泰樹の「抹殺!」パンチ炸裂 『なつぞら』なつと夕見子の盤石な信頼関係

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2019年07月19日 12:32  リアルサウンド

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『なつぞら』画像提供=NHK

 夕見子(福地桃子)がなつ(広瀬すず)の裏切りを知り、姉妹ゲンカの戦端が切られるかと思われた前回。NHK朝の連続テレビ小説『なつぞら』第95話では、夕見子問題に終止符が打たれた。


参考:『なつぞら』第96話では、麻子(貫地谷しほり)が東洋動画のみんなにある思いを打ち明ける


 激昂した様子で風車へやってきた夕見子と高山(須藤蓮)。どうやら富士子(松嶋菜々子)たちが高山の家族に連絡をしたことで発覚したようだ。呆れ果て東京を離れると明かす夕見子に対しなつは、「好きならなして逃げるの?」と食ってかかる。そんななか高山は、「やめるべ。もう」と衝撃の告白をする。


 ひとまず朝ごはんを食べながら話を続けることになったなつたち。高山は、ジャズ雑誌に原稿を持ち込んでもうまくいかなかったことで、夢から醒めたようだ。「ジャズなんで ただの遊びですよ」「無理なんだわ。俺が家を継がないなんて、できっこないんだ」「お前だって、本当は俺がマル高デパートの跡取りだから、好きになったんだべ」と心をさらけ出してくさまは夢破れた若者の絶望がにじみ出ていた。結局のところ、彼も時代を先取る価値観を持ちつつも、旧時代的な結婚観の呪縛からは解放されていなかったのだ。


 夕見子と高山の喧嘩を聞きながら、なつは涙を流す。


「9歳の時に突然見ず知らずの私がやって来て、夕見が一番、親に甘えたかった時に私がいたから、夕見は誰にも甘えられずに……」


「夕見はただの一度も嘘をつかなかった。それに私がどんだけ救われたか。今まで生きてきて、夕見のような素直な子に私は会ったことがない。こんなすてきな人、見たことない。あんたは夕見のこと知らなさすぎる! あんたに夕見はやらない! 絶対に渡さない! あんたと夕見の結婚を私は絶対に認めない!」


 なつと夕見子の関係は不思議だ。9歳という他者を思いやる心が成熟していない状況で、一緒に住むことになった2人。幼少期はなつへの嫉妬が見て取れた夕見子だが、この2人は全力で喧嘩しても、最後には打ち解けられる、本物の姉妹のような関係性が構築されている。お互いに対する信頼が盤石なものとなっていることが見て取れるなつの独白、いや愛の告白であった。


 そして風車に現れた泰樹(草刈正雄)。「抹殺!」と高山に鉄拳制裁を加えるシーンは、『なつぞら』屈指のスカッとポイントになったのではないだろうか。その後「東京の…パフェというのを食べたくなったんだ…」と誤魔化す姿も茶目っ気たっぷりで、そのギャップがなんとも愛おしい。


 「用事は済んだ。牛より人が多い所は、何か落ち着かん」と夕見子と共に北海道に帰っていく泰樹の後ろ姿になつは何かを感じ取る。前話で坂場(中川大志)から指摘された木の怪物の描き方のヒントを得るのだ。アニメーターは日々の暮らしの感性をもアニメーションに反映させる。何がどう動けば観客が喜ぶのかと常に考え、キャラクターを動かすことに心を囚われている。『なつぞら』は、そうしてアニメーションに全力を捧ぐものたちへの賛美を描くのだ。


(文=安田周平)


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  • 後ろ姿の場面が意味深だったので「え?死んじゃうの?」と思ったが、アニメの動きのヒントになっただけだったので安心した。
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