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「うちの子どもがちゃんとしゃべれない」……。親が知っておくべき「吃音とともに生きる」という視点

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2019年07月12日 08:00  AERA dot.

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写真※写真はイメージです(写真/getty images)
※写真はイメージです(写真/getty images)
 言葉をうまく言うことができない症状・吃音(きつおん)。子どものころに発症することが多いといわれていますが、実はまだ医学的に詳しいことが解明されていない、謎に包まれた症状でもあります。吃音で悩んでいる、あるいは子どもの吃音に悩んでいる親はどうすればいいのでしょうか。子どもの吃音について、国立成育医療研究センター・耳鼻咽喉科の富里周太医師に質問し、答えてもらいました。

*  *  *
――そもそも吃音とはなんですか?

富里:医学的には「言語の流暢(りゅうちょう)性の障害」という定義です。声自体は出るけれども、なめらかに言葉にすることができないという意味です。国内では100人に1人が吃音ですが、これは国や言語によらず世界的に同じ割合と言われています。

 吃音症の種類は三つです。いわゆる吃音といったときに一番イメージするのは、言いたい言葉の頭の部分を繰り返してしまう「連発(繰り返し)」でしょう。しかしそのほかにも、言葉につまってしまい言葉がなかなか発声できなくなる「難発(ブロック)」、頭の部分を引き伸ばして言ってしまう「伸発(引き伸ばし)」があります。

 はじめは連発が多く、徐々に伸発が混ざってきますが、思春期以降メインになるのは連発、伸発よりも難発です。繰り返してしまうのを止めようとして、詰まってしまうのではないかという仮説はあります。しかし、これが意識的なのか無意識的なのかということも含め、詳細なメカニズムは未解明です。

――吃音の原因は何なのでしょうか?

富里:吃音については多くのことがわかっていません。原因についてもわかっていないと患者さんにはお伝えしています。いまの研究では、体質的なところが大きいだろうと言われています。

 有名なものに双子研究があります。一卵性双生児において片方が吃音だと、もう一方も吃音である確率が高いということが示された研究です。そのため吃音は体質的な要素、つまり遺伝要因が7割を占めていると考えられています。しかし、遺伝子のどの部分が吃音と関わっているのかなどはわかっていません。

 残る3割の環境要因についても、「遺伝では説明がつかない部分がある」程度のことしかわかっていません。もし遺伝だけで説明がつくのであれば、一卵性双生児の場合、片方が吃音であればもう一方も100%吃音のはずです。しかしそのような研究結果は得られなかったので、なんらかの環境要因があるのではないかと考えられています。ただ遺伝要因と同じく、これもどのような環境が吃音に影響しているのかまではわかっていません。

 このようにまだわかっていないことが多いため、大人の場合、吃音を治療して確実になくすことは、現状では難しいとされています。発症早期の幼児の場合、治癒することはあり得ます。

――子どもの吃音の治療としては、どのようなことができるのでしょうか?

富里:治癒率を上げる目的の治療法はいくつかあります。またそれ以降の年齢でも、ある程度吃音をコントロールする治療法はあります。

 たとえば小さな子どもであれば親御さんがかなり心配されるので、まずは吃音について先ほどのような説明をすることが大きな軸になります。周りの環境を整えたり、子どもの発話に対して評価を与えたりするのですが、多くは親を介しての治療になります。

 そもそも言語は親が話している様子をまねして覚えるものですので、子どもが吃音で悩んでいるのであれば、親の理解が必要になります。例えば「つっかえないでふつうにしゃべりなさい」などとプレッシャーを与えない。あるいは必要以上に「落ち着いてゆっくりしゃべりなさい」と強要するなどの働きかけはよくないということを、まずお伝えしなければなりません。

 親御さんは良かれと思って矯正しようとする部分もあるとは思います。多くの方は発音についてお子さんにアドバイスしがちです。たしかに、小さい頃に吃音があったけれども、大人になるにつれてなくなっていくという人もいます。しかし、そのプロセスや理由はまだはっきりとは解明できていません。であれば、確実な治療ができないとしても、なにか周りからケアをしてあげることが必要です。

――親は子どもに対してどう接すればいいでしょうか?

富里:自分のふるまいが吃音に影響するかを気にする親御さんは多いですね。ただ吃音は発声を頑張れば頑張るほど治るというものでもありません。「女の子のほうが治りやすい」「親が治癒しなかった吃音を持っている場合は治りにくい」といったデータもあるので、治るかどうかは本人の体質による部分が大きいと考えています。

 吃音の発症や増悪が、環境要因によるという考えもあります。ただ繰り返すように「このような環境はよくない」というようなことは何もわかっていません。たまに「(親御さんに吃音があって)自分の吃音を聞かせると、子どもも吃音になるんじゃないか」と気にされる親御さんもいますが、そういったことは科学的には証明されていません。

 いろんなアプローチはありますが、その先の、吃音とともにどう生きるかという視点も大事です。まず、お子さんに吃音があったとしても話し方ではなく話の内容のほうを聞いてあげてください。将来的に吃音があっても、人前で話すことに恐怖や不安を覚えないようにすることが、大事だと思います。

――吃音のせいで話すのがいやになる、ということでしょうか?

富里:吃音が出るのを嫌がるあまり、話すこと自体に不安や恐怖感を抱いてしまう人もいます。これは医学的には、社交不安障害という病気を合併した状態といえます。社交不安障害は、人前で話すことに対して不安や恐怖感を抱き、そうした場面を避けがちになる状態のことで、定義上は精神疾患です。思春期以降の吃音において、これが二次疾患として吃音のために引き起こされることが多いとされます(※)。

 もちろん最終的には吃音が治り、完全になくなるのが理想的ではあります。しかし次に考えなければならないのは、治らなかったときに社交不安障害が合併しないようにどうするか、ということです。

 これは長期的な話なので、社交不安障害を確実に予防する方法というものはありません。ただ、たとえば言葉につまりながらも楽しくお話ができた、という体験を積んでいくことが、コミュニケーションに対する障壁をつくらないという意味では、大事ではないかと思います。そのために親御さんや学校など、周囲の理解を得ていく必要があるというわけです。

 一例を挙げると、学校で吃音などを理由にからかわれたり、いじめられたりした経験が社交不安障害を引き起こすということは、科学的に示されています。そのためそういうところは、医師からの診断書を使って配慮を求めるなどの必要があると思います。

――お子さんの吃音で悩む親御さんは、まずどこに相談すればいいですか?

富里:お子さんの場合は、かかりつけの小児科や療育センターです。ただ吃音をどれだけ専門にしているかは、医師や施設によります。ですので、まず電話で「吃音を診ていますか?」と問い合わせたうえで受診するようにしましょう。

 吃音はひとりで抱えないでください。吃音なんて自分だけ、自分の子だけなんじゃないか、ほかにこんな人はいないんじゃないか、そもそもしゃべり方なんかに悩んでしまって恥ずかしい……。いろんなことを考えてしまい、ほかのことを後回しにしてしまいます。

 しかし、吃音を持っている人はたくさんいるのです。冒頭でお話したように、100人に1人というのはかなりの有病率です。またここ数年、発達障害などの「見えない障害」に社会が注目し始めたことで、そうしたものへの理解も進みつつあります。徐々に情報も出始め、手が差し伸べられていると思います。そうした医療・相談機関を頼ってほしいです。(文/白石圭)

◯富里周太(とみさと・しゅうた)医師/国立成育医療研究センター・耳鼻咽喉科。映画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」吃音監修。

(※)Blumgart E, Tran Y and Craig A: Social anxiety disorder in adults who stutter. Depress Anxiety, 2010
成人の吃音当事者のうち、約40%が社交不安障害といわれている。

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このニュースに関するつぶやき

  • 吃音は息子はないけど、甥があった。息子の友達もある。すごくよく喋るのが共通してるかな。
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  • 35歳になった今でもどもるけど、そもそも言葉を喋り始めたのが6才と遅かった僕です。でも、一応働いて生活をしていっているので、なんとかなりますよ(^^;
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