ホーム > mixiニュース > コラム > 心の奥まで涼やかに 真夏の京都は足つけ神事と涼菓で乗り切る

心の奥まで涼やかに 真夏の京都は足つけ神事と涼菓で乗り切る

3

2019年07月17日 11:30  AERA dot.

  • 限定公開( 3 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AERA dot.

写真縄文時代から生き続ける糺の森の樹々に囲まれた休憩処「さるや」
縄文時代から生き続ける糺の森の樹々に囲まれた休憩処「さるや」
 国内外の人々を惹きつけてやまない京都。その四季折々の魅力を、京都在住の人気イラストレーター・ナカムラユキさんに、古都のエスプリをまとったプティ・タ・プティのテキスタイルを織り交ぜながら1年を通してナビゲートいただきます。愛らしくも奥深い京こものやおやつをおともに、その時期ならではの美景を愛でる。そんなとっておきの京都暮らし気分をお楽しみください。

*  *  *
■目にも心にも涼やかな涼菓を求めて

 「あっついあついなぁ」という言葉が、挨拶のように繰り返し交わされ、京都盆地特有の蒸し暑さを最も感じる7月。京では、古くからこの暑さを乗り切る工夫や行事が多く生み出され、伝え続けられています。

 視覚や味覚から感じ取る涼も暮らしの中に欠かせないもの。街のあちこちの甘味処で、水を感じさせる涼やかな表情をした和菓子が並び、軒先では “氷”の旗が、誘うようにゆらゆらとはためいています。

 かつて、夏場の氷はとても貴重なものとして大切にされていたそうです。下鴨神社、神様の台所でもある大炊殿(おおいどの)の横には、冬の新鮮な雪を夏まで糺の森(ただすのもり)に保存しておく「氷室(ひむろ)」があり、真夏の神事では、無病息災を祈願し、氷を口にしてお祓いをしていたと伝えられています。今も尚、“氷”は京都の夏に欠かすことが出来ない夏の味なのです。縄文時代から生き続ける糺の森の樹々に包まれる下鴨神社。その境内にある休憩処「さるや」で、太古の樹々に覆われた木陰の中、味わう甘味はまた格別です。今回は、心の奥まで風通し良く、目にも涼やかな京の真夏の涼菓や小物をご案内します。

■暑い夏を乗り切る 御手洗祭(足つけ神事)

 世界文化遺産「下鴨神社」では、毎年、土用の丑の日の前後5日間に御手洗祭(みたらしまつり)が行われます。氷のようにひんやりと冷たい御手洗池の水に、膝まで足をひたし、そろそろと歩き、曲橋に差し掛かったあたりで蝋燭に火を灯し祈ります。水から上がった後は、無病息災を願いつつ、葵の器でご神水をいただくのです。罪、けがれを祓い、疫病、安産にも効き目があると言われ、多くの参拝の方で賑わうお祭りです。京都に暮らしていると、飛び上がるほど冷たい水に足をつけるこの神事は、夏の楽しみのひとつでもあります。耐え難い京の暑さだからこそ、この冷たさがとても有難く、身も心も引き締まる思いがするのです。

■無病息災を願いつつ涼を味わう 初雪のような「鴨の氷室の氷」 

 下鴨の和菓子店「宝泉堂」が手掛ける下鴨神社境内、休憩処「さるや」では、夏限定のかき氷を味わうことが出来ます。古事にならい、暑い夏を平穏無事に過ごせるようにと「鴨の氷室の氷」と名付けられた氷は、まるで天からふわりふわりと舞い降りたばかりの初雪を集めたように、柔らかく儚い口溶け。添えられた抹茶の蜜をそっと氷にかけながら少しずつ口に運ぶと、抹茶の風味と自然な甘味が口いっぱいに広がります。森の樹々の囁きや、鳥の声を聴きながら味わう氷は、身体いっぱいに“涼”を感じることが出来るのです。氷の種類は、抹茶小豆、黒蜜白玉練乳がけ、イチゴ練乳がけの3種類。氷を味わった後は、下鴨神社の御神紋の植物「カモアオイ」(双葉葵、賀茂葵)が描かれた葵の器でいただくお茶で喉を潤します。

■愛でる涼菓 水に揺らめく金魚の姿  

 寺町通のひと筋東側、民家の中に静かに佇む「松彌(まつや)」は、1888(明治21)年「いろは餅本店」として創業され、戦後に現在の場所へ移転しました。京都の豊かな四季を映し出す創作和菓子で広く知られています。ご主人である國枝さんの創作の原点は日々のお散歩。鴨川を愛犬と散歩している時に感じた一瞬の風の動きや四季折々の花々など、暮らしのふとした出来事から和菓子の構想を編み出されているそうです。
 
 今から約40年ほど前、近くの下御霊神社のお祭りで見かけた金魚すくいからイメージが膨らみ、試行錯誤を重ねて出来上がったという「金魚」は、夏になると必ず愛でたくなる和菓子です。寒天で作られた淡いブルーと透明な水の中には、羊羹の水草と二匹の金魚(リュウキンとデメキン)が泳いでいます。その姿は、何とも愛らしく、食べてしまうのが惜しい程。十分に愛でた後、口に含むと、ほんのりとした梅の味が爽やかに感じられます。

■時を超えて次世代へ届けたい 目にも涼やかなレース模様のガラス花器 

 建築の仕事に関わったのち、ガラス造形の道へと進まれた作家・佐藤聡氏が、奥様の貴美子さんと共に祇園に開かれた吹きガラスのショップ「PONTE(ポンテ)」。初めてこのレースのシリーズを目にした時のドキドキとした瞬間は、今も忘れることなく記憶に刻まれています。

 ガラスの棒をねじりながら引き伸ばし、糸のような繊細なラインで波や格子柄を表現したレース棒を組み合わせて巧みに作り上げられる吹きガラスの花器は、まるでレース糸が螺旋状に編み込まれているかのようにも見え、あまりの美しさに吸い込まれるような感覚になります。作品は、様々な異分野からインスピレーションを受けており、時を経た陶器のような色合いと質感を感じさせるものもあります。柔軟な表現から生まれる作品は、永く残り、暮らしの中で愛され続けていくようにと願いを込めて作られています。

■縁を導き、結ぶ 下鴨神社で御朱印をいただく 御朱印帳と巾着

 今回のプティ・タ・プティのテキスタイル/title:ロワゾ「鳥」

 雄雌それぞれが目と翼を一つずつ持ち、二羽が常に一体となって飛ぶという白居易の一節による比翼の鳥をイメージし、下鴨神社境内の「連理の賢木(れんりのさかき)」を眺めている時に閃き、生み出したテキスタイルです。御朱印帳は、京都の寺社のお経本なども手掛けられている製本職人さんにより、一冊ずつ丁寧に仕立てられています。巾着は、大切な御朱印帳を納め、持ち歩く時にも重宝します。

■心の奥まで涼やかに 真夏の京都で大切な時間を

 涼やかなテーブルのしつらえに欠かせないガラス。和菓子「金魚」に似合う器を探し求め、骨董市を巡り歩いているうちに、水の揺らぎが感じられるような古いガラス皿に出合うことが出来ました。いただいた御朱印を眺めながら、心を落ち着かせる大切な時間。心の奥まですっと風通しが良くなるように感じるひと時を、真夏の京都で過ごしてみませんか?

(撮影/竹下さより、編集協力/江下祥子)

ナカムラユキ
京都市在住。イラストレーター、テキスタイルデザイナー。著書に『京都さくら探訪』(文藝春秋)『京都レトロ散歩』(PHP)他多数







【おすすめ記事】京都より人気なのは? 祇園祭が全国各地で行われている理由


    あなたにおすすめ

    前日のランキングへ

    ニュース設定