『ボイス』真木よう子が示す、今ある「声」を掬う意志  黒幕は警察内部にも関係が?

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2019年07月21日 15:21  リアルサウンド

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 いよいよ凶悪犯に姿が見つかってしまい、もうだめかと思われたところで終わりを迎えた先週の初回放送。そのつづきから始まった『ボイス 110緊急指令室』(日本テレビ系)第2話では、間一髪のところで樋口(唐沢寿明)が止めに入り、犯人確保、被害者女性の救出に成功し、最悪の結末は免れた。


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 被害者からの通報を受けて10分。そのタイムリミットのなかで万事解決をめざすECU(Emergency Call Unit)は、10分を超えてしまう不恰好なスタートながら、3か月という期限付きでの設置を許可される。そこで室長のひかり(真木よう子)が求めたのは、現場リーダーとして樋口をECUに迎えたいという望みだった。なぜそこまで樋口にこだわるのか。なぜ、監禁場所を突き止めることができたのか。3年前の事件での因縁もあってひかりを信用することができない樋口は、その誘いを断ってしまう。「人よりも聴力が優れている」というひかりの言葉も現実味がなく、信じることができない。


 それでも屈しないひかりはついに、樋口を強制的にECUへと異動。もちろん納得がいかない樋口だったが、普通であれば呼びかけても聞こえるはずがない、遠くにいるひかりへ向かって名前を呼ぶと、振り返ってこちらを見てくるではないか。いよいよその特異な性質に肌で触れた樋口は、ひかりに真実を問い詰め、ひかりは3年前の事件の真相を語り出す。


 樋口の妻・未希(菊池桃子)からの通報を受けたこと、一旦電話が切られたあとに(上司が)コールバックしてしまったことが原因で犯人に居場所が見つかってしまったこと、そこで聞いた犯人の声と実際に捕らえられた被疑者・相良の声とが明らかに異なっていたこと。さらには、現場を巡回していた警官であるひかりの父親も、犯人を追って無残にも殺されてしまったという悲劇のことも。「私とあなたは同じなんです」。ひかりの言うそれは、同じ犯人に、「大事な人の声」がこの世界から消されてしまったことを指しているのだろう。


 12歳のときに事故で目にケガを負い、2年間視覚を失ったことと引き換えに聴覚が異常に発達したのだと、語るひかり。遺恨が残る事件から、ボイスプロファイラー(声紋分析官)としての力をつけるために科捜研へ異動し、3年の時を経てECUを設立することに至った経緯も樋口へ向かって語られた。彼らが共有するのは、「失われてしまった大事な人の声」という非常に悲しいものだ。息子が夜な夜な見る夢には当たり前のように母親がいて、彼女からは愛にあふれた声が聞こえてくるのだろう。樋口の心の中でいつだって思い出されるのは、事件当日の朝に耳にした、「少しはちゃんと寝ないと」と言う未希の温かい声に違いない。そんな大事な声が失われながら、それでもひかりは前を向いている。この『ボイス』というドラマからは、凛としたひかりの姿勢を通して、今ある「声」を必ずなくしてはいけないという強い意志を感じることができるのだ。


 勇気を持って発しても忙殺されてしまう声や、突然、ほんとうに唐突に奪い去られてしまう声というものが、現実の世界にも存在する。それでは、今ある「声」を聴いてあげられるのは誰なのか。3年前の事件の真犯人である男についてひかりが推測するのは、ものすごい権力の持ち主であるがゆえに警察内部とつながっており、証拠をも消してしまう存在であるということだった。そこには、まるでこの現実の世界を投影しているかのようないびつな組織構造が浮かび上がってくる。


 助けを求める人の「声」を聴きとり、タイムリミットのなかで必ず救出するという本作が、どれだけの声を掬い上げることができるのか。ホワイトハッカーやマルチリンガルのメンバーが加わったECUチームの第3話以降の活躍に期待していきたい。 (文=原航平)


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