カレー沢薫の時流漂流 第51回 タピオカブーム、ビッグウエーブの一寸先に思いを巡らせながらタピってみた

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2019年07月15日 12:02  マイナビニュース

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みんな、タピっているだろうか。

今更だが空前のタピオカブームである、一瞬で終わるかと思いきや、思ったより息が長い。

私もタピオカブームについてはネットで聞き及んでいたが、何せ住んでいる所が田舎なのである、この村でタピオカに見えるものは8割魚卵だ。

よって、今年6月に所用で東京に来た際、やっと初タピに成功した。東京は「足元に気をつけないとタピオカを踏んでコケる」と言われるほどタピオカ店が乱立しているので、飲むだけならいくらでも飲めるのだが、せっかくなので、そこそこの有名店で飲むことにした。

さすが有名店だけあり、商品を選ぶ列が終わったら、商品を受け取る列が始まる、というコブラ状態ではあったが、それでも30分ぐらいで購入することが出来た。

実はそれとほぼ同時期、我が村でも有名タピオカ店がオープンしたらしいのだが、そちらは「一時間待ち」だったという。すでにタピオカは乱立状態の東京より、店舗数が限られている田舎の方が混むという状態なのだ。

もし、これからタピオカで儲けようという、出遅れに定評のある方は、激戦区の都会ではなく「唯一無二のタピオカ店」になれる田舎に出店して、光の速さで閉じることをお勧めする。何せ人口が少ないので、村民が全員1回タピり終わったぐらいで田舎の流行というのは終焉するのだ。

肝心のタピオカの味はどうだったかというと、30分並んで購入し写真を撮ってツイッターに挙げた時点で「やりきった感」が出てしまい、正直あまり覚えていない。ただ缶のコーンスープの如く、底にタピオカが残り、最後味のしない大量のタピオカを口に流し込んでフィニったことだけは覚えている。
○人間だもの、流行りもので問題を起こすことは避けられない

しかし、SNSに載せた時点で「優勝」してしまう人間は私だけではないらしく、写真を撮るだけで満足してタピオカを丸々捨てていく人間が問題になっているようだ。

こういうことが起こると「これだからタピり散らかしていくタピラーは」という、もはや、何を攻撃したいのかさえ分からん、流行への攻撃が始まるのだが、仮面ライダースナックのころから、カードだけ抜いて菓子を捨てていたこの俺たち人間である。基本的に何かが流行ると、一発問題を起こさねば気が済まないのである。

むしろ流行りというのは、問題が起こることにより廃れるか定着するかの分岐に入る。タピオカに限らず、今後何がブームになっても同じような現象が1セットとして起こるだろう。

ただ、タピオカが他のスイーツブームと違うとすれば、すでにブームが三回目ということである。今回のブームは「第三次タピオカブーム」なのだ、回数だけならすでに世界大戦を越えている。小中学生からすれば「新感覚スイーツ爆誕」という印象かも知れないが、我々30歳以上からすれば、今更感すら覚える。

スイーツブーム数あれど、ここまで周期的にブームが起きる物は珍しいのでタピオカと世相には何らか関連があり、「タピオカブームは不景気の前兆」という分析をする者すらいる。

二回も降り注ぐタピオカの戦火を潜り抜けてきているのに、まだ並んで飲むのかよ、と思われたかもしれないが、もちろん第一次と第二次のタピオカと今のタピオカは違う。

昔はもっと粒が小さく黒くもなかったし、ミルクティーにも浸かっていなかった気がする。一次二次を知っている者だからこそ違いを確かめたいという気持ちがあるのだ。

ちなみに当時はSNSがなかったので「写真だけ撮って捨てる」という問題が起こったのは3次からだ。そもそもタピオカの粒が大きく黒くなり、そしてミルクティーに浸かっているのも「映え」を意識したものだという意見もある。

このように「SNSの映え」はスイーツをはじめとしたブームに大きく影響を与えている。今後はどんなに美味くても、見た目が完全にバフン、というスイーツは流行らないかもしれない

○ビッグウエーブ、一寸先は闇かもね

もう一つ、今期タピオカブームで初めて話題になったのが、「タピオカがヤクザの資金源になっている」というニュースだ。

「ヤクザ」と「タピオカ」というあまりの高低差に耳血が止まらないニュースに、この話は主に笑い話として瞬く間に拡散した。

タピオカがヤクザの資金源とは一体どういうことかというと、タピオカを白い粉や大きめ麻の如く密輸入や密売しているという意味ではない。普通にヤクザがタピオカ屋さんを開いているだけだ。

もちろんこのニュースの真偽は不明だが「なくはない話」である。ヤクザの仕事と言えば、薬物や詐欺、暴力といった違法なイメージが強いと思うが、ヤクザは、違法合法、ヤクザのイメージなど問わず「儲かりそうなことはやる」のだろう。

そして「流行」は格好の「儲けるチャンス」なのだ。よってヤクザというのはそこらのJKよりもよほど流行に敏感なはずである。

ヤクザのみならず、悪いことをする人はとにかく「情報が早い」。先日も「老後までに2000万円」というワードが出されるや否や、早くも「2000万円貯められる投資セミナー」が多数開催され応募者が殺到したという。その中には当然詐欺同然のものもあっただろう。

このように「闇」というのは、もはやはっきり闇とわからず、完全に光の中に溶け込んでおり、気づいたら足を踏み入れているものなのである。

SNSで「かわいいタピオカ店におっさんの店員がいてヤダ」というJKのつぶやきが度々話題になるが、店員がおっさん以前に、店自体をヤクザが経営している、という可能性もないわけではないのだ。

ビッグウエーブに乗ることも大事だが、ビッグウエーブの先が闇でないか、ちょっと気にしてみても良いのではないだろうか。(カレー沢薫)
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