「XT5」は日本にぴったり? 流行のSUVにキャデラックという選択肢

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2019年07月23日 11:52  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
●レンジローバーから始まるSUVの歴史、キャデラックの立ち位置は
近年、世界的に人気を高めているのがSUVだ。昔ながらのジープ的な4輪駆動車の逞しさを残しながら、日常生活の中での利用も重視するクルマとして、日本でも見かける機会が多い。人気カテゴリーで車種も豊富だが、キャデラックの新車「XT5」も一度は試してみるべきクルマだと言える。

米ゼネラルモーターズ(GM)の高級車ブランドであるキャデラックから、新型のクロスオーバーSUVとして「XT5クロスオーバー」が2017年7月に日本初公開され、10月から販売が開始された。このクルマは、これまでの「SRX」の後継車になる。

XT5については試乗の感想も含めお伝えするとして、まずはSUVの歴史を振り返り、その文脈でXT5の立ち位置を考えてみたい。

○走破性と街乗りの両立が魅力のSUV

SUVの発端は、英ランドローバー社の「レンジローバー」誕生に遡ることができる。レンジローバーは本格的な悪路走破性を備えながら、高級乗用車のような快適性を持つ車種として1970年に誕生した。当時からフルタイム4輪駆動方式を採用し、2輪駆動と4輪駆動の切り替えを必要とするパートタイム4輪駆動方式に比べ、日々の使い勝手を大幅に向上させていた。

日本車では、1981年にいすゞ自動車から「ロデオビッグホーン」が登場し、翌82年には三菱自動車工業から「パジェロ」が誕生した。これらは当時、レクリエーショナル・ビークル(RV)と呼ばれ、郊外へ休暇に出かけた際に悪路も走れる車種という位置づけだった。そして、キャンプやスキーが流行ったのである。

米国ではジープ「チェロキー」が1974年に生まれ、1984年からの2世代目が日本でも人気を呼んだ。

これらは当時まだ、SUVとはっきり区分けされてはいなかったが、それぞれの自動車メーカーには軍用や過酷な道なき大地を駆ける車種として、ランドローバー社には「ランドローバー」(のちに「ディフェンダー」)、三菱自にはジープのノックダウン生産による「三菱ジープ」、もちろん本家米国には軍用の「ジープ」があり、それぞれに悪路を走破するための高度な4輪駆動技術を持っていた。そうした本格派の派生としてSUVにつながる車種が登場したのである。

●広がるSUVの定義、クロスオーバー車の概念が誕生
○富裕層のクルマとしても定着、トヨタ「ハリアー」も登場

SUVという位置づけがより明確になってくるのは、1990年代に入ってからだ。米国西海岸の高級住宅地であるビバリーヒルズなどで、レンジローバーに乗る富裕層が出てきた。

富裕層の乗る高級車と言えば、米国なら「キャデラック」、英国なら「ロールスロイス」、あるいはドイツの「メルセデス・ベンツ」、そして高性能スポーツカーなどがあるが、そうした乗用4ドアセダンなどと一味違う見栄えや乗り心地、存在感を見せる車種として、レンジローバーに注目が集まったのではないか。金持ちであることを単に誇示するだけでなく、人となりとして、より行動的で活発であることを示す持ち物と考えられたのだろう。

そこに目を付けたのが、トヨタ自動車の「ハリアー」だった。こちらは本格的4輪駆動車からの派生ではなく、中型乗用4ドアセダンとして米国で販売1位をとっている「カムリ」が基になった。4輪駆動車としての能力はそれなりだが、基が乗用車なので、快適性は格段に違った。そこに多くの人が魅力を感じだし、SUVという存在が確立されていったのである。

○ラグジュアリークロスオーバーとしてのキャデラック「XT5」

SUVの発想はさらに広がり、本格的4輪駆動車として存在してきたジープのような格好をした車種でありながら、実は4輪駆動ではなく2輪駆動のクルマまで現れるようになる。

そうなると、何をもってSUVと定義するのかが曖昧になってきた。そして、あらゆる要素を1つに融合したクロスオーバー車という呼び名が登場することになる。

クロスオーバー車とは、4輪駆動車のようでありながら、乗用車の快適性や、高級さをより備え、日常的な利用にも便利なクルマであるというように、昔ながらの分類を超えて、複合的な魅力を併せ持つクルマだと位置づけられる。

前置きが長くなったが、キャデラック「XT5」は、ラグジュアリークロスオーバーと紹介されるSUVだ。

●ニューヨークに本拠を移したキャデラックの新たな味わい
○やや無骨な外観、乗り心地は高級乗用車

XT5は、最新のキャデラック各車種と共通の顔つきやデザインの雰囲気を備えながら、4輪駆動車であることを明らかにする車高の高さが外観の特徴だ。ドアを開け乗り込むと、高級車のような上質な室内空間があり、内装デザインは目に心地よい豪華かつお洒落な雰囲気を湛えている。

外観からすると、やや武骨な印象も与える4輪駆動車の佇まいでありながら、室内に居ると高級乗用車の快さを伝えてくる。そこがまさしく、ラグジュアリークロスオーバーということなのだろう。

運転をし始めると、何よりその軽快な走りが印象深い。悪路を駆け抜けるためのゴツゴツとした頑丈さはあまり感じさせない。それよりも、車高が私の身長を超える1.7メートルと高いにも関わらず、背の低いスポーティな車種を運転するかのように身軽だ。

前型の「SRX」に比べ90キロもの軽量化を実現していることが、その軽快さを生み出しているのだろう。その結果、車体全長が4.8メートルあるということ以上に、車幅が1.9メートルを超えかなり幅広いにも関わらず、クルマの大きさをあまり意識せず、自在に運転することができた。

○キャデラックはデトロイトからニューヨークへ

この気軽な気分にさせる運転感覚は、前型のSRXと明らかに異なる。その背景には、2009年に連邦倒産法第11章(チャプター11)の適用を受け、新生GMとしての再スタート後、グローバルキャデラックの本社をミシガン州デトロイトからニューヨーク州ニューヨークへ移したことも関わっているのではないかと想像する。

重厚長大なモノづくりの街から、世界から人々が集まり文化を生み出すニューヨークへと拠点を移したことで、今という時代を生きる人々が求める感性をキャデラックが身にまとったのではないだろうか。

XT5に乗っていると、とにかく心地よい。運転も楽だ。こう言うと、高性能であることを旨とするドイツ車勢に劣っているのではないかと思い込む読者があるかもしれない。だが、ドイツ車のSUVやクロスオーバー車とは、また違った味わいのある、それでいてしっかり走るクルマにXT5は仕上がっている。

例えば軽快な走行感覚も、高速道路に入るとドイツ車のように腰を落ち着けた安定性を発揮しだす。駆動方式の切り替えにより、もちろん前輪駆動で走っている時も安定感を感じるのだが、4輪駆動へ切り替えればいっそう安心を高める。さらに、スポーツモードを選ぶとハンドルの手ごたえが重くなり、乗り心地もやや硬めにはなるが、快適性を損なうことなく爽快に高速道路を走り続ける。

この感覚は、ドイツ勢と明らかに異なる。そして、日本での利用に最適な走行性能と快適性だと思わせるのである。

●クルマの使用条件に共通項? 日米で乗りやすい“新生アメリカ車”
○速度制限から見るクルマの使用条件

速度無制限区間のあるアウトバーンを走るドイツ車は、高速性能という点で世界屈指だろう。だが、公道における速度無制限など、世界のどこにも他に例がなく、特殊な環境だ。一方、米国の速度制限は国内のそれに近く、すなわちクルマの使用条件が日米では似ている。

もちろん、道幅や路地の有無、あるいは舗装の違いなどはあるが、似たような条件で走ることを視野に開発すれば、おのずと日米で乗りやすいクルマとなっていくのである。ただし同時に、世界的に売っていく車種として、高速性能も満たしている。それがXT5である。

さらに、後席の快適性が特筆すべき点だ。後席は床へきちんと足を下ろして座れる座席の高さがあり、腿を座席で支えることができるので、走行中も体が安定する。クッションの硬さも適度だ。さらに、天井ほぼ一杯にシェードを開けることで空を見上げることのできる「ウルトラビューパノラミック電動サンルーフ」には、息を呑むだろう。そもそも、ガラスサンルーフという発想を生み出したのは米国だ。

○操縦安定性は一新、変わる“アメ車”のイメージ

4ドアセダンの「CTS」が2003年に誕生して以降、キャデラックは単なる国内車種ではなくなり、かつて“アメ車”と国内で揶揄されたような、操縦安定性は二の次といったような乗り味ではなくなっている。その後、ドイツ勢を追うような運転感覚が目指されたが、ここに来て、“新生アメリカ車”とでも言うべき独自の新しい乗り味を実現していると感じる。

もはや、国内でドイツ車に乗る意味はどこにあるのかとさえ思わせる最新のキャデラックに、ぜひ乗ってみるべきだ。

25万台の国内ラグジュアリー市場を主眼に、成熟した国内市場のコア層(中核となる顧客)との接触を重視した経営戦略を進めるゼネラルモーターズ・ジャパン(GMジャパン)は、左ハンドル車のみの輸入となっているが、日本での人気が右肩上がりで推移するならば、再び右ハンドル車の輸入がかなうかもしれない。

まずは最新のキャデラックを見て、運転してみてはどうだろう。目から鱗が落ちること間違いなく、クルマの選択肢が広がるに違いない。(御堀直嗣)

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