レクサスに乗って幻のレストランへ……青森で「DINING OUT」を体験

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2019年07月18日 11:32  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
●レクサス「RX」であの山へ!
日本のどこかで年に数日だけオープンする“幻の野外レストラン”を訪ねる旅「DINING OUT」。このイベントにレクサスが協力していると聞いたので、参加して取材してきた。旅の舞台は新緑の季節を迎えた青森県。最初に向かったのは、あの山だった。

「DINING OUT」というのは、いってみれば「1泊2食付き」の旅行商品だ。JTBで申し込めば、レクサスオーナーであるかどうかを問わず、誰でも参加できる。主催するのはONESTORYという会社。これまでに大分県、佐賀県、広島県、北海道などの日本各地でDINING OUTを開催してきたが、東北は今回が初めてだ。「ミステリーツアー」形式なので、参加者は具体的な行く先を知らないまま、1日のプログラムを楽しむ。

レクサスは、同イベントの2回目からオフィシャルパートナーという形で参加している。参加者の送迎はレクサス車であり、希望すれば試乗もできる。

DINING OUTの概要は以上の通りだが、実際のところ、どんな体験ができるのか。今回、青森県で一般の参加者と一緒に体験してきたので、その模様をお伝えしたい。

○レクサス「RX」に試乗! 向かったのは…

7月6日の昼前。青森空港に降り立つと、スタッフの出迎えを受けた。これから、DINING OUTに付随するレクサスの試乗体験「LEXUS ドライビングプログラム」が始まるのだ。乗り込んだのは「RX 450 hL」というSUV。操作説明を受け、勧められるがままに「田代平湿原」を目指すドライブルートをナビゲーションにセットした。

ルート設定には、「レクサス オーナーズデスク」というサービスを使用する。これはオペレーターと電話で話すように対話できるシステムだ。言葉で行く先を伝えると、向こうでナビを操作し、ルートを設定してくれた。

「青森でタシロ……?」。その地名に聞き覚えはあったものの、「田代平湿原」については不勉強でもあり、土地勘もなかったので、青森県のどのあたりなのかがよく分からなかった。なので、とりあえず、ナビ通りにクルマを走らせていると、車窓から見える景色は段々と、濃い新緑の緑に移ろってきた。地名を記した看板などに目をやりながら進んでいくうちに、ようやく気がついた。……八甲田山に向かっていたのだ。

映画『八甲田山』では、神田大尉(演じたのは北大路欣也さん)が第五連隊の雪中行軍隊を率いて青森を出立し、八甲田山を抜け三本木の方へ出ようとするも、「田代温泉」まで残り2キロの地点で吹雪に遭い、ルートを見失って立ち往生してしまう。青森を発って八甲田山へ……。偶然ではあるが、レクサスに乗った私は同じ道、とまではいかなくとも、同じ方向に進んでいたのである。雪中行軍で有名なこの山に差し掛かった時の気持ちは、何か怖いような、(不謹慎かもしれないが)映画の舞台を訪れることができて嬉しいような、複雑なものだった。

映画では地元の古老が、冬の八甲田山を「白い地獄」と言い表していた。それでは現代の、そして初夏の八甲田山はどんな場所だったのかというと、「素敵なドライブコースだった」の一言に尽きる。

試乗した「RX 450 hL」は、全長5,000mm、全幅1,895mm、全高1,725mmとかなり大柄なクルマではあったものの、細くなったり曲がりくねったりする八甲田の山道を力強く、難なく駆け抜けた。山の天気というのか、走行中は日が差したり、濃い靄がかかったりもしたが、刻々と表情を変える八甲田山の魅力は、かえって十分に堪能できたのではないかと思う。

八甲田山でのドライブを終え、集合場所となっていた温泉宿「南部屋・海扇閣」へ向かう。そこからは、先ほどのレクサスをドライバーに運転してもらい、レセプション会場に移動した。ドライバーは普段、地元の「青森タクシー」に勤めている運転手の方なので、道中で聞ける話は興味深く、移動時間も全く退屈しなかった。

●陸奥護国寺の石段を上るとディナー会場が!
取材目的で参加した報道陣は行く先を知っていたが、一般客はレセプション会場に到着した時、驚いたに違いない。その会場というのは、青森県立美術館だったのだ。リンゴの発泡酒「シードル」で乾杯したあとは、学芸員のガイド付きで美術館の中へ。棟方志功の仕事の数々、寺山修司の劇団「天井桟敷」に横尾忠則が描いたポスター、『ウルトラマン』に登場する宇宙人・怪獣を手掛けた成田亨のデザイン画など、青森県に深い縁のある作家たちの作品を、少し早足ではあったが堪能できた。もちろん、奈良美智の『あおもり犬』にも会えた。

青森県立美術館の中でも白眉といえるのが、マルク・シャガールがバレエ『アレコ』のために製作した4点の背景画だ。この日、アレコの連作が飾られた部屋では、照明とナレーションによる演出を体験。アレコの物語が進むのに合わせて、当該場面を照らす光のおかげで、この背景画に描かれているものの意味を知ることができた。

いよいよ、DINING OUTのメインイベントであるディナーの時間が近づいてきた。レクサスに乗り込んで向かったのは、青森市浅虫にある陸奥護国寺。聞けば、アジサイで有名なお寺だそうだ。88段の石段を上ると、砂で整地された境内(?)にはずらりとテーブルが並んでいる。陸奥湾と湯の島を一望できる野外レストランは、たそがれ時の薄暗がりに包まれて神秘的だ。

ディナーを担当したのは、恵比寿にあるフレンチレストラン「Abysse」(アビス、東京都渋谷区)の目黒浩太郎シェフ。魚介に特化したフランス料理を得意とし、ミシュラン東京では一つ星を獲得している実力者だ。青森県に来たのは今回が初めてだったそうだが、陸奥湾の豊富な魚介を使った独創的な皿を次々に提供してくれた。

デザートを含めると16品に及んだ圧巻のディナーでもあったし、筆者の舌では凝った料理の描写など及ぶべくもないので、どんな料理だったかは写真で確認していただくしかないのだが、ほとんどの料理が食べたこともないような、とてもおいしいものだったということだけは、ここでお伝えしておきたい。

例えば「もずく」ひとつを取ってみても、普段、黒酢で食べているものとは、何から何まで違っていた。まず、もずくそのものが、陸奥湾でこの時期にしか取れないという特別な素材であった上、味付けは「濃厚な昆布だし」ときて、そこに「多肉植物」「自家製ディルオイル」「ライムジュース」などが組み合わさっていたのだ。もちろん、これもおいしかった。

食事中にも贅沢かつ驚きの演出があった。まず、会場には棟方志功の書「華厳」が登場。書を屋外に展示するなど聞いたこともないが、この日のための特別な演出なのだろう。宴もたけなわというころには、湯の島から花火が打ち上がる。それも、2〜3発ではないのだ。事ここに至っては、そのラグジュアリー感にただただ脱帽するしかない。

「1年のうちの数日だけ現れて、訪れた人たちの思い出の中だけに残る幻のレストラン」。今回の旅のホストを務めた東洋文化研究家のアレックス・カーさんは、ディナーの終わりに挨拶に立ち、DINING OUTをこう表現した。言い得て妙だ。

一般客はディナーの後、それぞれが選んだ宿へとレクサスで帰ることになる。今回のDINING OUTでは、前出の「南部屋・海扇閣」のほか、「椿館」と「辰巳館」という宿が用意された。これで、7月6日のプログラムは全て終了した。

「DINING OUT AOMORI-ASAMUSHI with LEXUS」には、2日にわたる日程で各40名、計80名の一般客が参加した。料金は1泊2食付きで14万円台〜16万円台。高価だとは思う。ただ、これだけのプログラムを仕込み、当日に滞りなく実行するための費用を想像すると、余計なお世話だが、主催者側にどのくらいの儲けが残るのか、少し心配になる。オフィシャルパートナーのレクサスなどは、ほとんど手弁当に近い状況で参加しているのではないだろうか。

なぜ、レクサスはDINING OUTに協力しているのか。Lexus International グローバルブランディング グループ長の岡澤陽子さんに、ディナー会場で話を聞いてみた。

●なぜレクサスは「DINING OUT」に協力するのか
収益にもならなそうだし、80名くらいの参加者を乗せただけでは、レクサス車の宣伝効果も限定的にならざるを得ないのに、なぜ、レクサスはDINING OUTに関わるのか。質問の意図をはっきりさせたかったので、少し失礼なような気もしたが、上記の通り岡澤さんに聞いてみた。その答えはこうだ。

「DINING OUTは、すごく贅沢で特別な時間を提供していると思います。このためだけに、100名を超える人が関わっていて、その土地の場所、食材、人などは全て、この瞬間のためだけのものです。非日常、その時にしか味わえない唯一無二の時間を作るということに、私たちは共感しています。レクサスはブランドとして、お客さまにそういう時間を提供していきたいと考えています」

レクサスは自動車ブランドでありながら、クルマを作るだけでなく、顧客にライフスタイルをも提示するような存在になろうとしている。それでは、レクサスが提示しようとしているライフスタイルとは、一体どんなものなのか。DINING OUTに参加して味わった贅沢さ、驚き、特別感などに、そのヒントがあるのだろう。

「それと、旅における移動というのは、絶対に大事なパートだとも思っています」。岡澤さんは続ける。

「その時間も楽しんでいただきたいというのがレクサスの考えで、その演出を手伝えたらと思っています。そこで(移動そのものも楽しみだということを)発信していって、少しでも多くの方に知っていただいて、その特別な時間に触れたいと思ってもらえれば、ブランドとして伝えたいことが、伝わるのではと考えました」

この言葉、裏を返せば、現代は「移動は楽しい」という価値観が伝わりにくい時代になっているという、危機感の表れなのではないだろうか。移動時間は短い方がいいし、移動に掛かるコストは少ない方がいいし、移動の間はできるだけ長く眠っていられた方がいい。もし、こう考える人ばかりになってしまったとしたら、ラグジュアリーブランドのクルマなど売れるわけはない。岡澤さんの考えはどうか。

「それは、あるかもしれません。クルマそのものだけで魅力を伝えることには、難しい部分があります。クルマでの移動は、旅の一部、生活の一部、何かの一部になることで、より特別なものに変わります。そういう瞬間の中にあってこそ、魅力をより発揮できる。そういう意味でも、DINING OUTの中にレクサスがあると、より魅力が伝わるのかなと」

いいクルマを作るだけでは、もはや十分ではない時代に差し掛かっているとすれば、自動車メーカーは、クルマにどんな付加価値を付けられるかという領域で知恵をしぼらざるを得なくなる。その付加価値とは当然、速いだとか安いだとかいったことではないはずだ。クルマのある暮らし、いわばライフスタイルを、自動車メーカーが自ら描いてみせるのも、そんな時代背景によるのかもしれない。たったの80名だったとしても、今回のDINING OUTに参加した人たちに対し、レクサスが濃密な「クルマ体験」を届けられたのは間違いないはずだ。

贅沢な旅と食事で非日常を味わいたい人にも、レクサスがどんな世界観を提示しようとしているのかを知りたい人にも貴重な機会となるDINING OUT。主催するONESTORYの大類社長によれば、次回の概要は8月にも発表するそうだ。これまでは毎回、予約が完売となっているそうなので、参加したいという方にはONESTORYの発表を注意深く待つことをオススメしたい。(藤田真吾)
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