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元極妻が考えるヒットマンと引きこもり――「いろんな人」が排除される社会が生んだ悲劇

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2019年07月21日 19:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

写真『満期出獄 ヒットマン・中保喜代春』(かや書房)
『満期出獄 ヒットマン・中保喜代春』(かや書房)

今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻だった、待田芳子姐さんが語る極妻の暮らし、ヤクザの実態――。

■突然のヒットマン指名

 先月末に、『満期出獄 ヒットマン・中保喜代春』(かや書房)というまたまたすごい本が出版されました。中保さんは、あの「五代目山口組・宅見勝若頭射殺事件」の実行犯のお一人です。

 著者は大ベテランの木村勝美さんで、これまでも若頭射殺事件に関して何冊も本を書かれています。組織のために長い懲役を務めて出所された中保さんの気持ちが、著者との獄中書簡なども交えながらつづられています。ちなみに中保さん自身も、獄中から2001年に『ヒットマン―獄中の父からいとしいわが子へ』(講談社)を出版されていて、これも興味深かったです。事件(1997年)の翌年10月に逮捕され、逮捕の前月には息子さんも誕生されていたのに……。ヤクザとして生きている以上は仕方ないことでもあるのですが、事件を通じて関係者への恨み節もにじんでいます。

 ネタバレしない程度でお話をご紹介しますと、中保さんの稼業入り(ヤクザデビュー)は46歳とかなり遅めなのですが、もともと頭がよくて、シノギもうまくいっていたようです。事件のあった97年当時は、バブル経済崩壊後の不景気や92年に施行された暴対法の影響はあったものの、まだヤクザの居場所はありました。

 中保さんはシノギがちゃんとしているので「ちゃんとしたヤクザ」と見なされたのでしょうか、所属していた中野会の幹部に目をかけられ、ヒットマンとしてスカウトされてしまいます。

「目をかけてくれるのは、はっきりいって、ありがた迷惑でした」

 中保さんは、自著でこう振り返っているほどです。中野会とは、若頭射殺事件後に絶縁された中野太郎会長率いる山口組の二次団体です。会長以下、皆さんの個性が強烈すぎることで有名でした。このあたりは会長の自著『悲憤』(講談社)に詳しく、おもしろエピソードもありますよ。今回の『満期出獄〜』も、この中野会幹部への恨みがかなり多めです。

「きっちりタマを取らないかん。おまえらそのメンバーや」

 秘密の会合でこう言われ、「一同は凍りついた」そうです。そりゃそうですね。でも、断ったら自分が殺されますから、仕方なく指名された面識のない3人とグループを作り、同じ組織のナンバー2という雲の上の人の生命を狙うことになったのです。

 さて渋々と襲撃を決めたものの、実行犯グループは、若頭の追跡に四苦八苦します。事件当時の若頭は持病があって都内の病院に入院したりと、移動が多かったんですね。それでも、「その日」が来てしまいました。

 97年8月28日午後。神戸市内のシティホテルのほぼ満席の喫茶室に、サングラスに帽子、青色の作業服の4人の男が突然現れ、2人の山口組幹部とコーヒーを飲んでいた若頭を至近距離から銃撃しました。

「さすが、山口組の若頭や。並の根性とちがう」

 中保さんは『ヒットマン〜』で、こう書かれています。45口径の銃弾を10発くらい撃ち込まれながらも、若頭はなおもつかみかかろうとしてきたのだそうです。即死ではなく、搬送先の病院で亡くなっていますしね。

 実行犯グループはいったん逃亡しますが、中保さんは逮捕されました。その後、1人は遺体で見つかり、あとの2人は懲役刑が確定しました。また、現場の指揮役は16年の逃亡の末に13年に逮捕され、無期懲役の刑が確定したことも話題になりました。

 六代目山口組・司忍組長は、産経新聞の記者にこう明かしました。

「そもそもやくざをしていて得なことはない。懲役とは隣り合わせだし、ときには生命の危険もある。それでも人が集まってくる。昔から言われることだが、この世界で救われる者がいるからだと思う」

「社会から落ちこぼれた若者たちが無軌道になって、かたぎに迷惑をかけないように目を光らせることもわれわれの務めだと思っている」

 落ちこぼれがヤクザの世界に入ることで救われる……というのは、今となっては説得力がないのですが、最近は就職氷河期世代の男性の事件も目立ちますよね。川崎で児童を含む20人を殺傷した男性、エリートのお父さんに殺された息子さん、ネットで相手を「低能」と罵倒していた「低能先生」による有名ブロガーの殺害。そして、7月18日には京都アニメーションで放火殺人事件がありましたが、これも犯人は41歳男性だそうです。

 これらを「ヤクザが目を光らせない結果」とは言いませんが、「ヤクザという厄介者」だけではなく、「いろんな人」が排除される社会で、悲劇が繰り返されているのかなと思います。

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