欧州でガソリン車禁止の連鎖、電気自動車で世界一を狙う日産の見方は

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2019年07月23日 12:32  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
●決算説明会で相次いだ電動化に関する質問
フランスと英国で、政府が内燃機関で走るクルマの販売を禁止するという方針を打ち出したとの報道を受けて、日産自動車の決算会見では、電動化に関して報道陣からの質問が相次いだ。電気自動車(EV)の販売で世界トップの日産は、政府主導で進む欧州の電動化をどう見ているのか。

○第1四半期の業績は

フランス政府と英国政府が、ディーゼルエンジンあるいはガソリンエンジンで走るクルマ、つまりは内燃機関だけで動く自動車の販売を2040年までに禁止するとの方針を相次いで打ち出したことが注目を集める中、日産は7月27日に2017年度第1四半期の決算発表を行った。

日産の第1四半期決算について触れておくと、売上高は前年同期比4%増加の2兆7604億円、営業利益は同12.8%減少の1533億円という業績だった。グローバル販売台数は同5%増の135万1000台。日本では新たな電動パワートレイン「e-POWER」が評判の「ノート」や、「高速道路同一車線自動運転技術」の「プロパイロット」を初めて搭載した「セレナ」といった車種が好調で、販売台数を同45.6%増の13万1000台に伸ばした。営業利益を押し下げた要因として大きかったのは、米国市場の鈍化による販売経費の増加だ。

日産では米国の全需を昨年度並みの1750万台程度で推移すると見積もっていたが、足元の状況では、今年度の全需は1600万台後半で着地しそうな情勢とのこと。需要の減少が販売競争の激化を招き、値引きの原資となる販売奨励金(インセンティブ)が増加した結果、米国で販売経費が増えている。減益の要因としては、原材料費の上昇も効いているという。

決算発表の質疑応答では、クルマの電動化で業界トップのポジションを狙う日産に質問が相次いだ。

●政府主導の電動化、流れは追い風
○EVで業界トップの日産アライアンス

「(欧州で政府主導の電動化が進む流れは、日産にとって)プラスになる」。決算説明会に登壇した日産の田川丈二常務執行役員は、電動化の流れに拍車がかかりそうな現状を追い風と感じているようだ。

日産はEVの「リーフ」を2010年12月に発売し、これまでに累計20万台以上を販売してきた実績がある。仏ルノーの「ゾエ」と三菱自動車の「i-MiEV」を合わせると、アライアンス全体でのEV販売台数は累計48万台を超えるという。これは業界トップの数字だ。日産の西川廣人社長は先頃、株主総会で「EVでリーダーシップをとる」と発言。業界トップの地位を今後も維持していくことに意欲を示していた。

○EVへの不安払拭に期待、価格競争力も向上へ

欧州で政府主導の電動化が進むことは、欧州に本拠を置く自動車メーカーのEV戦略にはプラスになっても、日本メーカーに良い影響はもたらさないのではと思ったのだが、日産の捉え方は違うようだ。

リーフで業界トップのEV販売を達成した日産だが、その台数は当初の見込みよりも少ないという。顧客がEVを買い控える要因として、田川常務は「航続距離」「コスト」「充電インフラ」への不安があると分析。こういった不安が、欧州でクルマの電動化に向けた動きが活発になり、顧客のEVに対する印象が変化することで、払拭される可能性があるというのが田川常務の考えだ。

欧州で電動化の流れが加速すれば、多くのメーカーがEVを含む車両の開発に注力するようになる。そうすれば、サプライヤーを含む全体的なコストが下がって価格競争力が上がるので、EVの販売も「どこかの段階で加速する」と田川常務は予想する。しかし、この流れは競争の激化を意味するので、田川常務も「本当の勝負はこれから」と気を引き締めていた。

これから始まる本当の勝負に向けて、日産が期待をかけるのが9月に発表予定の次期リーフだ。新たなリーフは航続距離が伸びて、「プロパイロット」も搭載となる。発表に先立ち、日産がさまざまな情報を小出しにしているところを見ても、同社が次期リーフにかける期待は大きいようだ。(藤田真吾)
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