「CX-8」発表のマツダ、クロスオーバーSUV攻勢で成長軌道回帰なるか

0

2019年07月23日 12:52  マイナビニュース

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
●ライバル対抗へSUV拡販
連休前に発表となったマツダの決算。今期連結業績見通しにおける純利益は、3期ぶりの増益となる1000億円(前期比7%増)を予想した。販売はクロスオーバーSUV(多目的スポーツ車)の主力である新型「CX-5」のグローバル展開を中心に、世界販売で自身の記録更新となる160万台を狙う。

○CXシリーズを拡充

マツダは現在、中期経営計画「構造改革ステージ2」を進める中で、同社のセールスポイントとなった「スカイアクティブ技術(SKYACTIV TECHNOGY)」の次世代商品群の開発に取り組んでいる。内燃機関の技術進化と合わせて、グローバルでの環境規制への対応や安全なクルマ社会の実現に向け、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(EV)といったクルマの電動化や、安全技術の開発(自動運転支援)を2019年〜2020年に加速させる計画だ。

しかし、マツダのスカイアクティブ次世代商品群が投入されるのは来期終盤以降であり、当面は乗用車をベースに乗り心地を重視した、マツダのクロスオーバーSUVブランド「CX」を冠した車種の拡大で攻勢をかける。

この流れでマツダは、新型CX-5をグローバル展開し、2017年後半には北米でクリーンディーゼルモデルを投入する。また、日本ではディーゼル専用車だった「CX-3」にガソリンモデルを追加。さらに3列シートの新型「CX-8」をまず日本から投入して、ミニバンからの転換を図ることにしている。

○世界的に人気のSUV、販売比率を向上へ

世界の乗用車市場の潮流は、このSUVにある。米国市場でも最近の人気は大型SUVとなっている。マツダとしてもグローバル販売の6割を稼ぐ米国で新型CX-5を今期初めから投入しているし、昨年から販売している大型SUV「CX-9」も、今期は通年で貢献することになる。

日本車メーカーとしては中堅クラスで、マツダのライバル的な存在であるスバルは、北米依存がマツダ以上に高いがSUVで先行しており、スバル車のグローバル販売に占めるSUV比率は70%を超える。マツダは前期で39%だったSUV比率を今期は45%程度に引き上げる方針で、スバルを追いかけることになる。

クロスオーバーSUVの車種を拡充するマツダ。車種を絞ったスバルとは異なる方向でもあり、今後の動向が注目される。

●マツダの為替感応度に課題
○販売で過去最高も目立つ減益幅

マツダの2017年3月期の決算は、グローバル販売台数が対前期比2%増の155万9000台と過去最高となったものの、売上高は3兆2144億円(前期比6%減)、営業利益は1257億円(同45%減)、純利益は938億円(30%減)の減収減益となった。

特に営業利益、純利益の大幅減益が目立つ。これはひとえに、為替の振れによる業績への影響度が高いことからくるものだ。マツダの輸出比率は日本の自動車メーカーの中でも突出しており、現状でも約8割となっている。

必然的に、前期は円高による為替差損が損益に大きく影響した。マツダの前期業績での為替レートは、USドルで108円(前々期は120円)、ユーロで119円(同133円)。ドルでは12円、ユーロでは14円の円高となった。

これにより、営業利益段階での為替差損分は、USドル185億円、ユーロ261億円、英ポンド198億円、豪ドル189億円、カナダドル141億円、その他53億円の計1027億円と、各国通貨に対する円高分が営業利益の減益分1011億円を上回るほど。マツダにとって、前期の円高は大きな痛手となったのだ。

もちろん、マツダはこの間、2014年にメキシコ工場を稼働させ、2015年にはタイにエンジン工場を新設して車両、エンジン、トランスミッションの一貫生産体制を確立するなど、海外現地生産体制の拡充を進めてきてもいる。

○中国・アセアンに活路

しかし、マツダは北米以外も欧州などで販売基盤があり、なかなか高い輸出比率から抜けきれない状況にある。マツダはこのため、中国とアセアン地域の強化に乗り出している。

中国とタイに生産拠点があり、中国では2016年6月から「CX-4」を現地生産に切り替えてきている。また、2016年秋に「ASEAN事業室」を新設し、今期は現地生産を中心にタイでの販売を19%増やす計画だ。また、マレーシア、ベトナムなどの販売網を拡大し、中期的にはアセアンの販売を5割増とする計画を立てている。

こうして、北米依存の収益構造、為替感応度の課題を段階的にクリアーしていく構えだ。

●注目される次期中計
○復活を果たしたマツダの今後

マツダが長年の米フォードとの資本提携を脱し、1990年代の苦境から立ち直って、クルマを構成する諸要素すべてを刷新する「スカイアクティブ技術」と並行し、生産分野の「モノづくり革新」をスタートさせたのが2006年あたり。内燃機関の進化に向け、モデルベース開発力に独自の磨きをかけることにより、2012年から2015年にかけて現行の新世代商品群を市場に投入してきた。

一方で、新デザインテーマ「魂動(こどう)」をマツダの日本車デザインブランドとして形成するなど、この間の流れはマツダ復活への道のりだった。

しかし、前期の円高は大幅減益の要因となり、為替変動の影響はいまだに大きいものがある。小飼雅道社長は、今期の為替レートを対ドル108円と想定し、グローバル販売を160万台に乗せて3期ぶりの増益を目指すプランを発表した。

○着実なグローバル台数成長とブランド価値向上がカギ

一方で、今の中期経営計画の最終年度である2019年3月期の売上高営業利益率目標を「7%以上」から「5%以上」に下方修正している。グローバル販売を年間5万台ずつ増やす計画とするものの、為替の前提を1ドル=120円から108円に変更したことによるものだ。小飼社長は「着実な台数成長とマツダブランド価値向上」を今の中計のテーマに設定している。

その意味では、次の中期経営計画でマツダは真価を問われることになる。今秋の東京モーターショーでは、スカイアクティブの次世代ガソリンエンジン技術と魂動デザインを盛り込んだ“次世代VISIONモデル”が公表されるだろう。

電動車や自動運転車で、マツダは独自の方向性を示せるのか。包括業務提携を結んでいるトヨタ自動車との協力関係は深まるのか。似て非なるスバルとの違いは明確となるのか。このあたりを念頭に置きつつ、東京モーターショー以降のマツダの動きに注目したい。(佃義夫)
    ニュース設定