「夫が寝たきりになる前に離婚したい」暴言夫に罵倒された妻が手にした大金と自由

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2019年07月18日 08:00  週刊女性PRIME

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※写真はイメージです

「夫婦なら助け合うのは当然」という風潮はいまだ根強い。だが、「妻は夫の身の回りの世話、病院の付き添い、病気の看病をするのが当たり前」と考える男性は危険である。なぜなら、“夫婦だから”という理由だけで夫の介護を押しつけられるならば、「夫婦をやめたい」と離婚に踏み切る妻が実在するからだ。

シモの世話に疲弊する妻

「夫が寝たきりになる前に別れたいんです」

 そう訴えるのは白洲美代子さん(58=仮名)。仕事中に倒れた夫(59)は一命を取りとめたものの、多発性脳梗塞の後遺症により両手足にまひが残った。車イスでの移動、食事や身の回りのことは介助が必要で「要介護3」と認定された。

 倒れても元来わがままな夫の性格は変わらず、リハビリの放棄、ケアマネージャーへの暴言、パチンコ通いなどの問題行動を繰り返した。美代子さんがいちばん腹に据えかねたのがシモの世話だ。

 朝、風呂に入れようとすれば「風呂なんて入らなくても死なねぇよ!」と駄々をこねる。夫を説得し、入浴を促すまでに毎日、小1時間を要した。しかも、夫は毎晩のように粗相し、その異臭で入浴の介助にはかなりの苦痛をともなった。

 美代子さんは紙オムツを用意したが、夫は「馬鹿にするんじゃねえ!」と激怒するばかりで、それを使うことはなかった。結局、美代子さんは夫の尿が染みついた布団を背負い、週1〜2回は大型コインランドリーに通うはめになった。

「もう、あなたの世話は限界。離婚してください」

 美代子さんはある日、ついに堪忍袋の緒を切らせた。だが、夫のほうも、

「夫婦はお互いに助け合う義務があるのにどういうことだ! 面倒みないなら夫婦である必要があるのか?」

 と、応酬。そのうえ、

「(手足のまひで)セックスできないのだから、おまえと結婚していたって意味がないだろう!」

 などと連呼し最終的には、

「紙切れ1枚で俺を縛りつけるな」

 と、捨てゼリフを吐いた。美代子さんは、それから半年をかけて離婚届を提出した。

老後資金と終の棲家を得るも……

 まず夫自身を、夫の両親に預けた。両親は当初“後遺症が回復するまで一時的に預かるだけ”と軽くみて、あっさり快諾。夫がリハビリをサボることで社会復帰できる見通しが立たない、という事実は隠し通した。

 美代子さん夫婦には28歳の娘がおり、すでに結婚して家庭を持っている。離婚後、美代子さんが娘に迷惑をかけずに自立して暮らしていくには、どのようにお金を工面すればいいだろうか?

 まず夫婦の持ち家は築20年で住宅ローンの残りは1000万円。住宅ローンを組む場合、団体信用生命保険(途中で債務者が亡くなった場合、住宅ローン残額と同額の保険金が支給され、優先的に住宅ローンに充当される保険)の加入は必須だが、今回の場合、三大疾病保障特約を付与していた。

 これは死亡だけでなく三大疾病を発症した場合も保障されるため、美代子さんは住宅ローンがなくなった持ち家に、無償で住み続けることができた。

 また、夫は高度障害保険に加入していた。これはがん、脳梗塞、心筋梗塞などの三大疾病を発症した場合に支給されるもので、今回の場合は一時金で1200万円が支払われる。病気の後遺症で本人(契約者)が保険請求の手続きを行うことが難しい場合は「指定請求代理人」が代わりに行うことが可能だったので、美代子さんが申請。美代子さんが管理する夫名義の口座へ保険金を入金させて、自分の口座へ移し替えたという。

 また夫は後遺症により65歳の定年を待たずに退職することになったが、その退職金(800万円)の支給手続きのため自力で会社へ行くのも難しく、美代子さんに任せるしかなかった。これも同じ方法で1度は退職金を夫の口座に振り込ませ、そこから自分の口座へ移し替えた。

 今回の場合、夫は59歳と若く、このまま結婚生活を続けた場合、20〜30年もの長きにわたる介護を強いられる。そのため、今回の美代子さんの決断は責められないだろう。

 2000万円の老後資金と、持ち家という終の棲家を手に入れることができた美代子さん。だが介護の苦労と罵倒の日々を振り返ると、「あのとき、いっそのこと死んでくれたほうがよかったのに……」という思いがあふれてしまうという。

執筆/露木幸彦 離婚サポーター、行政書士、ファイナンシャルプランナー。1980年生まれ。離婚に特化した行政書士事務所を開業。著書に『イマドキの不倫事情と離婚』『男の離婚ケイカク クソ嫁からは逃げたもん勝ち なる早で!!!!!』など多数

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  • 綺麗事で長年連れ添った相手を捨てるのは自分の過去を否定するのでは、なんて呟きがあるけど、過去の美化に拘り未来を捨てる方が自分の人生の否定になると思う。
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