「ビジョン・クーペ」が登場、モーターショーでデザインを語るマツダ

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2019年07月23日 12:02  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
●東京モーターショー2017が開幕、我が道を行くマツダ
10月28日から一般公開された「第45回 東京モーターショー2017」で異彩を放っているのがマツダだ。電動化の流れに反旗を翻すような「夢のエンジン」を発表するとともに、新世代の「魂動」(こどう)デザインも展示。これまでとは何が違うのか、会場でデザイナーに聞いた。

○電動化だけではないモーターショーの見どころ

東京モーターショーが、先週土曜日から東京ビックサイトで一般公開されている。筆者は先週、水・木曜日のプレスデーでひと足先にチェックすることができた。同業者の話にもあったけれど、一言で言えば予想以上だったと思っている。

一部のマスメディアは電動化にしかスポットを当てなかったようだが、実際は、それ以外にも見どころがたくさんあった。その中で、個人的に印象に残ったのは“ジャパニーズ・ヘリテージ”の流れだ。

トヨタ自動車は超高級車「センチュリー」を21年ぶりにモデルチェンジし、ダイハツ工業は1960年代の大衆車の復刻版と言えるコンセプトカー「DN COMPAGNO」(DNコンパーノ)を出展。2輪車では本田技研工業が累計生産台数1億台を達成した「スーパーカブ」の新型、そして川崎重工業(カワサキ)は、1970年代に一世を風靡したスーパースポーツ「Z1」の復刻版と言える「Z900RS」を送り出した。

一方で、文字どおり我が道を行っていたブランドがあった。マツダだ。同社は2010年、「スカイアクティブテクノロジー」(SKYACTIV TECHNOLOGY)という新世代技術の投入を発表するとともに、コンセプトカーの「靭」(シナリ)を公開し、「魂動」(こどう)という新しいデザインテーマを提案した。今回は、この2つのテーマの新たなステップを展示していたのだ。

○エンジンも展示したマツダの独自路線

このうちスカイアクティブについては、別の記事でテストコースでの試乗記事を紹介している。ガソリンとディーゼルの“いいとこ取り”といえる夢のエンジン、つまり、ガソリンを燃料としつつディーゼルのような圧縮点火方式を実現することで燃費性能を大幅に高めた「SKYACTIV-X」だ。

そこで今回は、もうひとつのトピックである魂動デザインの深化(進化ではない)について、コンセプトカーを紹介しながら解説していきたい。

今回のモーターショーでマツダは、「マツダ VISION COUPE」(ビジョン・クーペ)と「マツダ 魁(カイ) CONCEPT」(魁コンセプト)という2台のコンセプトカーを世界初公開した。

このうち魁コンセプトは、前述したSKYACTIV-Xや、スカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャーと名付けた新世代プラットフォームを採用しており、次期「アクセラ」なのではないかという噂もある。純粋に魂動デザインの深化を表現したコンセプトカーはビジョン・クーペになる。

●デザインは「引き算の美学」、2年前の展示と関連性も
○照明にもこだわり、RXビジョンとも共通項

会場に着くと、落ち着いたメタリックカラーをまとう流麗な4ドアクーペがターンテーブルに置かれていた。上からは、ターンテーブルと同じぐらい大きな円形の照明の柔らかい光が、ビジョン・クーペを照らしている。

そのシーンを見た瞬間、筆者は2年前の東京モーターショーのマツダ・ブースを思い出した。そこには「Mazda RX-VISION」(RXビジョン)と名付けられたスポーツカーが、同様の舞台装置の中で展示されていた。

2年前は、マツダがロータリーエンジン搭載車に使って来た「RX」の2文字を用いていたものの、他のブランドもコンセプトカーに起用することが多い「ビジョン」という言葉を使ったところは共通しているし、なによりも、天井に仕込まれた照明のデザインが似ていた。

○「艶」と「凛」で次世代のデザインを語るマツダ

マツダのデザイン本部アドバンスデザインスタジオでビジョン・クーペに関わった岩尾典史氏に話を聞くと、前回のRXビジョンと今回のビジョン・クーペには共通項もあるという。

魂動デザインは2010年に発表した「靭」以来、草原を駆けるチーターなど、生きた形をスタイリングにすることを普遍的な根源としている。その点では、2年前のRXビジョンと今回のクーペ・ビジョンは共通しているという。

「具体的には『艶』と『凛』、つまり艶やかさと凛とした部分を共有しているところは同じです。しかし、RXビジョンが艶やかさを重視して造形されたのに対し、ビジョン・クーペは凛とした部分を強調して造形したという違いがあります」(岩尾氏)

凛とした部分とは、日本の美意識の中にある「引き算の美学」に宿っているという。これ見よがしに主張するのではなく、引くこと、省略することで生まれる余白の豊かさだ。マツダはこの部分を大切に考え、キャラクターラインなどの線で個性を表現するのではなく、面に当たる光の移ろいを表現することに挑戦したというのだ。

たしかにビジョン・クーペを見ると、現行「アテンザ」や「アクセラ」などに用いているボディサイドのキャラクターラインがない。RXビジョンもそうだった。線に頼らない、面で魅せるデザインを貫いている。

●線ではなく面で魅せるマツダ車、照明もデザインの一部に
○光の当たり具合で表情を変えるクルマ

線に頼らないデザインは想いを伝えることが難しい。光が当たったとき、線があればそこで明暗がくっきり分かれるけれど、面の凹凸は光の角度によっては分かりにくい。そこでマツダは照明にこだわった。2年前のRXビジョンと今回のビジョン・クーペの展示に使われた大きな白い照明装置だ。

RXビジョンが出展されたとき、デザイン本部長として魂動デザインを立ち上げた前田育男氏にRXビジョンについて伺ったところ、照明もデザインの一部という答えが返って来た。今回のビジョン・クーペも同様のこだわりで作り上げられたのだろう。

ビジョン・クーペの正面に立ち、ゆっくり回転していく車体を見ていると、ボディサイドで少しずつ姿を変えていく光の映り込みが、屋外の道を走り去っていくときの光の移ろいに見える。それをインドアのブースで体感するための装置なのだ。そして色にも工夫がある。

「前回のモーターショーに展示されたRXビジョンは、艶やかさをアピールするために、魂動デザインのイメージカラーとしてきた『ソウルレッド』の進化形と言える赤を用いました。しかし、今回のビジョン・クーペでは、金属質の強さを再現したいという目的があったのでダークシルバーとしました」(前出の岩尾氏)

○クーペスタイルにも反映されるマツダの伝統

4ドアクーペというボディタイプにした理由もある。プレミアムブランドでこの種のボディがトレンドになっているからではない。マツダは乗用車第1号の「R360クーペ」、前輪駆動のロータリーエンジン車であった「ルーチェ・ロータリークーペ」など、クーペにこだわってきたブランドのひとつだ。ビジョン・クーペはこうした文化を反映したデザインでもある。

2年前に公開されたRXビジョンは近い将来、ロータリーエンジンを積んだスポーツカーとして市販化されると噂されている。今回のビジョン・クーペは、次期「アテンザ」になるのだろうか。これまでもコンセプトカーのデザインを量産車に忠実に反映してきたマツダだからこそ、「SKYACTIV-X」だけでなく新世代の魂動デザインにも注目したい。(森口将之)

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  • これ2017年の記事じゃないのか。何で今頃…。
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