ホーム > mixiニュース > コラム > 吉本興業「今後も契約書つくらない」に近藤春菜さん反発、口頭契約に潜むリーガルリスク

吉本興業「今後も契約書つくらない」に近藤春菜さん反発、口頭契約に潜むリーガルリスク

9

2019年07月16日 18:12  弁護士ドットコム

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

弁護士ドットコム

写真記事画像
記事画像

所属芸人が事務所を通さない「闇営業」で反社会的勢力(反社)の会合に参加し、報酬をもらった問題で、吉本興業ホールディングスの大崎洋会長が各メディアのインタビューに応えている。


【関連記事:「500万円当選しました」との迷惑メールが届く――本当に支払わせることはできる?】



闇営業の背景には、芸人の収入の不安定さがあるのではないかという指摘がある。たとえば、日経新聞電子版は7月13日配信のインタビューで芸人との契約方法についても突っ込んで聞いている。



記事によれば、吉本と所属芸人との間には紙の契約書はなく、「諾成契約という口頭による契約を交わしてきた」という。「昔の芸人の中には漢字が読めない人もいて、紙の契約書は存在しなかった」という理由からだ。今後もこの方針は変わらないという。



●ハリセンボン・近藤春菜さん「口頭でも聞いた覚えない」

一方、吉本所属のお笑いコンビ・ハリセンボンの近藤春菜さんは7月15日、日本テレビ系「スッキリ」の中で、「お互い同意していないと契約って結ばれないと思うんですよね」と述べた上で、次のように語った。



「『吉本興業はどういう考えであなたとこういう風に契約しますよ』っていうことを私は口頭でも聞いた覚えはないですし、『会社にいくら入ってあなたの取り分はこうです』とか、他の問題に関しても何もない」



「会長がおっしゃっていることと、芸人みんなの間での相違がすごくて。これで納得している芸人っていないんじゃないかなって思います」



法律上、口頭でも契約は成り立ちうるが、言った言わないのトラブルにもなりやすそうだ。契約のあり方について、秋山直人弁護士に聞いた。



●口頭のリスク「契約が意味を持つのはトラブルになったとき」

契約は口頭でも成立する、というのは理屈としてはそのとおりですが、現実には、契約が意味を持つのはトラブルになったときですから、口約束ではあまり意味はありません。



例えば、芸人が約束してもらったはずのギャラを芸能プロダクションに払ってほしいというときに、口頭でギャラを約束しただけでは、裁判を起こして強制的にギャラを払わせるということは非常に難しいでしょう。



「そんなに払うなんて約束してないよ」という話になれば、言った・言わないのレベルの話になります。



●契約書がないと「闇営業」の禁止も大変?

逆に、今回問題になったような《闇営業》についても、芸能プロダクションが芸人に裁判を起こして、「会社を通さずにギャラをもらって営業をすることは契約上禁止されているから損害賠償を請求する」と主張しても、契約書がなければ、そもそも芸能プロダクションを通さずに営業をすることが禁止されているのかどうかから争いになるでしょう。



このように、芸人と芸能プロダクションとの間の権利・義務について、合意した内容を具体的に決めた契約書がなければ、いざ紛争になったときに、どちらにとっても不利益で、紛争解決のコストが双方にとって高くなり、解決の道筋も不透明となります。



従いまして、口頭で済まさずに、お互いの権利・義務を契約書で明確にすることは非常に重要です。



吉本興業が、大手芸能プロダクションでありながら、いまだに口約束で多数の芸人を抱えているという経営手法は、リーガルリスクが高いものといえます。



所属する芸人さんにとっても、契約書すらないという状態では、芸能プロダクションが自身の権利を尊重しているとは受け止めにくいのではないでしょうか。



●芸人とプロダクションの関係は対等か?

契約書を取り交わすのは当然行うべきとして、さらに重要な観点は、経済的に見て弱い立場である芸人が、芸能プロダクションから一方的に不利益な条項を押し付けられないかという点です。



芸人も商売として芸能プロダクションに所属して芸事をするわけですから、消費者契約法等の消費者保護法制は適用されません。



芸人と芸能プロダクションとの関係が雇用契約であるかどうかは、指揮命令関係があるか等個々の実態によるので議論の余地があると思いますが、仮に雇用契約ではなく業務委託契約なり専属マネジメント契約だとすると、労働者を保護する労働法制も適用されません。



そうなると、芸人と芸能プロダクションで契約を結ぶという場合に、双方の交渉力には格差がありますから、高額な違約金や不必要・過剰な禁止事項などで芸人を不当に拘束する契約が結ばれる危険性があります。



ですので、今後望ましいのは、業界団体等で有識者等にも関与してもらって議論をして、契約当事者双方の権利義務のバランスに配慮した標準的な契約書ひな形を作り、それに準拠して契約書を締結するといった方向性だと考えます。




【取材協力弁護士】
秋山 直人(あきやま・なおと)弁護士
東京大学法学部卒業。2001年に弁護士登録。所属事務所は溜池山王にあり、弁護士3名で構成。不動産関連トラブル、企業法務、原発事故・交通事故等の損害賠償請求等を取り扱っている。

事務所名:たつき総合法律事務所
事務所URL:http://tatsuki-law.com


このニュースに関するつぶやき

  • 芸能人は労働者? 個人事業主? 専門弁護士が語る“闇営業問題”の解決策「行政が切り込むべき」 2019-07-20 オリコン https://www.oricon.co.jp/special/53355/
    • イイネ!6
    • コメント 0件
  • 所属芸人の数が多すぎるのでしょう。
    • イイネ!24
    • コメント 1件

つぶやき一覧へ(9件)

あなたにおすすめ

前日のランキングへ

ニュース設定