあります。MVNOもやられていて、それのライトユーザー向けのプランも分かっています。ローミングも必要になりますから、そこの料金をどうするのか。後は、単独での料金なのかも分かりません。楽天さんはカード、ポイント、証券、銀行など、非常に多くのサービスをお持ちなので、そういったものも連携させるのではないかと。



●スマホおかえしプログラムの内容を変えるつもりはない



―― おかえしプログラムについても聞かせてください。改正法では、割引額から下取り価格を引いた額が2万円以内にするよう定めていますが、機種によっては中古市場での価格が暴落して、割引額が2万円を超えるケースも考えられます。そこに対しては、何らか変えていくことになるのでしょうか。



吉澤氏 何かあったときに、中古端末の価格が暴落することはあると思いますが、そこを考えたらキリがない。基本的に、2年後の下取り価格がいくらになるのかを見ています。今後は、旧モデルの下取り価格が過去にどのぐらいの推移で来ているのかを見る必要がありますが、だいたい2万円以内に入るのではないかとみています。ただ、全てが2万円以内になるかどうかは、緻密にやらないといけない。



―― 基本線として、36回払いで12回分の支払いを免除するという内容は変わらないと。



吉澤氏 そこを変えるつもりはありません。



●他社の4年縛りは是正すべき



―― 総務省が、施行前でも改正法に反したプランを縮小するよう3キャリアに要請していますが、どう対応されるのでしょうか。



吉澤氏 私どもは、新プランがそういう形になっているので、基本的にはできていると認識しています。解約金を1000円にするのは、施工後の新たな契約です。



 解約金の値下げは、今のキャリアが過度にお客さんを囲い込んでいるのを是正するためだと言われています。その意味で、他社の4年縛りといわれている施策では、端末代の半額を免除する条件に、同一キャリアの機種変更を定めていますが、それこそロックイン効果が高い。今契約された方は、2年後に機種変更をする代わりに割引を受け、さらに2年間使う。そういったことも含めて是正はすべきだと思います。



 既往契約を9月末までに増やしておけば、2年間は使ってもらえます。その是正は自主的にできるはずです。



 後は、既往契約を9月までに増やすためのキャッシュバックも是正すべきです。MNPによるポートインに対して、土日に量販店を中心にしていまだに行われていますが、それはいかがなものかと。私どもはキャッシュバックを全くやっていない。こういう状況が6月から続いているので、量販店ベースで見ると、私どもの機種の販売台数はガクッと下がり、ポートインも少なくなりました。



 ガイドライン上でも禁止されているキャッシュバックをまたやっているのですから、総務省とも話はしています。また、店頭での表示も0円や8万円バックとか、条件を書いていないこともあるので、それもちょっと行きすぎではないかと思います。



●9月のiPhone商戦はどうなる?



―― 改正法案の施行は10月からといわれていますが、9月のiPhone商戦はどうなるのでしょうか。



吉澤氏 iPhoneは、毎年9月後半ぐらいに発売されています。10月1日まで10日間くらいありますが、われわれのおかえしプログラムは、今もiPhone XSやXRは対象にしているので、今の仕組みでそのまま行きます。新しいiPhoneが出たからといって、インセンティブを増やすことは今のところ考えていません。



 他社は4年割賦やキャッシュバックを続けるかは分かりませんが、10月以降はそれができなくなるので、iPhoneも同じように補助は2万円以下になるのだと思います。



―― 総務省が2年間の総額表示を義務付けるという報道も出ていますが、どう対応していきますか?



吉澤氏 端末と回線を分離したのになぜ総額を表示するのか? というのはありますが、料金を「2年間こうですよ」という案内は、今でもやっているので、対応可能です。



●5Gプレサービスはスマホが主役に



―― 2019年9月の「ラグビーワールドカップ」を皮切りに5Gプレサービスを始めますが、どのような内容になるのでしょうか。会場だけでなく、地方でも展開するとも聞いています。



吉澤氏 ラグビーワールドカップの12会場のうち8会場は、5Gのエリア化をする計画で工事を進めています。スタジアムでは、5G対応のスマートフォンを観客の方にお貸しして、試合会場のマルチアングル映像の中から1つ選んで、自分が見ているところ以外の映像をリアルタイムでも見られる。試合の内容やファウルの解説、選手のスタッツ(成績)も見られるようにしようと思っています。



 ただ、なかなか見に行けない方もいらっしゃるので、全部というわけにはいかないですけど、ある会場でパブリックビューイングをやろうと思っています。大きな画面で臨場感あふれる、グラウンド全体の映像が見られるようにします。場合によってはゴーグルを使うかもしれません。ラグビーに限らず、サッカー会場でもプレサービスを考えています。



 後は法人向けです。法人も全部プレサービスをできるわけではありませんが、今までもいろいろなトライアルをやっているので、サービスに近いものは体験できます。例えば、人手不足や新人研修などの現場で、生産現場でグラスをかけて、どうやればいいかを遠隔で指導することもできます。ゴーグルを付けて城跡を見ながら、「昔はどうだったのか」といったことを、大学の先生に遠隔で解説してもらう、ということも考えています。



―― プレサービスの料金はどうなるのでしょうか。



吉澤氏 料金は取りません。料金は来年(2020年)春の正式ローンチからいただきます。当然、終わった後にスマホは返していただきますが、そのあたり(の詳細)を今、考えているところです。



―― プレサービスではどのメーカーのスマホを使うのでしょうか。ソフトバンクが、フジロックを舞台にした5Gプレサービスを提供しますが、シャープとソニーモバイルのスマートフォンを使うことを発表しています。ただ、スマホ自体は受信機として使うため、ユーザーには配られませんが……。



吉澤氏 私どもは……まだ明確には言えませんが、当然、スマホの形です。



―― プレサービスのデバイスはスマホがメインになると。



吉澤氏 まずはそうですね。正式ローンチの後にやりたいのは、5G時代に何を見せるか。データはガンガン来ているわけですから、スマホの画面だけで臨場感をというのは難しい。XRやウェアラブル、360度カメラなどの周辺機器ですよね。そういったものが、5Gのハブであるスマホにつながるように、いろいろなパートナーと作り込んでいます。



 MR(複合現実)の分野でMagic Leapに出資をして、共同開発をしています。そういったものを、5Gと(スマホをハブにしてさまざまな機器がつながる)マイネットワーク構想の目玉として見てもらおうと思っています。



 ローンチに間に合うかは分かりませんが、お客さんには、こういう世界になることを見ていただけると思います。



―― Magic Leapが開発したデバイスは、ドコモ独自のものになるのでしょうか?



吉澤氏 いえ、デバイスはMagic Leapが開発していますので、コンテンツの見せ方、コンテンツとデバイスの同調性を見ないといけません。そういったところを検討させてもらっています。



●単に速度を上げるだけなら今でもできる



―― 海外では韓国と米国で5Gが始まっていて、日本は5Gで遅れているという論調もありますが、どう見ていますか?



吉澤氏 そういうことではないですね。回線が5Gになってダウンロードが速くなったというだけなら、今でもできます。いただいた周波数を使い、ユースケースがマネタイズされて、お客さんからお金をいただける状態でスタートする。「ネットワークができたけど、それを使う例が出てこない」というのが今まででしたけど、実際のサービスやソリューションが、ネットワークと同時に出てくることがローンチだと思っています。



―― 5Gでは他キャリアも、パートナーと組んでソリューションを提供する「共創」(※ドコモは「協創」としている)をアピールしていますが、ドコモならではの強みはどこにあるのでしょうか。



吉澤氏 他社は私どものフレーズをそのまま使っているのでは? 私どもはだいぶ前からやっていて、今では2800ぐらいがパートナーですし、R&Dを中心とした展示会などで、皆さんにご紹介しつつ、一緒にやる方を募っています。他社さんも同じような言い方をしていますけど、私どもが先んじてやっていますし、規模も大きいと思います。東京、大阪、沖縄、グアムでラボを作り、パートナーの方が実証実験をやっており、自分たちが考えているビジネスの可能性を検証してもらっています。



●キャッシュレスはまだ始まったばかり



―― モバイル決済についても聞かせてください。「7pay」の不正利用が起きたことで、モバイル決済を不安視する人が増えそうです。そういった声に対してどう対応していきますか。



吉澤氏 キャッシュレスの世界を作るという意味では、セブンさんの事例がそのままキャッシュレスの動きを止めることにはならないと思っています。IDパスワードで決済するやり方は、どこでもやっています。われわれもいろいろな経験を積んだ上で、チェックリストを持っているわけです。



 セキュリティも回線認証、2段階認証、生体認証もありますけど、それ以外にも利用限度額、決済の回数、時間帯、場所などを経験の中で持っています。今は(モバイル決済が)乱立気味だといわれていますけど、処理の仕方やプロトコル、サーバ決済などを共通化しないと、お店側も困るでしょうし、バーコードもお店ごとに違うと混乱します。共通化を図る上でだんだん統合されていくのではと思います。今の段階は、まだキャッシュレスのスタート地点だと思っています。


    あなたにおすすめ

    ニュース設定