NGT48暴行問題、再発防止策から抜け落ちた「メンバー間の過当競争によるリスク」

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2019年07月14日 10:51  弁護士ドットコム

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アイドルグループ「NGT48」の元メンバー、山口真帆さんが男性ファンから暴行被害にあった問題をめぐり、運営会社AKSは7月1日、公式ホームページで7項目からなる「再発防止策」を発表した。


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(1)NGT48メンバーのセキュリティ対策の強化(2)送迎対策(3)つながり防止対策(4)NGT48メンバーのメンタルケアの体制強化(5)NGT48メンバーと運営のコミュニケーション(6)運営面での意識改善の機会創出(7)活動の安心・安全のための毅然とした対応ーーの7つ。



具体的には、防犯用のGPS通報専用端末を配ったり、警備会社が劇場やメンバーの自宅周辺の巡回を強化したりするほか、本人や家族の同意のもとでSNSのDM返信のチェック体制を構築したり、プライベートな環境でファンと遭遇した場合に運営に即時連絡をする、などとしている。



さらに、毅然とした対応としては、メンバーの名誉やプライバシーを保護するため、SNS等で脅迫や誹謗中傷の書き込みをされた場合に民事・刑事での法的措置を含む厳正な対処をするとした。



劇場支配人の早川麻依子さんは「再び新潟の皆様に愛されるように初心に戻りゼロから始めたい」とツイッターでコメントしている。



アイドルの労働問題に詳しい安井飛鳥弁護士に再発防止策の評価を聞いた。



●「カウンセリングを希望者だけに限定しているのは不十分」

これまで法的地位が曖昧なため軽んじられてきたアイドルの安全対策に取り組み始めたことは業界の前進として評価できます。『運営側はアイドルを守ってくれる存在である』という信頼関係を醸成していくことがまず必要でしょう。



一方で今回示された対策はいずれも表面的なものであり、事件の背景にあるメンバー間での過当競争に起因する危険性、問題構造にまで踏み込んだものではないという印象を受けました。



若くして厳しい競争環境に置かれるアイドルのメンタルケアの問題に着目したことは評価できますが、カウンセリングを希望者に限定しているのは対策として不十分です。責任感の強い人ほど悩みを抱え込みがちで、カウンセリングを受けることを躊躇する傾向にあります。



労働安全衛生法では、一定の規模の事業所に労働者一律のストレスチェック実施を義務付けていますが、アイドルの場合にもこうした一律のストレスチェックやカウンセリングの実施が望ましいでしょう。



また、どんな対策を講じたとしてもメンバー同士やスタッフとの関係は業務上の利害関係が伴うため内容によって相談しづらい状況が生じることは避けられないでしょう。そのため運営側だけで問題を解決しようとするのではなく、業界事情にも理解があり気軽に相談が可能な第三者機関と連携した仕組みづくりも必要ではないかと思います。




【取材協力弁護士】
安井 飛鳥(やすい・あすか)弁護士
法律と福祉の知見を活かして障害者や依存症患者等の福祉的援助を必要とする方の相談支援に従事。芸能人の権利擁護を目的とする団体『日本エンターテイナーライツ協会』のメンバーとして主に芸能人のメンタルヘルスケアや未成年者芸能人の権利問題に注力している。
事務所名:弁護士法人ソーシャルワーカーズ千葉支所法律事務所くらふと
事務所URL:https://swrs.jp/


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  • 結局の所、所謂“大人たち”がボヤボヤしている間に予想を上回る速さで事態が悪化。其を見かねた世論の声に押されるがままになり今の事態を招いたのでは無いか…?
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