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“メシ”を通して危険な相手を取材する 「ハイパーハードボイルドグルメリポート」と「ウシジマくん」が描く“ヤバいやつらの世界”

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2019年07月15日 12:03  ねとらぼ

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ねとらぼ

写真上出遼平P(左)、真鍋昌平先生(右)。テレビ東京の神谷町スタジオで撮影
上出遼平P(左)、真鍋昌平先生(右)。テレビ東京の神谷町スタジオで撮影

 「実家が薬剤師で、温室育ちなのがコンプレックスだったんですよ。それで不良っぽいこともいろいろやったんですが、真っ黒だって言われてる奴は本当に黒いのかなっていう気持ちが今の番組につながってたりします。『世の中は白黒はっきりしないだろう』っていう感じというか」



【画像】リベリア取材での窮地



 リベリアの元少年兵やアメリカのギャング、ロシアのカルト教団などなど、世界のヤバい奴らはどのような飯を食っているのか……。危険と隣り合わせな場所に暮らす人々の「食事」にフォーカスした異色のドキュメンタリー「ハイパーハードボイルドグルメリポート」。そのプロデューサーである上出遼平は、自分が危険な現場に飛び込んでいく根本的な理由は、自身のコンプレックスだと語る。



 ヤバい現場に体一つで入り込んでいくのは、強い動機と心構えが必要となる。コンプレックスを動機にその取材をこなしてきた人間は、一体何を考え、どのように作品を作り上げているのか。今回、新作「ウルトラハイパーハードボイルドグルメリポート〜ヤバい世界のヤバい奴らのヤバい飯〜」の放送にあわせて対談をセッティング。裏社会への取材を繰り返して作られた『闇金ウシジマくん』の作者である真鍋昌平を迎え、“危険が伴う現場取材”にまつわる、当事者だけが分かることを語ってもらった。常人が足を踏み入れるのをためらう現場に通いつめる彼らは、一体何を感じ、何を考えてきたのだろうか。



●「ウシジマくん」と「ハイパー」、2人の作者は飲み友達



――そもそも、この二人ってどういったご関係なんでしょうか。



真鍋: 現担当編集者の豆野さんが知り合いだったんです。豆野さんから面白い番組の制作者の上出さんと一度会ってみないか? と。それで、初めて紹介されたときは既に自分は泥酔してて……。



――何年くらいの付き合いなんですか?



上出: 1年……? そのくらいは経ってます。



真鍋: そんな最近でしたっけ?



上出: われわれ、記憶がちょっとアレなんですよね……海馬が……。



真鍋: アルコールでダメになっちゃってる(笑)。



※編注:実際に2人が初めて出会ったのは2018年4月。新宿ゴールデン街にて。



上出: 僕は真鍋さんってもっと怖いと思ってました。なのにサングラス取ったときのお顔がちょっと優しい。でもやっぱり人の暗い部分とか見てるんだろうな……って警戒してたんですよ。そっからしばしばご一緒させてもらって、毎回先に酔いつぶれて寝てるんで、これは安心できる人だなと。これが人間を安心させるテクニックなんじゃないかという気もするんですけど(笑)。



真鍋: 取材で飲む際は、泥酔してもいいようにずっと録音だけは回してるんですよ。最初に「録音していいですか?」ってレコーダー回して、そのままつけっぱなしにしちゃう。



上出: テクニックですね。



真鍋: 基本的には録音していいか伺うんですが、場面によっては言わずに回しちゃうときもあります。



――それって、バレたら怒られますよね?



真鍋: 怒られます。もうバレたときには、謝るしかないなと思ってるんですけど。



●ほぼ偶然だった、「ハイパー」ができるまで



真鍋: 「ハイパー」ってなんでできたんですか?



上出: 基本的に新番組って、編成局がジャッジするんです。僕の企画は一度も通ったことがなかった。それと別に、制作部のプロデューサーたちが選ぶ若手チャレンジ枠がまれにあって、そっちに出したら選んでくれました。



――王道ではないルートなんですね。



上出: そうじゃなかったら成立してないです。似たような企画は昔から提案してたんですけど、「どこが面白いの?」と言われたときに今までにない番組ってどうしても説明しづらくて。でも企画を選んでくれたプロデューサーは僕に近い人たちだったんで、そこで信じてくれた。



真鍋: 自分の中で「いけるな」っていう確信はあったんですか? あれってグルメ番組じゃなくて、ご飯を通してそこに住んでいる人たちの気持ちとか生活とか人の本性を浮き彫りにしてる番組じゃないですか。そのへんをうまく表に出せるという予感はあったんですか?



上出: 予感はありましたけど、不安でしたね。今までいろんな国で仕事をする中で、そういう人たちにくっついてったら面白いなとは思ってました。でも何が撮れるかは分からないから、企画が通ったときは怖くて震えましたね。成立するか分かんないし、そもそも危ないし。



――1人で危ないところに行くのが前提の番組ですもんね。



上出: 企画書に「テレビクルーでは入れないところに僕1人なら入れます」って書いちゃったんですよ。人数がいたら警戒されて入れないけど、1人なら今まで撮れなかったものが撮れますと。それが通っちゃったから、やんなきゃいけない(笑)。



真鍋: 例えばYouTuberの人たちってけっこう危険なことをやって、この後どうなるんだろうって予測がつかない感じがあるじゃないですか。「ハイパー」はあの予測できない感じがちょっと似てると思います。テロップとかで全国区の作りになってるけど、そういうハラハラ感は時代に合ってると思ったんですよね。



上出: 何が起こるか分からない感じは意識してますね。テンポも、僕の番組はYouTubeに近い速さでやってます。テレビは現象が起こったら、それを説明するカットが入るんですよ。それが僕の番組ではほとんどない。取材の現場で僕は何も説明されてないんで、番組でもそのまま行っちゃう。説明過多のテレビはもういいじゃないか……と思っています。



真鍋: 上出さんって面白いなと思うツボが明確にあるじゃないですか。あの番組でも、流れるように「こっちは面白そうだな」っていう方向に行きますよね。



上出: ロケも編集も頭はなるべく使わないようにしてますね。編集も頭使うと分かりやすくなって料理上手になっちゃうんです。素材をバコーンって中華鍋に入れて、ドーンとそのまま出したい(笑)。やけに長いおっさんの顔のカットとかが入ってるのは、その場で僕が感じたままを出したいっていう気持ちからです。



●本当に1人で行って1人で撮影している「ハイパー」



――お二人は危ない現場に取材で行くこともあると思うんですが、そういうときの度胸はどこから発生するんでしょうか?



真鍋: やっぱり興味が勝つ感じですよね。でも、あの墓場で暮らしてた元少年兵とか怖いじゃないですか。



上出: 怖いですよね……。でもアドレナリンが出て突っ込んでっちゃうのが一番怖いんで、常に怖がらないといけないってのは意識してます。絶対撮ってこなきゃって興奮してるときが一番危ない。



真鍋: あれって1人で行ってるんですか?



上出: 1人です。向こうに着いたら現地のコーディネーターつかまえてますけど。リベリアでは膝に水がたまってて全然走れない50歳のおじさんと一緒に行きました。



――上出さんは取材前の段取りとかってどうしてるんですか?



上出: コーディネーターに関しては、僕の番組はけっこう時間をかけて関係を作るんですよ。ディレクターとコーディネーターの信頼関係が何より大事で、そこを裏切られたらもう死んじゃいます。「ハイパー」の前に世界に行く番組をやってたんですけど、そのときは日本人のコーディネーターと一緒に行って、その日本人のコーディネーターが現地のコーディネーターを雇って、3〜4人体制でロケをしてたんです。そこで関わるドライバーらと連絡先を交換して、その後コーディネーター抜きで僕とドライバーだけでロケができるようにして。それをこの4〜5年ずっとやってきました。結局ドライバーの方が現地の事情に詳しくて優秀だったりするんですよ。



真鍋: それに気がついたきっかけってなんだったんですか?



上出: ある時期、会社を辞めたくて仕方なかったんです。辞めてからも1人で仕事が成立するようにしておきたいと思ってたんで、それでですね。



真鍋: なんで辞めたかったんですか? 上出さんっていわゆるテレビっぽい番組とか、あんまりやる気ないのかなって思ってたんですけど……。



上出: ともすれば暴力になるようなことがテレビってけっこうあるんです。テレビってある現象を切ったり貼ったりするんで、その見せ方でもう全然違う見え方になってくるんです。いろんな番組で「そっちの見せ方はしたくない」ということが多くて。対象と向き合って撮影して、編集をするときに「思ってたのと違うな」ってなるのが歯がゆいし不誠実だなと。でも組織にいたらそれはやむを得ないし、それが嫌なら1人でやるしかないと思ってました。



――もう辞めて1人でカメラ持って行って帰ってこようっていう腹づもりだったんですね?



上出: 完全にそうです。それが図らずも実現できたのが「ハイパー」ですね。組織に所属してる状態で自分がやりたいことができてるんです。テレビで学んだこともたくさんあるし、テレビで得た仲間と今仕事ができているんで、1人ではこの番組は作れませんでした。やっぱりテレビってまだリーチさせるパワーがあるんですよ。それを捨てるのは、自分が何かを実現したいというときには賢いチョイスではないですね。だから、今すごく恵まれていい状態になっているなと思います。



●ロケ中は防弾チョッキ着用! 危ない目にあったらどうする?



――「ハイパー」のロケは、かなり危険に見えます。



真鍋: 衛生面に関しては抗生物質とか持ってけばある程度大丈夫じゃないですか。でも人に物を盗られたりするのって対処できないですよね。そういうのってどうしてるんですか?



上出: 言えない話もあるんですよ。ひた隠しにしてるのもあって。この番組やる前から何件かあるんですけど……。



――書けそうなとこだとどんなことがあったんでしょうか……?



上出: リベリアのが一番分かりやすいですよね。もみくちゃにされてカメラぶんどられるっていう。



真鍋: ボールペン盗られてましたよね。



上出: びっくりしましたね。拍子抜けも甚だしいというか。



――リベリアのスピンオフでも脅されてましたよね。あれも、「自分だったら絶対帰るな」と思って見てたんですが。



上出: 帰れないですよね、ああなったら。逃げるのが一番危ない。揉めそうになったら目を見てちゃんと喋らないとやられるっていう。でも走れる靴を履くことと身軽であることはいつも意識してて、あとはこっそり防弾チョッキ着てます。服の内側に着られるケブラーの薄いやつですけど。本当に撃たれたら骨は折れるけど、穴は開かない。刺されても一応大丈夫です。



――どこで買った防弾チョッキなんですか?



上出: コロンビアです。コロンビアって銃社会で、えらい人はチョッキを常に着ていたいんですけど、ごついやつだとダサいじゃないですか。僕が持ってるのはミゲル・カバジェロ社のやつなんですけど、そこのはオシャレなんですよ。着てるのはインナーのタンクトップタイプで、これはオススメです。



真鍋: いくらくらいですか?



上出: 10万円しないくらいです。高いは高いですけど、大統領とかも着てて、かっこよく守れる。ダウンジャケットタイプのやつとかあるんですよ。



――やっぱりそれって、現場で分厚い防弾チョッキを着てると距離ができちゃうっていうことなんでしょうか?



上出: そうですし、かっこ悪いからそんな自分を撮りたくない。自分だけ安全圏でいようっていうのが嫌ですね。



――真鍋さんは取材時に危ない目にあったりしたことはないんですか?



真鍋: 誰かの悪口をぽろっと言っちゃって「それ、どういうこと?」みたいなテンションになると本当にシャレにならないです。そこは気をつけてますね。



上出: ブン殴られることとかあるんですか?



真鍋: それはないです。



上出: 胸ぐらつかまれることくらいは?



真鍋: 俺はないですけど、一緒に行った編集者が歌舞伎町で首根っこつかまれて引き摺り回されたことがありました。ヤクザの人がいろいろ喋ってるのに足と腕組んでるから態度が悪く見える。緊張してそうなったのが俺は分かるんだけど、相手はそう捉えないじゃないですか。ある格闘技団体の幹部の実家の近くで取材させてもらったことがあるんですけど、深い時間になると相手が話してる途中で寝ちゃったりして。一瞬でジュッ! とタバコの火を手に押し付けられて起こされてました。うわぁ! と思いました。



上出: 後から「お前こんなん描いてんじゃねえよ」って怒られることとかありました?



真鍋: 裏パチスロのことを描いた際、後で摘発されたグループがいて、それが俺のせいだっていうことになってて、ラブホテルの取材時にホテルのオーナーの人から「なんか探してるらしいよ」って言われたことはありましたね。



――実際にそれで詰められたことは……。



真鍋: それは全然ないです。



――何か危険を避ける秘訣があるんですか?



真鍋: 紹介してもらうときに上の人からつないでもらうというのがありますね。下から行くと本当に大変なんで。



――紹介してくれた人の顔をつぶせない、ということになるんですね。



上出: ボスに話を通すと危険度は下がりますね。ただ「ハイパー」だと、上から行くと面白くなくなるというか。全部用意されてウエルカムになっちゃうんですね。それだとハラハラしない。



真鍋: 確かにヤカラ方面は上から紹介してもらいますが、生活保護やゲストハウスの取材だと立場を明かさずにやったりしますね。



●長い人間関係を築く、真鍋昌平の取材術



――真鍋さんは事前の準備ってどうしてるんですか?



真鍋: 自分は割と長期間取材するから、1回で全部撮らなきゃいけないってことはないんですよ。一度付き合うようになったら何回も会って、友達も連れてきてもらうみたいな。



――しっかり人間関係を築く感じなんですね。



真鍋: 10年以上前に取材した人とまだ付き合いがあるパターンもありますよ。というか、縁を切らせてくれないんですよ(笑)! 人によっては表の人と付き会えない人もいるし。利害抜きで話聞いてくれる人がいなかったりする。



――そういう人とはまず楽しく話すっていうのが大事になってくるんですね。



真鍋: 知り合って10周年記念で相手の実家に行って、親に紹介されたこともありました。通ってるラーメン屋とか八百屋でサイン書いて(笑)。あの人たちの道理だと、一番弱い部分を見せたら仲間だって感覚があるんですよね。家族がいる人は子どもを見せたら……とか。家族で会おうって言われたりするんですよ。腹を割ってる感があるんでしょうね。



――真鍋さんは取材対象から「飯食いに行くから来いよ!」って言われることもたくさんあると思うんですよね。



真鍋: そうですね……でもさすがに「この人めんどくさそうだな」って思ったらあまり関わらないようにしてます。ガサツで上からくるタイプの人とか、得になるところだけ取ろうとする人とか。こっちを取り込もうとする人もいるんですよね。それに寄ってっちゃうと危ない。



――取材相手と飯を食って、何か印象的なことはありましたか?



真鍋: ごちそうしたがる人が多いですね。ウナギ食ってから焼肉行こうとか(笑)。どっちかにしたい! 「おいしいです!」って食べるんですけど。



上出: 取材の現場って、半分は食事だったりするんじゃないですか?



真鍋: 話を聞くことが多いから飲むのは多いですね。それで仲良くなって、例えば金融屋さんだったら取り立てが見たいとか、債務者の人とのお金のやりとりが見たいっていう感じになっていく。



――でも、そういう現場に真鍋さんがいたら「この人誰ですか?」ってならないんですか?



真鍋: 何も言われないんですよ。お金借りにきた人は金融屋さんが怖いし、下手なこと言ってお金借りられなくなると困るから、ずっとけげんな感じでこっち見てるけど、特に何にも言われないです。



上出: そういうところに足を運んでるんですね。



真鍋: 一応行くようにしてます。ウソつく人が多いんですよね。こないだも南米から来た日本人でキャバクラの店長をやってるっていう人に会ったんです。そしたら「銃を突きつけられたことがある」みたいな武勇伝を語るんです。本人を見ると「本当にそんなことしてんのかな?」って感じの人なんですよ。



――ちょっと本当かどうか分からないですね……。



真鍋: でも事実だったとして、それを描けって言われても具体的な情報がないと無理ですよね。そのときにその人がどう思ったかとか、もっとディテールが知りたいんですよ。だからその人の友達に「本当にそんなことしたの?」みたいなことを誰も傷つかないように聞いて、本当かどうか調べますね。



――話を盛られている可能性があるんですね。



真鍋: 詐欺師とウソつきが多いんで。でもたとえウソでも面白かったら、それは真実として扱います。もともと俺が描いてるのはフィクションですし。でもディテールが凝ってないウソはつまんないじゃないですか。



上出: そういう現場的なディテールもウシジマくんってたくさんあるんですけど、内面的なディテールというか、人の中身の描写がすさまじいじゃないですか。もう一回その人になりきってるとしか思えない。



真鍋: 初期に関していえば、例えばゲイの話だったら新宿二丁目に赴いて、実際に男の人とホテル行ったりとかしてました。その空気感を感じながら自分だったらどうかなって考えたりして。今はもう取材しながらどんどん描かないといけないから、そこまで余裕なくなっちゃったけど。



上出: ウシジマくんって15年やってたじゃないですか。自分の中でこれはいつものパターンだなって思うことはありませんでした?



真鍋: ありますよ。人倒すときに車で轢きがちとか(笑)。これ前にもやったな〜っていう。人の心の描き方なんかも、癖がついちゃってるところはありますね。今は次の連載の準備中なんですけど、そのまんまやるべきか考えます。



上出: 難しいですよね。そのパターンが真鍋さんの色だったりするし、新しいことをやろうとしたら「今までの方がよかったのに!」と言われることも十分ありますよね。



真鍋: そのときは「帰ってきたウシジマくん」をやります(笑)。



――そうやって集めた情報の扱い方って、どういう風に気を使っていますか?



真鍋: 相手が今稼いでる内容については描くのをやめてます。そこで稼いでる人たちって、それが表立っちゃうと後々何か言ってくるかもなっていうのがあるんですよね。自分はジャーナリストみたいに新しい情報を提供するっていうより、その人たちの暮らしや葛藤にシフトを置いてるから、新しい情報を出すことには重点がないんです。



●「ハイパー」の取材で見つけた、人間の美しさ



――マンネリという点でいえば、「ハイパー」も毎回食べ物の話なので、「またかよ」って思うこともあったのではと思うんですが。



上出: メニューに関しては、似通ってくるところはありますね。ある国ではどこでも同じようなものしか食べてないみたいな。でも番組の主題が飯自体じゃないんで、うまそうであればなんでもいいですね。



真鍋: けっこうすごい環境で作ったものを食べてますけど、抵抗はないんですか?



上出: もともとはすごく抵抗があったんですよ。超潔癖なんで。薬剤師一家でクリーンに育てられて、絶対変なものを食べちゃダメっていう暮らしをしてたんですけど。食えるかどうかに関しては完全にアドレナリンですね。今回もケニアに行ってきて、ナイロビにケニア最大のゴミ山があって、そこで暮らしている青年を見つけたんですよ。そこらじゅう燃えててみんな気管支がおかしくなったり、鉛中毒で体壊したりしてるんですけど。彼らは粉ミルクが入ってた缶を鍋にして、そこに拾ったものとかを入れて煮込んで食ってて、今回はそういうのを食べてます。でも全然、最高にうまいです。



真鍋: 害ってないんですか?



上出: ちょっとしか食べてないんで。結局脂とか塩分とか、体にいい悪いって量の問題じゃないですか。少し食べるくらいだったらまず大丈夫。でも今回のケニアの青年も「俺たちはタフだ、タフじゃないとここでは生活していけない」って言うんですよ。かっこいいなと。みんな自分の命とか肉体に意識のフォーカスが向いている。彼らはケガしたら死ぬリスクが爆上がりする状態で暮らしています。そういうのをテレビで出したいと思ってますね。僕らと全然違う世界で生きている人たちの、どろっとしてる中での一瞬の美しさだったり、かっこよさみたいなもの、これはウシジマくんにもあると思います。



真鍋: ありがとうございます。



上出: ただケニアから帰って来てから、しばらくは咳が止まらなかったですね(笑)。ゴミ山にいたのは3日くらいだったと思いますが。



●「取材」でコンプレックスを解消する



――上出さんのご実家が薬剤師というのはびっくりしたんですけど、どのタイミングで吹っ切れたんでしょうか?



上出: 温室育ちがコンプレックスだったんですよ。愛情いっぱいで育った自分がかっこ悪く感じたというぜいたくな悩みです。それで学生時代に軽くグレました。ひどい育ちの中で必然的にグレる奴と、僕みたいに温室育ちで「心配してくれよ」ってグレる奴がいると思うんですよ。



――それはそうですね。



上出: それで不良っぽいこともいろいろやったんですけど、なんで自分はこんなことしてたんだろうっていう思いから大学では少年犯罪とかの研究をしたりして、真っ黒だって言われてる奴は本当に黒いのかなっていう気持ちが今の番組につながってたりします。世の中は白黒はっきりしないだろうというか。吹っ切れたっていうことでいうと、コンプレックスを解消したくていろんなトライをしたんです。中国の山の中に2カ月行ってみたり、ボクシングをやってみたり、アラスカにこもったりとか。潔癖な自分を変えたかったし、弱いのが許せなかった。



――今そのコンプレックスは解消されましたか?



上出: けっこう解消されました。汚い自分でいられるというか、汚い自分が許せる。



――取材の効能というか、取材でそういう環境に飛び込んだから自分の中で意識が変わったんでしょうか?



上出: それもあると思います。だからどんどん番組の内容がひどくなってます(笑)。昔はちょっとやだなと思いながらゴミ山行ったりしてましたけど、もう今は全然平気なんで。



真鍋: 俺も福島に取材に行った時、農家で牛飼ってるとことかだとご飯に蝿がついてたりするんですよ。最初はうわっと思ったんだけど、でも2日目は普通に食ってましたね。



上出: 慣れですよね。多分大丈夫なんですよ、なんだかんだで。僕らなんかパッと行ってパッと帰ってくるんだから、大体のことは大丈夫です。



――取材時に、「これはもう勝ったな」って思うのはどんなときですか?



真鍋: 沖縄のエピソード(※)は上手に料理できたなって思ってます。



※『闇金ウシジマくん』36〜39巻収録の逃亡者くん編。



上出: それは取材してる際に「これはいけるぞ」っていう感触があったんですか?



真鍋: 楽しかったんですよ、自分が。めんどくさいことも多いんですけど、それも含めて掘れば掘るほど面白いっていう。



上出: そこは完全に僕も一緒だと思います。取材してるときに楽しいなとか面白いなっていうことがあったらもうそれで勝ち。あと、僕は映してる人がそのまま主人公になっていくんで、その人のことを好きになれたら勝ちですね。リベリアの娼婦の人とか、もう完全に好きになってました。アンジェリーナ・ジョリーにしか見えなかったですもん。



真鍋: あれはアンジェリーナ・ジョリーですよ!



上出: ジョリーですよね!



●それでも「取材」をする意義



上出: 僕、真鍋さんに聞きたいことがあったんですよ。僕らは危ないって言われているところに入って行って、基本的に僕らより苦しいであろう生活をしている人たちに取材させてもらって、そこで得た物語を僕らのお客さんに見せて暮らしているわけじゃないですか。これってなんなんだろうって思うことがあるんです。



――と、言いますと……。



上出: 僕は彼らより金銭的にも良い生活をしているけど、彼らなしでは僕は生活できない。サファリパーク扱いしてるんじゃないか、搾取してるんじゃないかって、帰りの飛行機でふと思ったりするんです。自分の中でいろいろ考えて「こうだから正義が保たれているんだ」っていう結論を出してはいるんですけど、真鍋さんも似た部分があると思うんですよね。



真鍋: 確かにあります。彼らもいろんなSOSを発しているというのが分かるんですよ。でもそれ以上寄り添っていけるかと言ったら、やっぱり無理だったりする。どっかで切らなきゃいけない。



――難しいですね。



真鍋: でも思うんですけど、個人がSNSで訴えても届かない声を伝える力が、自分達にはあるじゃないですか。言葉にできない感情だったり、上出さんだったら現状すら知られてない世界のある場所の状態を表に出すことができる。確かにテロップ出して派手にやってるように見えるかもしれないです。でもあの番組をちゃんと見てる人たちは、彼らの苦しみや状況を理解した上でどう生きてるかを伝えていることが分かると思う。声にならない声を届けるっていう意味で、価値のあることをされているように見えます。



上出: 僕も、自分を納得させるにはその点しかないかなって思ってます。聞いてほしいっていう人たちはたくさんいるんですよね。スピンオフに出てきた、自分の電話番号を連呼して「助けてくれ!」「知ってくれ!」っていう人もいる。もう1つ、強いて言うなら「お前と飯が食えて楽しかったよ」って言ってくれるかどうか。



――けっこうみんな、ご飯をわけてくれますよね。



上出: 逆の立場になったと考えると、見られてたら「食う?」って言うだろうし。同じ釜の飯を食うっていうのは世界共通でなんかしらある気はしますね。でも一個納得いってないことがあって。意外と残すんですよね。「腹減った! 金ねえ!」って言ってるのに、あれはなんなんですかね……。そういう価値観なのかなとしかいえないんですけども。



――聞いてみたことはないんですか?



上出: 聞いたこともあったんですけど、納得はいかなかったんだよな……。なんなんでしょうね。その瞬間腹が満たされたらもうオッケーなのかもしれない。刹那主義ですね。



●頭にウルトラがついて、「ハイパー」ゴールデン進出!



――今度放送される新作のこともお聞きしたいんですが。



上出: タイトルが「ウルトラハイパーハードボイルドグルメリポート」になりまして。バカ丸出しですね(笑)。副音声がまだちょっとキャスティングできてなくて、下手したらディレクターが酒飲みながら裏話するだけになるかもしれないです。



――それで全然面白そうじゃないですか! もしくは真鍋さんに喋ってもらうとか……。



上出: 下手したらやる可能性(※)あります、それ。



真鍋: 酒があるならいいですよ(笑)。



※取材収録後、真鍋先生の副音声出演が本当に決定



――編集作業は順調ですか?



上出: 今朝自分の中で1回目の編集を終えたんですけど。まだ作業自体は全然終わってなくて、昨日ブルガリアから1人ディレクターが帰ってきたくらいなんで。何が起こるか分からないから、いくつか走らせるんですよ。それで撮れたやつだけオンエアしていくっていう。



――今までのもいくつか放送していないものがあるんですか?



上出: 大体全部放送しているんですけど、1つの国でいくつか撮ってきて、そのうちの1エピソードを放送してる感じです。だからその国で撮ってきたものでも、出さなかったものはありますね。



――スピンオフはそういう素材っていうことですか。



上出: そうですね。物語から外れちゃうものがけっこう出てくるんで。



――7月15日21時から放送なんですね。



上出: はい。時間帯的に見てらんない人も多いんじゃないかな……。ついてこれたら立派なもんだと思います。



真鍋: どういう人が見てるんですか?



上出: この枠自体は、60〜70代の方が見てくれている時間帯なんですよ。祝日で裏がはじめてのおつかいの3時間スペシャルなんで、こっちもいいおつかいを見せてやろうと。



――しかし、「ハイパー」はけっこう間が空きますね。



上出: 今回は1年以上空いてますからね。もう終わったと僕は思ってましたけど、偉い人が「そういえば」って言って復活しました。



――「ハイパー」をやってないときは何してるんですか?



上出: 基本的にはレギュラーの他の番組をいくつかやっていて、今回も空いた時間にロケ行ってます。だから毎回、他の仕事が終わった後で編集してます。もう趣味みたいなもんです。



――そこまでやるっていうのは、やっぱり面白さがあるからですか?



上出: 面白さより苦しさの方がある気がしますね。台本もないし何も撮れないかもしれない、でもお金は使っちゃってるっていう状況なんで。おかげさまで一部の人からは期待してもらってて、それでゴールデンで放送ってなったらつまんないものは出せないし、映ってくれた現地の人たちのためにも変なものにはできない。一方ではダメだったらダメでいいやとも思ってます……楽しさと苦しさで言えば半々かな。何が起こるか分かんないっていう楽しさもあるんで。他の若いディレクターは震えながらロケしてると思いますけど(笑)。



●ウルトラハイパーハードボイルドグルメリポート〜ヤバい世界のヤバい奴らのヤバい飯〜 放送内容(予定)



・ゴミ山暮らしの若者飯:ケニア



首都ナイロビにある巨大なゴミ集積場。殺人事件が頻発するという同所で出会ったのは、ゴミの中で暮らす18歳の青年。汚染された空気で肺を病んだ彼の生活に密着。



・人食い山の炭鉱飯:ボリビア



標高4000メートルにある「人食い山」と呼ばれる鉱山。これまで800万人の労働者が命を失った。ここの者は高山病予防にコカの葉を噛み、度数99%の酒を煽りながらつるはしをふるう。



・漁キャビア飯:ブルガリア



同国を流れるドナウ川はヨーロッパ唯一のチョウザメ生息域であり、良質なキャビアの産地。乱獲により現在はチョウザメ漁が禁止されているが、ある村では漁師の大部分が密漁に手を染めている。彼らは何を食い、何を思うのか。



出演者: 小藪千豊 有吉弘行 真鍋昌平



放送日:テレビ東京系7月15日21時〜


このニュースに関するつぶやき

  • 当たり前だけど二人とも詐欺集団や反社と付き合いあるし取材として人間関係構築しないといけないから上出コネクション、真鍋コネクションあるよね。どこが線?
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  • 私の地域は温室育ちのなんちゃって不良が多い地域でした。2つ上の学校一の大不良が駅前で本物の不良におちょくられ虐められてるのを見たらちょっと泣けた。
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