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シンクロに再起かけたおじさんたちの群像劇 フランス発のハートフルコメディー

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2019年07月16日 16:00  AERA dot.

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写真Gilles Lellouche/1972年7月5日、フランス・カーン生まれ。演劇学校を卒業後、短編映画の監督としてデビュー。同時に俳優業を始め、2010年の「君のいないサマーデイズ」で第36回セザール賞助演男優賞にノミネート。04年、共同監督の「ナルコ」で長編デビュー(撮影/写真部・掛祥葉子)
Gilles Lellouche/1972年7月5日、フランス・カーン生まれ。演劇学校を卒業後、短編映画の監督としてデビュー。同時に俳優業を始め、2010年の「君のいないサマーデイズ」で第36回セザール賞助演男優賞にノミネート。04年、共同監督の「ナルコ」で長編デビュー(撮影/写真部・掛祥葉子)
 AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。

【映画「シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢」の場面写真はこちら】

*  *  *
 映画「シンク・オア・スイム」は、人生の折り返し点を迎えた中年男性8人が、シンクロナイズドスイミング(現・アーティスティックスイミング)の世界選手権に出場。家庭や仕事、人間関係に行き詰まった彼らが、“イチかバチか”の再起にかけるヒューマンコメディーだ。

 ベルトラン(マチュー・アマルリック)は2年前からうつ病を患い、会社を退職して自宅にこもりがちな生活を送っている。妻は味方だが、子どもたちから軽蔑され、義姉夫婦からも嫌みを言われる日々。自分でもなんとかしなければと思っていた中、地元の公営プールで男子シンクロナイズドスイミングのメンバー募集を目にする。

 この映画が具体的に動きだしたのは、ジル・ルルーシュ監督が、スウェーデンに実在する男性シンクロチームのドキュメンタリーを見たことだった。

「(映画の構想として)特に重要視していたのは、現代社会はうつ病に近い人々が多いということ。フランス全体に感じる倦怠感について語りたいと思っていました。でも、詩的で映画的な側面が欠けていた。そんな時、10年くらい前にシンクロのドキュメンタリーを見たことを思い出しました。自分が伝えたかったことを表現するのに、シンクロがうってつけだと思ったんです」

 うってつけの理由は、シンクロが団結の象徴だと思えたからだ。手を繋いだり、一人もはみ出さないように練習したり。シンクロするためには互いを知らなければならず、そのためには語り合い、協力し合い、信頼感を高めていく必要がある。

「それができるようになれば、愛情を持って相手の気持ちに沿って話を聴けるようになります。スポーツ映画は勝負に重点が置かれますが、私は勝負ではなく人物を描きたかった。シンクロという団体スポーツには勝負事ではない、美しさがあると思いました」

 映画は群像劇のようでありながら、一人ひとりのキャラクターが心に残る。リアルに感じられるのは、監督が「自分自身を少しずつ投影させている」からだ。例えば、40歳を過ぎてもミュージシャンになる夢を捨てきれず、給食の賄いをしながら車を根城にして音楽活動をするシモン。監督自身は演劇学校へ通って俳優となるチャンスを得たが、40代も後半になると俳優の仕事は少なくなる。そんな時どうやって生活していくのか、40歳過ぎても夢が叶わなかったらどうするのか。シモンのような人物を造形するのは難しいことではなかった。

「今作で一番難しかったのは、常に映画に誠実であることです。センチメンタルな部分と喜びをバランスよく、どちらかに偏らないようにしました。毎日7割は映画のことばかり考えていましたね」

 とはいえ、キャストの中にはシンクロ以前に泳げない俳優もいて、監督自身、「(映画は)無理かと思った」そうだ。そんな俳優たち自身の奮闘もぜひ確認してみては。

◎「シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢」
7月12日から全国公開

■もう1本おすすめDVD 「ウォーターボーイズ スタンダード・エディション」

 2001年9月の公開当初は、「男のシンクロ!?」と思いもよらない企画で大ヒット。今や日本で男子のシンクロと言ったら、見ていない人でもこの映画を思い浮かべるに違いない。

 唯野高校水泳部は部員が鈴木智(妻夫木聡)一人となって廃部寸前。そんな時、突然顧問としてやってきたのが、新任の美しい佐久間先生(眞鍋かをり)。彼女に引かれて大勢の男子たちが入部してくるが、先生が「シンクロをやる」と言い出した途端、皆一斉に逃げ出してしまう。

 残ったのは鈴木と、アフロ頭の佐藤(玉木宏)、ダンス少年の太田(三浦アキフミ)、カナヅチの金沢(近藤公園)、なよなよした早乙女(金子貴俊)の5人。彼らは産休に入った佐久間先生の代わりに、ひょんなことから知り合ったイルカ調教師の磯村(竹中直人)から指導を受け、シンクロに挑戦する羽目に……。

 おバカな高3男子たちが先生に叱られたり受験勉強に悩んだり。物語は後半へ向かうほど盛り上がる。クライマックスのシンクロシーンは男子ならではの大迫力。

 暑さにうんざりしている人、最近笑ってない人にぜひオススメしたい青春映画。

◎「ウォーターボーイズ スタンダード・エディション」
発売元:フジテレビジョン/アルタミラピクチャーズ/電通 
販売元:東宝 価格2800円+税/DVD発売中

(フリーランス記者・坂口さゆり)

※AERA 2019年7月15日号

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