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「しょぼい喫茶店」のSNS起業術 「100万円ください」成功の秘密

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2019年07月19日 11:30  AERA dot.

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写真SNS活用で幸運をつかんだ店主の池田達也さん (撮影/写真部・掛 祥葉子)
SNS活用で幸運をつかんだ店主の池田達也さん (撮影/写真部・掛 祥葉子)
 就活に失敗した若者が開いた「しょぼい喫茶店」。“しょぼい人たち”のための居場所をつくりたいというけなげな志と絶妙のネーミングがウケているが、起業の背景にはこれまた絶妙のSNS活用術があった。「理屈にあっていてシニアでも学べることが多い」とする専門家もいる。

【「しょぼい喫茶店」の店内の写真はこちら】

*  *  *
 東京・高田馬場から電車で約10分。西武新宿線「新井薬師前駅」から徒歩5分の雑居ビル2階に、その喫茶店はある。店名はずばり「しょぼい喫茶店」。カウンター7席に机のないソファ席があるだけの本当に小さな店だ。店主の池田達也さん(25)が言う。

「最初は店のコンセプトを伝えるために『しょぼい喫茶店』を使っていましたが、知られるにつれて定着してしまって……。それならと、店名もこれにしたんです」

 就活に失敗してから喫茶店づくりを決意し軌道に乗せるまでを、この春、『しょぼい喫茶店の本』(百万年書房)にまとめた。

「別にネットやスマホが得意だったわけではありません。人並みです」

 と言うが、本の前半はSNSのツイッターを使って次々に幸運を呼び込み短期間に喫茶店をオープンさせる、ある種、爽快な「起業物語」だ。

 池田さんは上智大卒。大学ではアルバイトも部活もカナダへの留学もうまくいかず、話す中身のない学生生活を送ってしまう。このため2017年春の就活では落とされ続けた。

 自己嫌悪に陥り死ぬことさえ考えたが、ツイッターを通じて人生の師匠とでも言うべき人を複数知る。とりわけ少額での「しょぼい起業」を提案、実践していた「えらいてんちょう」さん(以下、えらてんさん)に大きな刺激を受けた。そして「自営ならできるかも」と喫茶店経営を考え始める。

「以来、えらてんさんのツイッターやブログはひたすらフォローしました。就職できなくてもやりようがあることを示してくれていましたから」(池田さん)

 17年秋からは開業資金をためるため、新宿の喫茶店でアルバイトを始めた。えらてんさんのツイートを通じて若き実業家「カイリュー木村」さんも知った。

 18年1月、100万円がたまる見通しがついたため、いよいよネットでのPRを開始した。ツイッターとブログを同時に始めたのだ。ブログは毎日更新、ツイッターは毎日数回書き込むことを自らに課した。

「ツイッターでは、どんな店にしたいかや店でやりたいことを思いつくまま羅列し、それをまとめてブログにしていく感じでした。ブログを読めば僕がなぜ喫茶店をやりたいのかがわかるように書きました」(同)

 ある程度投稿を続けたころ、池田さんはツイッター上でえらてんさんに認識してもらうことに成功する。えらてんさんは池田さんのブログを読み、興味を持った。

「文章には人柄が出ます。地に足がついていて実直な青年なんだろうと思いましたね」(えらてんさん)

 そして、奇跡が起きる。ある日、カイリュー木村さんが仮想通貨でもうけたことをツイートしたところ、それを意識して池田さんが「仮想通貨でもうけた人、喫茶店をやるので100万円ください」とツイート。えらてんさんがすぐ「出してあげてください」と推薦したら、カイリュー木村さんは「いいっすよー」。何と出資話がネット上で決まってしまったのだ。

「えらてんさんのメソッドはドロップアウトした若者の再起に向いているんです。100万円なら失敗しても大きな傷になりません。ネットでこういうことが起こるのも面白いかなと思って、即応援しようと思いました」(カイリュー木村さん)

 ネット上でこの話はどんどん拡散された。感動した鹿児島の女性(「おりん」さん。後に池田さんと結婚)が「喫茶店で働きたい」と上京するなど、いろいろな人を巻き込みながら盛り上がっていった。

 池田さんはその後も、物件探しなどの様子を「実況中継」のようにツイートし続け、あれよあれよと言う間に3月に店をオープンさせてしまう。1月にネットでの活動を始めてから、わずか2カ月後のことだった。

「ラッキー男」に見えるかもしれないが、池田さんには戦略があった。

 一つはツイッターとブログを連動させたことだ。<自分が何をしたくて、これまでどんなことをしてきたのか、その経緯をわかりやすく提示する必要があると思った>と本にはつづられている。ツイッターで興味をもった人がブログに飛べば、ストーリーが浮かび上がる仕掛けだ。

「使ったツールもよかったと思います。ツイッターもブログも『文字』での表現。僕は元々しゃべるより書くことのほうが得意で、文章を書くのは苦になりません。『文章がうまいのがウケた原因では』とよく言われます」(池田さん)

 そして、えらてんさんに認識してもらえたのは、決して偶然ではなかった。周到に準備した結果だった。池田さんがえらてんさんをフォローし続けたことを思い出してほしい。

「半年ぐらいずっと見ていたので、どんな人が好き・嫌いで、どんなふうに物事を考えるのかがわかるようになっていました。よくエゴサーチ(自分で自分のことを検索)することもわかっていたので、えらてんさんが必ず反応するようなツイートをしたんです。結果は思った通りでした」(同)

 もちろん100万円は偶然以外の何物でもない。

「ひょっとしたらと思いましたが、それよりえらてんさんに知ってもらえたことが安心につながりました。いろいろ教えてもらえると思っていましたから」(同)

 こうした狙いについて、30年以上、起業の世界を見てきた起業アドバイザーの松延健児さんは、「運を呼び込む法則にかなっている」と言う。

「ビジネスに対する姿勢が謙虚なのがいい。人を巻き込むには『感動・共感・行動』がキーワードですが、『しょぼい』というテーマそのものがぴったり当てはまっています。えらてんさんはじめ、必死で頑張っている人を見ていると応援したくなるんでしょうね」

 松延さんはフェイスブックなどSNSにも詳しい。

「その面では毎日コツコツ進める地道な姿勢がいいですね。ブログなどを毎日更新する人なんてほとんどいません。発信すればフォロワーとの接触が増え、信頼関係ができていきます。短期に店を開いてしまう様子は、物々交換で次々にいいものを手に入れていく『わらしべ長者』を見ているようです」

 シニア起業家には、この両方の姿勢が参考になると、松延さんは指摘する。

「起業に成功体験は必要ありません。何もないところから始めた若者の謙虚な姿勢を見習ってほしい。シニア起業家には始めたからには成功しなきゃという『一発志向』が多いが、それこそが失敗の原因になってしまいます。地道な姿勢を重視してほしいですね」

 ところで、本の前半は起業成功物語だが、後半は一転、オープン時の好調さに慢心した池田さんが店をサボって傾かせ、それを立て直す「再生物語」になる。

 その過程で気づくのは、「決まった時間に店を開ける」ことなど、リアルの世界で重視される「商売の原則」の大切さだった。

 松延さんがしみじみ言う。

「この若さでネットとリアルの両立を学んでしまった。人生100年を考えると、将来が楽しみですね」

(本誌・首藤由之)

※週刊朝日  2019年7月26日号

このニュースに関するつぶやき

  • エモい店長さんだ!私、YouTubeでえらてんさんバリバリ見てますし、この池田さんの回のしょぼいマネーの虎も見てました。本も読んだよ。息子がアレなもんで(泣)クマも起業せんかなぁ。
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