「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『マーウェン』

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2019年07月19日 20:31  リアルサウンド

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『マーウェン』(c)2018 UNIVERSAL STUDIOS

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、カメラを買おうか悩んではや3年の安田が『マーウェン』をプッシュします。


参考:『マーウェン』ロバート・ゼメキスのキャリア集大成作にみる、“架空の世界”に救われる人々の心理


■『マーウェン』
 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『フォレスト・ガンプ 一期一会』『フライト』など数々のエンターテインメント大作を撮り続けてきたロバート・ゼメキス監督が今回題材に選んだのは、ヘイトクライムの後遺症に苦しむ実在の写真家マーク・ホーガンキャンプです。


 5人の男に暴行されたマークは、瀕死の重傷を負い、9日間の昏睡状態に陥ります。目が覚めたときには自分の名前すら覚えておらず、歩くことさえままならない。脳に障害を抱え、襲撃の後遺症(PTSD)に苦しむマークはまともなセラピーも受けられず、治療代わりにフィギュアの撮影を始めるのです。


 マークがリハビリとして行う写真撮影は、ただのフィギュア撮影ではありません。自宅の庭にミニチュアの家や店を作り、水道を通して噴水まで配備されたひとつの街“マーウェン”を舞台に、自分を模したG.Iジョー、ホーギー大佐と5人のバービー人形が迫り来るナチス親衛隊と日々戦いを繰り広げているという設定のもと、とことん作りこまれた設計で写真撮影を行っているのです。


 ナチスと戦うバービー人形という設定だけでも、なかなかぶっ飛んでいるかとは思いますが、ナチス親衛隊たちは何度倒しても復活してマーウェンを襲ってくるし、ホーギー大佐は魔女に惚れられていて、バービー人形たちと恋に落ちることができない禁忌が存在するなど、暴走といってもいいような世界観の妄想が繰り広げられるのです。


 そして、ゼメキス監督はそのはちゃめちゃな妄想を映像化することにブレーキを踏みません。映画でもフィギュアのディテールに細部までこだわり、忠実に映像化。当初は実写で撮影し後からCGでフィギュアの関節を加える形で製作する予定だったものを、全てモーション・キャプチャで製作するほどのこだわりで、スクリーン全体に妄想を具現化してしまうさまは、ある種の気持ちよさすら感じさせます。


 ゼメキス監督は、2010年に公開されたドキュメンタリー作品『Marwencol(原題)』を見て、本作を製作することを決めたといいます。その意思に共鳴したのが、『バイス』『フォックスキャッチャー』をはじめ様々な作品で存在感を発揮するスティーヴ・カレルです。アカデミー賞にもノミネートされた名優がヘイトクライムの後遺症から立ち上がるべく奮闘する男の等身大の姿を見事表現しています。


 先週から公開され日本でも大ヒットを続けている『トイ・ストーリー4』、今週公開の誰もが知るホラーアイコン、チャッキーを描く『チャイルド・プレイ』と、なぜかこのタイミングで“人形”をテーマに扱った3作品が劇場に会しました。この週末で見比べてみて、それぞれのディテールへのこだわりを検証するのも一興ではないでしょうか。(リアルサウンド編集部)


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