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広島新庄のエースは本格派右腕。「左でなければ」のジンクスを破るか

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2019年07月16日 07:32  webスポルティーバ

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 2年前、2人の1年生右腕に目がくぎ付けになった。

 ひとりが、今や”高校BIG4”の一角として連日メディアに取り上げられている西純矢(創志学園/岡山)。当時は現在の代名詞となっている縦のスライダーではなく、フォークを武器に空振りを奪っていたが、強い踏み込みで投じるストレートと縦変化のコンビネーションは出色の存在だった。

 魅了されたもうひとりの逸材が、桑田孝志郎(くわた・こうしろう/広島新庄)だ。初めてじっくりと登板を見たのは、秋季大会後に開催された1年生大会。ひと目で股関節の柔軟性が伝わってくる豪快な足上げから、跳ねるようなステップで重心を前に移す投球フォーム。体を縦回転することで生まれる、角度のあるリリースから投じられるストレートは、初回の投球練習の時点で142キロを計測した。「球速が出やすい」と評判の三次きんさいスタジアムのスピードガンではあったが、球速表示以上の勢いに胸が躍った。

 岡山と広島に現れた、2人の本格派右腕。「2年後の中国地方をリードするのは彼らだな」と思い、ある高校野球雑誌にもそういった内容を書かせてもらった。

 その後の歩みを見ると、西の”ブレイク”は周知のとおり。2年生エースとして出場した昨夏の甲子園初戦で16奪三振の快投を披露し、たちまち全国区の存在となった。

 一方の桑田は、昨春の広島大会、中国大会を制したものの、夏は決勝で広陵に惜敗。背番号10ながら主戦格として決勝の先発を任され、延長10回を粘り強く投げたが、甲子園出場はならなかった。

 衝撃的な全国デビューと県大会決勝での涙。勝負の世界で「たら・れば」が御法度なのは重々承知しているが、「昨夏桑田が甲子園に出場していれば、もしかしたら西と同じくらい注目されていたのでは……」と、今でも考えてしまうのだ。

 この夏、甲子園へのラストチャンスに挑む桑田は、山口県宇部市の出身。故郷を離れ、広島新庄に進んだのは、幼少期から知る先輩の存在が大きかったという。

「家も近所で昔からよく知っていた古川智也(現・慶応義塾大)さんの存在が大きかったです。自分が中学3年だった夏(2016年)に、古川さんが1年生でベンチ入りをして甲子園に出ていたので、『自分もここで甲子園に行きたい』と考えるようになりました」

 古川に電話をした際に「寮の雰囲気もいいぞ」と助言をもらい、進学を決めた。田口麗斗(巨人)、堀瑞輝(日本ハム)の左投手だけでなく、永川勝浩(広島)、六信慎吾(現・西濃運輸)ら本格派右腕も巣立ち、「投手王国」として名高い広島新庄だが、桑田にとってそこはあまり重要ではなかった。

「中学時代の後半からピッチャーをやらせてもらいましたが、2年まではキャッチャー。小学生の時はほとんど内野手だったので、(同じく内野を守っていた)古川さんに憧れていたのもそれが一番の理由です。なので、『絶対にピッチャーをやるぞ!』とはそこまで思っていなかったです」

 ポジションにこだわりはなく、「レギュラーを取って甲子園に行く」という思いの方が強かった。しかし多くの好投手を育成してきた、監督の迫田守昭(さこた・もりあき)は、桑田を投手として高く評価していた。迫田は言う。

「入学時から130キロぐらいの球速はあって、身体能力、筋力も高いものがありました。どこを守っても中心選手になるとは思いましたが、軸になる投手に育てたい、なってほしいと強く思っていましたね」

 素質を見込まれた桑田は1年春からベンチ入り。公式戦での登板を重ね、自信を深めていった。

 日々の練習のなかで迫田が繰り返し伝えてきたのが「投手はキレとコントロール」であること。その意図を迫田が説明する。

「投手指導において私が大切にしているのが、『投手はキレとコントロールを磨くべき』だということ。これは左右関係なく、すべての投手に当てはまると思っています。今はほとんどの高校がマシンで速球を打ち込む時代。球速が出ていてもコースが甘かったり、キレがないと簡単に打たれてしまいますから」

 フォームなどの技術面については「あまりあれこれ言わない」迫田の方針も、「自分の投げたい形を考えながらフォームをつくるタイプ」の桑田にマッチした。2年時には球速も140キロ中盤に到達し、地元・山口で開催された春の中国大会で優勝。故郷に錦を飾った。

 春から夏にかけてもスケールアップし、2年夏に最速148キロをマーク。しかし、決勝敗退の雪辱を期して臨んだ秋は、その速球が影を潜めていた。春、夏とフル回転するなかで蓄積した疲労から、右肘に違和感を覚えていたのだ。

 入学以来意識してきた「キレとコントロール」と投球術を武器に、4強まで勝ち進んだが、準決勝で夏に続いて広陵に敗戦。翌週の3位決定戦も落とし、センバツの重要な参考材料となる中国大会の出場を逃した。

 足踏みの期間はあったものの、ひと冬越えて、右ひじの不安も一掃。今春の県大会の時点で球速も146キロまで戻し、6月に行なわれた大阪桐蔭との招待試合では、自己最速タイの148キロをマークするなど、完全復調と言える状態に戻ってきた。 

 センバツで150キロを記録した河野佳(広陵)、練習試合で152キロを投じた谷岡楓太(ふうた/武田)の同県のライバル2人とともに、「夏の大会での150キロ超え」も期待されるが、桑田本人の意識はどうなのか。

「野球を続けていくなかで、将来的に150キロを投げたいとは思っています。でも、この夏無理にその数字を追い求めようとは思いません。それよりも、監督から教えられてきたキレとコントロール、2年生の頃から意識してきた、野手が守りやすいテンポを大切にしていきたいと思います。野手と一丸になって、全員でアウトを取るピッチングをしたい。それが一番見ている人をワクワクさせるピッチングとも思うので」

 春の広島大会終了後、試合用のグラブを新調した。田中将大(ヤンキース)が使用している型のグラブを、この夏は使う予定だ。”令和の怪物”佐々木朗希(大船渡/岩手)も同じモデルを使っているため、「対抗意識はあるか?」と投げかけると、こう答えが返ってきた。

「ないです、全然ないです(笑)。レベルが違いすぎて……あっちが断然上なんで。意識とかはまったく」

 終始控えめで、ともすれば「投手らしくない」ようにも思える桑田だが、グッと目に力が宿った場面があった。それが”ジンクス”と”宿敵”について話を向けたときだった。

 広島新庄には、過去3回の甲子園出場(2014年春、2015年夏、2016年夏)はいずれも左腕エースだったことから生まれた、「左のエースでなければ勝てない」というジンクスがある。桑田は言う。

「甲子園に行っているのも、プロに進んだ先輩の多くも左。実際、自分も田口さん、山岡(就也/現・JX−ENEOS)さん、堀さんの3人の印象が強いです。去年一緒に投げていた右投手の竹邊(聖悟/現・龍谷大)さんとも『左でしか勝てないって言われるのもイヤやな』という話をしていて。今年勝つことで、そのイメージを変えたいです」

 また、桑田の入学直後の2017年春の県大会決勝で勝って以降、公式戦で広陵からの白星はない。1年生大会を含めると現在5連敗中だ。

「甲子園を目指すうえで、必ず勝たないといけない存在が広陵です。ここまで負けてきて、一番悔しく、印象に残っているのが昨年の夏。今思うと必要以上に『広陵との対戦だ』と意識しすぎた面は確実にあったと思います。この夏も勝ち進めば必ず戦わないといけないと思いますし、今回こそ抑えて勝ちたいです」

 今夏は両校ともにノーシード。お互いに勝ち進めば決勝で顔を合わせる組み合わせとなっている。

 宿敵への雪辱とチームに根付くジンクス打破への思い。その両方を達成した時、控えめな本格派右腕も「いや、オレもなかなか……」と思えるのではないか。2年前に見せた、”BIG4”まで上り詰めた右腕に勝るとも劣らない躍動に魅了された者として、その瞬間を迎えることを期待している。

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