初代の衝撃、再び…乗って感じたホンダ「N-BOX」の進化と洗練

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2019年07月23日 12:32  マイナビニュース

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●新型N-BOXは「さすがN-BOX」だった
8月31日のモデルチェンジで2代目に進化したホンダの“売れ筋”軽自動車「N-BOX」。見た目は旧型とあまり変わらない。だからこそ「中身はどうなんだろう?」という気持ちでいる人は多いはず。実際に試乗した印象をお届けすることで、気になる疑問にお答えしよう。

○モデル末期まで売れ続けた初代「N-BOX」

2011年に発売されるや、軽自動車ベストセラーの座に何度も就き、今年に入っても勢いが衰えなかったホンダN-BOXが、8月31日にモデルチェンジを実施した。その内容はすでに紹介しているが、今までも売れていたのになぜモデルチェンジするのか、疑問に思った人もいるだろう。

しかも新型のスタイリングは、旧型とほとんど変わらない。軽自動車の規格は全長3,400mm、全幅1,480mm、全高2,000mm以内と変わっていないので、この枠内で最大限の室内空間を確保しようと思ったら、おのずと形は決まってくるとも言えるのだが。

筆者にも似たような気持ちは少しあった。しかし、今月行われた報道関係者向け試乗会で実車に触れ、運転してみると、逆に進化のレベルの大きさに驚くことになってしまった。

○トレンドに沿ったカスタムの顔変更

まず、旧型と似ているという声が多いスタイリングだが、たしかに標準車についてはそっくりであるものの、カスタムについては以前と違う印象を抱いた。

旧型「N-BOXカスタム」は、クロームメッキをふんだんに使ったフロントマスクが特徴だった。ギラギラという言葉が似合う顔つきで、それが人気を後押しした要因の1つだったようだが、筆者には馴染めなかった。

それが新型では、クロームメッキは太めのバーを1本入れただけ。細い吊り目のヘッドランプはややキツめだが、全体はむしろブラックフェイスと呼びたくなるほど黒い部分が多く、精悍な雰囲気に変わっている。

試乗後に開発担当者に聞いたところ、世の中のトレンドに沿ったものだという答えが返ってきて、なるほどと思った。例えばトヨタの大型ミニバン「アルファード」と「ヴェルファイア」は、昔はヴェルファイアのほうがギラギラしていたのに、現行型はむしろ逆になっている。

カスタムを求めるユーザーの好みが、豪華路線から精悍路線にシフトしており、N-BOXもこれに合わせたということなのだろう。

●自慢のスライドシートはぜひ体験を
○スーパースライドシートで多彩なシートアレンジが可能に

インテリアでは、運転席の前にあるメーターが遠くに移動し、ステアリングの上から見るタイプになったことにまず気づく。N-BOXは着座位置が高いので、低い位置にメーターがあるとドライバーの視線移動が大きくなりがちだ。その点、新型のメーターは視線移動が少なく、見やすくなった。しかも、手前に収納スペースを用意することができた。これが実に使いやすかった。

シートでは、助手席が前後に長くスライドするスーパースライドシートが特徴だ。実車で試してみると、身長170cmの筆者がドライビングポジションを取った運転席の腰の位置まで助手席前端を下げることが可能だった。後席もスライド可能なので、上から見てチェック模様のようなシート配置にすることもできる。

感心するのは、スーパースライドシートの導入に合わせて、助手席シートベルトをシート内蔵としていることだ。センターピラーに内蔵した従来の方式では、後に下げたときベルトとしての機能が果たせなくなるためだが、ベルト内蔵とするとシート自体に高い剛性を持たせなければならず、重量も増える。よくぞ投入したものだと感心した。

ホンダではこのスーパースライドシートの利点について、3人家族で父親が運転席、母親が助手席、子供が後席右側に座ったような場合に、母親が父親と子供の両者との会話がしやすくなることを挙げている。

ただし、自動車に限らず、2人以上が同じ場所に座る場合の椅子は、横並びとなるのが一般的だ。わざわざオフセットするという配置はめったに見ない。ここは販売現場でも、オフセット配置によって会話がむしろ弾むことを展示車で体験してもらい、理解を深めていく必要があるだろう。

●再度ライバルを引き離した走り
○軽量化+新型エンジンで走りも進化

走りについてはまず、ターボがつかない自然吸気エンジンでも十分な加速が得られることに驚いた。最初に乗ったのがこの自然吸気車だったのだが、よく走るので途中までターボ車と勘違いしていたほどだ。

新型のアピールポイントの1つである80kgもの軽量化が効いているのはもちろん、パワーユニットの一新も効果を発揮しているようだ。6年前に登場した旧型でも新開発エンジンを投入していた。2世代続いて新型に切り替えるのは異例だ。

これについて開発担当者は、販売成績が良かったので開発費用をかけることが可能だったという事情も明かしながら、シリンダーの内径(ボア)を小さくして行程(ストローク)を伸ばすことで、混合気の流れを活発にして燃焼効率を上げつつ、ボア縮小によるバルブの小径化は「VTEC」の名でおなじみの可変バルブ機構を投入して、全域での力強さを獲得したという。

さらに無段変速機(CVT)は、回転をなるべく上げずに走るセッティングとしたことに加え、エンジンマウントを見直すことでノイズの周波数をコントロールし、静かに感じさせる配慮もしたとのことだ。

確かにエンジン音は3気筒とは思えない上質なサウンドで、ボリュームも抑えられており、長距離でも快適に過ごせそうだった。あとで乗ったターボに比べるとエンジンを回すことにはなるが、回している実感が薄いのでターボとの差をあまり感じない。

80kgもの軽量化というとボディ剛性を心配する人がいるかもしれないが、ドアの開け閉めはしっかりしており、乗り心地はいかにもサスペンションがよく動いている様子で、良好だった旧型をさらに上回っていた。

○運転支援システムを全車標準装備に

この快適性をさらに引き上げていたのが、「ホンダセンシング(Honda SENSING)」と呼ばれる運転支援システムを全車に標準装備したことだ。

クルーズコントロールは前車追従のアダプティブタイプに進化し、コーナーでは操舵をアシストする機能まで盛り込まれた。「フィット」や「フリード」と同じ内容であり、作動感も2台同様、自然で完成度の高いものだった。高速道路での安定性は旧型同様ハイレベルなので、ホンダセンシングの投入は鬼に金棒という感じがした。

6年前に旧型がデビューしたとき、多くの面で軽自動車のレベルを超越した走りに驚いた記憶があるが、今回もまた、同じレベルの驚きをもたらしてくれた。これでは上のクラスのクルマが売れなくなってしまうのではないかと心配してしまうぐらい、新型N-BOXの走りは「軽離れ」していた。(森口将之)
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