『モヤさま』『水曜日のダウンタウン』『充電させてもらえませんか?』…音楽にこだわるバラエティ

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2019年07月20日 08:01  リアルサウンド

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リアルサウンド編集部

 『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日系)の7月3日放送分にて、世の中に存在する定番BGMについてのトークから、マツコ・デラックスが音効について触れる一幕があった。


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 音効とは、作品に合った音楽や効果音を作曲し、音で作品を盛り上げるサウンドディレクターのこと。バレンタインデーの季節に流れる国生さゆり「バレンタイン・キッス」やPerfume「チョコレイト・ディスコ」、“筋肉ネタ”でのBon Jovi「It’s My Life」といったバラエティ番組では定番のものが分かりやすい例だろう。そのほかに、『かりそめ天国』であれば、オープニングテーマに流れるブルーノ・マーズ「Talking to the Moon」、飯尾和樹(ずん)のコーナー「No.1キャバ嬢の顔をガンガン見て飯尾No.1を決めたい!」でのアレクサンドラ・スタン「Mr. Saxobeat」のイメージが強い。


 大抵はそのシチュエーションの雰囲気に合わせた選曲をすることが多いが、中には玄人好みの選曲をする場合もある。マツコは、テレビをそんなシーンを発見すると「音効さん、私気づきましたよ」と心の中で共感しているのだという。


 BGMに定評のある番組としてまず名前が挙がるのが、『モヤモヤさまぁ〜ず2』(テレビ東京系)。音効を担当するのは、テレビ番組の全般・CM・イベントなどの選曲・音響効果を行う会社・Thee BLUEBEATの松田創氏。オープニングテーマで起用している、イギリスのパンクロックバンド・The Toy Dolls「Dig That Groove Baby」、提供クレジットでのコニー・フランシス「Stupid Cupid」といったナンバーは、聞けば一発で『モヤさま』を連想するほどに番組のカラーとしてなくてはならないものとなっている。


 中でも『モヤさま』は番組本編のBGMにこだわりを感じさせる選曲が多く、例えば三村マサカズが活躍するシーンではアニメ『ダメおやじ』のオープニングテーマ「ダメおやじの唄」、大竹一樹の場合はトンガリキッズ「MEGANE(Ver.HANAGOE)」、肉料理にはハル&チッチ歌族「お肉食べようのうた」など、一度聞いたら耳から離れないような個性の強い楽曲が起用されている。


 歴代のエンディングテーマには、矢野顕子、the pillows、WANIMA、在日ファンク、cero、KID FRESINO、Yogee New Wavesといったアーティストが並ぶのも特徴。番組の大ファンであり、たまたまプライベートでロケに遭遇した細野晴臣は、その回のVTRを『細野晴臣イエローマジックショー2』でオンエアし、NHK BSプレミアムでテレビ東京の番組がオンエアされるという異例の事態となった。先日、7月14日の放送には、ユニコーンから番組をよく観ているという奥田民生、川西幸一が登場。巣鴨・大塚周辺というデビュー初期に住んでいた馴染みの場所で、1stアルバム『BOOM』収録の「Maybe Blue」という粋な選曲がなされた。


 2015年に小籔千豊が「テレビ番組のBGM、ロッキーに頼りすぎ説」を提唱していた『水曜日のダウンタウン』(TBS系)は、オープニングテーマをPUNPEEが担当しており、メインテーマにはPUNPEEが手がけたtofubeats「水星 feat. オノマトペ大臣 Roller Skate Disco REMIX」が起用されている。番組プロデューサーの藤井健太郎氏は、音楽イベント『STILL MORE BOUNCE』を主催しており、ラインナップにはPUNPEE、BAD HOP、ゆるふわギャングといったヒップホップアーティストと一緒にレイザーラモンRG、なかやまきんに君が並んでいる。音効を担当するのは、石川良則氏。過去には、Base Ball Bear「The Cut feat.RHYMESTER」がBGMに起用されていることに、バンドの小出祐介自身がTwitterで反応していたほか、音効の石川本人もTwitterにて水曜日のカンパネラ「二階堂マリ」をプロレスネタで使用したことに触れている。ほかにも最近の例では、7月17日放送分での企画「そこそこ売れてるのに『あの人は今』系のオファーがきたらショックと不快が半々説」にて、t.A.T.u.「Not Gonna Get Us」がインサートされるという番組らしい尖った選曲が目立っていた。


 土曜日プライムタイムのバラエティとして、老若男女に愛される番組に成長した『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』(テレビ東京系)は、テーマソングのスピッツがカバーする「さすらい」が印象的だが、BGMの選曲には「使命感」を持っているとプロデューサーの平山大吾氏は、インタビューにて明かしている。音効を担当するのは、音響効果を扱う会社・音響企画の塩谷弘樹氏ら(参考)。電動バイク初充電時の「北の国から 遙かなる大地より〜蛍のテーマ」、焼き肉店での「お肉食べようのうた」、泊めてもらった宿での「にんげんっていいな」……『モヤさま』に通ずる徹底したポリシーを感じさせる。インタビューでは、平山の山口百恵「横須賀ストーリー」、左卜全とひまわりキティーズ「老人と子供のポルカ」にまつわるエピソードと共に、「気付かなくても気にならないし、気付いた人は面白いっていうものができたらいいなと思っている」といった思いが明かされており、冒頭でふれたマツコの例はまさに“気付いた人”に当たる。


 ほかにも「空耳アワー」で知られ、星野源やマキシマム ザ ホルモン、あいみょん、KinKi Kidsといったアーティストも多数出演する長寿番組『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)、長年千葉県在住のJAGUARを取り上げ続ける『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)など、音楽面において人並外れたセンスを放つ番組は数多く存在する(音効はそれぞれ、『タモリ倶楽部』が佳夢音の黒澤隆昌氏、『夜ふかし』が岡田淳一氏)。音楽認識アプリ・Shazamをはじめ、流れている音楽の曲名を簡単に調べることができる便利な世の中になった昨今。目だけでなく、耳でもバラエティ番組を楽しむことができれば、そこには気づきと共に新たな視聴の仕方が広がっているかもしれない。(渡辺彰浩)


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  • あるね、なぜこの選曲なのかという時。そして大好きなPRINCEの曲だったりするとほくそ笑んでる。
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