スバル「アイサイト」に新機能、高速道は“おまかせ”で走行可能に?

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2019年07月23日 12:42  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
●新機能を「レヴォーグ」と「WRX S4」に搭載
「ぶつからないクルマ?」のキャッチコピーで脚光を浴びたスバルの運転支援システム「アイサイト」。ステレオカメラで前方の状況を認識し、プリクラッシュブレーキで衝突を回避する安全装備としての機能が有名だが、このシステムは高速道路の運転支援でも力を発揮する。この夏に進化するアイサイトを実際に試してみると、それはほとんど自動運転のような乗り心地だった。

○人間の眼のように前方を認識

アイサイトは車両の前方、具体的にはドライバーから見てルームミラーの後部あたりに付いているステレオカメラで前方の状況を認識し、その情報をもとに車両を制御して衝突や車線の逸脱を回避するスバルの独自技術。2010年5月発売の「レガシィ」で初登場し、これまでにバージョン3(ver.3)まで進化を遂げている。

人間の“眼”のように2つのカメラを使うアイサイトは、対象の形状や対象との距離を把握するのに優れる。このカメラで得た情報を、人間で言えば“頭脳”にあたるソフトウェアで処理し、ブレーキ、アクセル、ハンドルといったクルマの各ユニットを“手足”のように操る。

スバルは現行の「アイサイトver.3」を大幅に進化させ、新機能「ツーリングアシスト」を搭載する。この新型アイサイトは、2017年の夏に発売する「レヴォーグ」および「WRX S4」の全車に標準装備する。新型アイサイトの進化ぶりを説明すべく、スバルは6月15日、報道陣を招いて試乗会を開催した。

●新機能で何が可能となったのか
○ついていく技術が進化

ツーリングアシストとは、渋滞時を含む高速道路の全車速域でアクセル、ブレーキ、ステアリングの操作を自動制御し、ドライバーの負荷を軽減する機能のこと。もともと、アイサイトver3は「ぶつからない技術」、「(高速道路で)ついていく技術」、「はみ出さない技術」、「飛び出さない技術」、「注意してくれる技術」の5つの機能を備えているが、ツーリングアシストは「ついていく技術」を強化する新機能だ。

これまでのアイサイトでも、先行車を認識してブレーキとアクセルを自動制御できたし、ステアリングについても一定速度以上であれば車線中央を自動でキープできたわけだが、「ツーリングアシスト」の搭載により、具体的には何が変わるのか。

まず、従来のアイサイトver.3では時速60キロ以上でしか使えなかった「車線中央維持」機能が、新型では「時速0キロ以上」、つまりは全ての速度域で使えるようになる。更に、車線が見づらい状況でも先行車を認識し、その軌跡に合わせてハンドルを操作する「先行車追従操舵」という機能も追加となった。

○渋滞時でも途切れず運転支援

高速道路で渋滞に巻き込まれると、前にクルマが詰まってきて、車線が認識しづらくなる。その時に、先行車を認識してステアリングを操作する必要が出てくる。新型アイサイトでは、こういうシーンに自動制御で対応できる。ちなみに、先行車が分岐や出口などで走行レーンから抜けていく場合でも、アイサイトは先行車の横方向のスピードを検知して状況を判断するため、先行車を追従して望まぬ方向に進んでしまうという事態は発生しないそうだ。

機能の追加はソフトウェアの更新により実現したもので、カメラやコンピューターといったハードウェアの部分に変更はない。ちなみにスバルでは、今回の進化でアイサイトが「ver.4」にステップアップしたとは表現せず、あくまで「ver.3」の機能拡充だとしている。

●どんなシーンで使えるのか
○実際の走行シーンで考える

実際に高速道路を走っていると仮定して、新型アイサイトにより可能になることを考えてみたい。まず、高い速度域で順調に走行している高速巡航時は、先行車がいなければ設定速度を守って車線中央付近を走行し、前にクルマがいれば設定した車間距離を守って追従する。

次に渋滞している場合だが、そんな時でもアイサイトは区画線と先行車両の両方を認識しているので、これらの情報を組み合わせてハンドル制御を行う。ノロノロ運転にも対応するし、先行車が止まれば自車も止まる。3秒以内に先行車が発進すれば、自車はアクセルを踏むなどの操作なしで自動的に発進し、また先行車を追従し始める。ただし、事故渋滞などで車線変更が必要になった場合は、自分で操作をする必要がある。

前のクルマが大型トラックで区画線が見えない場合や、そもそも区画線が消えてしまっているような場合であれば、アイサイトは先行車両を認識し、その軌跡をなぞるハンドル操作を自動で行ってくれる。

現行のアイサイトver.3でも高速道路での運転支援機能は使えるわけだが、スバルの技術者の話によると、現行システムでは、対応できないシーンに差し掛かり、運転支援が終了してしまうケースが多いというユーザーからの声があったという。その点、ツーリングアシストが追加になれば、アイサイトが使える場面は確実に広がる。運転支援システムは使えてこその機能だと思うが、今回の進化はアイサイトの作動率を高めることにもつながりそうだ。

○乗ってみて思ったこと

これは試乗してみての感想なのだが、新型アイサイトを搭載したクルマであれば、おそらく高速道路は、入る時と出る時だけ自分で操作すれば、あとはほとんどの場面でクルマに運転を任せられそうな印象を受けた。

ハンドルには手を置いておく必要があったが、ペダルの操作も基本的には不要で、車線の中央をキープするための細かいハンドル操作もいらなかった。今回の試乗は、普通に高速道路を走る時と比べればかなり楽だったといえる。この機能をスバルは「自動運転」と呼んでいないが、乗っているクルマが自動で加減速し、ハンドルの操作まで行ってくれる感覚は、自動運転そのもののような気がした。

●スバル車にとって、アイサイトの進化が意味するもの
○リアルワールドで使える技術であること

高速道路において、先行車を追従してクルマの自動制御を行うシステムは「アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)」と呼ばれ、日産自動車が「セレナ」と「エクストレイル」に搭載している「プロパイロット」が有名だし、欧州勢を含めた複数のメーカーにも用意がある。スバルはどこで差別化を図るのだろうか。同社が試乗会の説明で強調したのは、「リアルワールドで使える」ことと「(アイサイトが行う自動制御は)運転が上手い」ということだった。

いくら新規技術を搭載してあったところで、実際に使えなかったり、使えたとしても作動率が低かったりしたのでは恩恵に乏しい。スバルでは、アイサイトの機能をカタログ上で終わらせず、現実世界で実際に使ってもらえるものとすべく、渋滞などのケースでもシステムが途切れないように「ついていく技術」を進化させた。

運転が上手いとは、クルマ側が行う自動制御の精度が高いということだ。他のメーカーの機能を試したことがないので判断できないのだが、今回の試乗会で乗った新型レヴォーグのプロトタイプについていえば、自動制御の加速、減速、ステアリングはスムーズで、体が急に前後左右に揺さぶられるようなシーンもなかった。

○これから全車標準装備へ

新型アイサイトは今夏発売のレヴォーグおよびWRX S4に全車標準装備し、その後はスバルの全車種で標準装備化を進めていくという。同社では「先進運転支援・安全装備は普及してこそ意味がある」との考えから、価格も低めに設定している。レヴォーグおよびWRX S4では、アイサイトの進化を含め複数の仕様を充実させるが、車両本体価格は現行モデル比で数万円程度の上昇に抑えるとのことだ。

スバルが昨年10月に発売した「インプレッサ」と、今年5月に発売したSUV「XV」はアイサイトver.3に対応している。スバルによると、ツーリングアシスト機能の追加はソフトウェアの更新で可能とのことだったので、インプレッサなどの既存車種でも夏以降は新機能が追加になるのかと思ったのだが、このような変更には国の認可が必要だそうで、すぐに対応するのは難しいという。

インプレッサとXVを最近購入した人には少し残念かもしれないが、これらの車種では次のマイナーチェンジでアイサイトの進化が見られるだろう。レヴォーグおよびWRX S4でツーリングアシストが良い評判を獲得すれば、これからモデルチェンジを迎えるスバル車にとって、アイサイトの進化が大きなアピールポイントになるはずだ。(藤田真吾)
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