YouTubeがContent IDをアップデート 著作権侵害の申し立てと対処がスピーディーに?

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2019年07月18日 07:01  リアルサウンド

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 YouTubeは7月9日、著作権侵害の申し立てとクリエイターの対応を“円滑で効率的なもの”にする新機能の実装を発表した(参考:YouTube「More information and better tools to resolve manual Content ID claims」)。これにより、一部であった著作権所有者とクリエイターの不満を緩和することが期待できる。


(参考:YouTubeが誤ってセキュリティ教育チャンネルを凍結 問われる不正動画自動検出の精度


・侵害部分を簡単・スピーディーに編集
 これまでも、サウンドトラックが有名な曲だったり、映画のクリップを使ったりという著作権侵害が明白な場合は、自動に検知される機能はあったが、コンテンツ一致アルゴリズムにより自動的に検知されるものとは別に、Content IDの「マニュアル申し立て」を行う場合、著作権所有者は侵害箇所にタイムスタンプを提供することが必須となる。これにより、何が問題か分からずに、自ら映像を削除するといった事例を減らすという。


 今後、この新たな著作権管理ツールにより、タイムスタンプされた部分は、オーディオをミュートにする「Mute Song」と、無料の音楽と差し替える「Replace Song」で対処可能だ。トリム機能では、コンテンツの申し立てられた部分をワンクリックで切り取ることができるようになる。


 YouTubeはブログで、「タイムスタンプの正確さを評価します。著作権所有者が、繰り返し、不正確なデータ提供した場合、申し立てへのアクセスが取り消されます」としている。


 この機能に対し、Variety.comは「YouTube著作権システムの更新で、クリエーターが申し立てを管理し易くなる」と報じた。


・著作権所有者とクリエイターのバランスを
 YouTubeのCEOであるSusan Wojcicki氏は、著作権所有者と製作者の間で適切なバランスをとるために、「マニュアル申し立て」への対処を簡単にできるようにする改善策を模索すると以前明らかにしており、彼女は今回のアップデートにあたって「これは重要な一歩です。マニュアル申し立ての情報のより詳しい情報と、それを解決するためのツールを製作者に提供していきます」とツイートした。


 今まで問題になっていたケースは、例えばYouTuberがあるお店で撮影中、たまたま店内で流れていた音楽をマイクが拾ってしまい、その音がわずかに収録されただけで、著作権侵害の申し立てを受ける。これに対し、法律を細部まで理解していないユーザーからも苦情が出る、といったものだ。


 その際、著作権侵害しているYouTubeビデオは、公開停止や広告による収益化の無効といった末路を辿るうえ、度重なる違反がある場合は、YouTubeアカウントそのものが凍結されてしまう場合もある。


・効率化は社会的な不利益を生むか?
 法律が遵守され、対策も簡素化・効率化が図られた今回のYouTubeの更新は、朗報といっていいものだろう。一方、The Vergeは「YouTubeは、著作権侵害の申し立てを受けると、法律により著作権所有者を保護するが、音楽や映画の断片を参考資料として教育用コンテンツにいれることも、困難になる可能性がある」と指摘している。


 法律遵守や生産性を高めることに集中し過ぎた結果、有用だった教材としての使い道が閉ざされ、社会にとってマイナスになるというのは興味深い視点だが、プラットフォーム側としては耳の痛い話である。まずは今回のアップデートを受け、権利者側・制作者側からどのような声が挙がるのか、注意深く見守りたいところだ。


(Nagata Tombo)


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