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メディア企業が陥りやすい「データ活用」の罠

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2019年07月18日 09:02  MarkeZine

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MarkeZine

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 デジタルシフトの波は、テレビ・新聞・雑誌などのメディア企業にも大きな影響を及ぼしています。アンケートなどの集約されたデータだけでなく、ユーザー単位の行動をデータで捉えられるようになった今、メディア企業はいかにデータを活用し、新たなビジネスを展開していけばいいのでしょうか。本連載では、メディア企業の抱える課題や、それらを乗り越えていく実例を通じて、企業がデータと向き合っていくための道筋を示していきます。


■メディア企業における「データ」活用の変化


 従来のメディア企業の「データ活用」といえば、「一部のユーザーの顕在化したニーズ」を判断基準にしているケースが大多数でした。たとえば雑誌の読者に向けて「どの特集が一番よかったですか?」といったアンケートをとって次のコンテンツ企画の参考にしたり、テレビの企画では「視聴率」が大きな影響を占めていたりしたことが挙げられます。


 しかし、今やスマートフォンの普及や一人当たりが消費する情報量の増加によって、ユーザーの価値観やニーズ、可処分時間は多様化・細分化し続けています。また、ユーザーの行動だけではなく、それにともなうメディアの役割も変化し続けています。コンテンツの配信だけではなく、ニュースを取り扱うポータル化やリッチな広告コンテンツを配信するプラットフォームとして、ユーザーとの対話を取り込んでいく仕組みを取り入れるなど、その変化は様々です。


 ユーザーとの関係が複雑になっていく中で、アンケートや視聴率のような「一部のユーザーの顕在化したニーズ」だけではなく、一人ひとりのユーザーの属性や趣味趣向、メディア接触時の瞬間的なニーズ、いわばモーメントを捉え、「多様化するユーザーの潜在的なニーズ」ごとに、One to Oneでコンテンツサービスを配信する動きが出てきています。


 このような背景から、昨今メディア業界でも、「データ活用」「テクノロジー利用」「デジタルトランスフォーメーション」などの言葉が一般的になり、よりデータに対する意識が高まっています。


■メディア企業が陥りやすい「データ活用」の罠


 メディア企業にとってもデータ活用は喫緊の課題となっていますが、そこには大きく2つの罠が待ち受けています。


 一つめは「データ整形の罠」です。テクノロジーの進化により、リアルタイムでユーザーの行動データを集計・活用することが以前と比べて低コストで実現できるようになりました。だからこそ「どんな切り口で推測すればいいのか?」「それぞれのデータはどうやって統合していくのか?」など、データの活用法や最終的なアウトプットを意識せずに構築を始めてしまい、気づいてみると、集計が難しい項目の一覧や、目的を達成できないデータ・セットが出来上がってしまうケースが増えています。


 二つめは「ロイヤリティユーザーの罠」。One to Oneでのコンテンツサービス配信を可能にするプラットフォームを運用していく上で、重要指標として「ロイヤリティユーザー」がよくあげられます。メディアを盛り上げる一つの施策として「ロイヤリティユーザーを増やしたい」「ロイヤリティユーザーにたくさんきてもらいたい」というケースは多いでしょう。


 しかし、現実は「毎日訪問してくれるユーザー」「タイアップ広告を見てくれているユーザー」「コアな記事を読んでくれるユーザー」など多様なロイヤリティユーザーが存在しています。そのため、データとして一つだけの指標を評価し続けるのは難しく、プロジェクトの途中で目的の形骸化が起こってしまいがちです。一つのユーザー像に正解を求めるのではなく、満たすべきビジネス上のゴールから逆算して施策を設計していくことが重要です。


■ユーザーのモーメントを捉える複数のKPIを設定する


 前述の2つの課題の解決策は、「KGIから一つのKPIに落とし込む」のではなく、「ユーザーの瞬間のニーズ(モーメント)を複数のKPIに置き換えること」です。多数のKPIが存在することを前提に、どのように分析し、可視化し、アクションしていくのかが重要になります。


 具体的には「ロイヤリティユーザーを定義すること」をゴールにするのではなく、「より長く訪問してくれそうなユーザー」といったビジネス上重要なKPIを複数定義し、集合体としてKGIになるような状態を設計することです。


 単一のKPIでユーザーの声を単純なグラフ化して判断するのではなく、複数のKPIでのデータでの分析・可視化のためにデータを活用することで、これまで捉えきれなかったユーザーに対して「One to Oneアクション」を実行することができます。これは、今後さらに多様化するメディアとユーザーとの関係性を密にしていくために必要不可欠な取り組みです。


■“アクションにつながらないデータ”から価値は生まれない


 前述のとおりKPIを細分化し、複合的に見ていくことで、ユーザーの瞬間的なニーズ(モーメント)ごとに適切なアプローチが可能になります。たとえば、記事広告やSNSの活用、好きなジャンルに応じたメールマガジンの配信など、パーソナライズしたコンテンツをそれぞれ一人ひとりに届けることが可能になります。


 そのためには、それぞれのKPIに適切な粒度を設定することがカギとなります。そして、適切な粒度を設定するには、必要なデータをリアルタイムで収集し、アクションをとりやすくする環境の構築へとつなげていくことが必要になります。


 必要なKPIを定義していくためには、一度ビジネスモデルからKGIを洗い出し、それらを構成するKPIを「誰がどのようにアクションしていくか」の側面から議論を深めるのが効果的です。理想的すぎるKPIを作ってしまい運用が袋小路にはまってしまうよりは、組織や運用の状況に見合うように、あらかじめ「誰が」「いつ」「どのように」アクションを取っていくのかが明確になるようなサイズ感で設計するとよいでしょう。


 はじめのうちは取得できるデータをすべて活用しようと前のめりになりがちですが、アクションにつながらないデータを見ていても価値は生まれません。KPIの設定を組織とビジネスに合わせて行いながら、細かくアクションできる手段を増やしていくことで、最終的にはメディアとしての価値や信念を持った上で様々な角度からユーザーにアプローチできるプラットフォームを作ることが可能になるのです。 


■“メディア企業としての信念”と“マネタイズ”を両立させるには


 今後、メディア企業がデータを活用していく上での大きな課題は、コンテンツ発信者としての信念・価値観を維持しながら、同時に広告マネタイズなどのビジネスモデルとユーザーをいかにつなげていくか、ということになっていくでしょう。


 データを利用してユーザーとコンテンツをOne to Oneでマッチングしていくことは、ある意味機械的な仕組みとして捉えられることも多いと思います。広告コンテンツへの誘導など利益を追求しすぎれば、コンテンツ発信者としての信頼性に影響が出てくる懸念もあります。


 特定の分野へのユーザー評価の偏りを回避していくためには、繰り返しですが複数の切り口(KPI)で評価していくことが大事です。それと同時に、その瞬間の絶対的な評価ではなく、時系列に並べた時の「変化」を見ていくことで、継続的なトレンドや未来予測を行っていく仕組みに切り替えていくことが重要になります。


 たとえば、株式の運用をイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。市場環境やユーザーの行動は時として急激に変化しますので、その変化を捉え、瞬発力をもってアクションを取り続けるサイクルを構築することで、スピード感をもって意思決定を行うことが可能になります。さらには、その意思決定の精度や速度が、メディア企業にとっての生命線となってきます。


 次回は、KPIの設計とアクションを重ねることで見えてくるリアルなユーザーの姿を追いかけながら、メディアとしての価値・役割を見つめ直していったメディア企業の実例をご紹介していきます。

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