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参院選は民主主義を再生する機会になったか?「ポピュリズム元年」に民主主義のためにできること

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2019年07月24日 09:00  HARBOR BUSINESS Online

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写真pixtaneydt / PIXTA(ピクスタ)
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Contents1 投票率を高める行為は反政権的2 低投票率が高めるポピュリズムの影響力3 政党要件を獲得した2つの「ポピュリズム勢力」4 ポピュリズムを民主主義の活力にするための「責任勢力」5 立憲民主党と共産党、公明党が握る「カギ」6 民主主義の発展を望む市民にとっても正念場

◆投票率を高める行為は反政権的

 7月21日投開票の参議院選挙は、48.8%という記録的な低投票率となりました。そこで、過去30年あまりの参院選の投票率を振り返ってみましょう。

・1989年 65.02% 前年にリクルート事件が発覚。社会党が躍進し、参院で与野党逆転。93年の政権交代の布石になった。

・1992年 50.72% 直前に成立したPKO法が争点。PKO法への姿勢をめぐり、野党間で対立し、社会党退潮のきっかけになった。

・1995年 44.52% 自社さ政権での選挙。新進党が伸びた一方、社会党が大幅に減少。自民党はふみとどまり、反転のきっかけになった。

・1998年 58.84% 堅調だった自民党への支持が、所得税の恒久減税に消極的な橋本首相発言で失われ、民主党と共産党が躍進。

・2001年 56.44% 小泉政権での選挙。自民党の議席が大幅に増加し、連立相手の公明党と合わせ、過半数を維持。

・2004年 56.57% 民主党が50議席を獲得し、自民党の49議席を抜いた。その後のねじれ国会、政権交代の基盤になった。

・2007年 58.64% 安倍政権での不祥事続発を受け、民主党が60議席を獲得して躍進。参院で与野党が逆転して、ねじれ国会に。

・2010年 57.92% 民主政権での選挙。堅調だった民主党への支持が、消費増税を示唆する菅首相発言で失われ、与党の議席減。

・2013年 52.61% 第二次安倍政権での最初の参院選。自民が34議席から65議席に躍進した一方、民主が44議席を17議席に減らす。

・2016年 54.70% 自民が50議席を56議席に増加させた一方、民主後継の民進が45議席を32議席に減らすも、退潮の勢いを弱める。

 つまり、30年前の89年を最後に、参院選では有権者の半分程度しか、投票しない状態が続いています。ただ、投票率55%を境に、それよりも投票率が上がると、政治を変える結果となり、投票率が下がると、政治を現状維持させる結果になりやすいことが分かります。なお、現状維持は必ずしも自民党と紐づけられるとは限らず、01年のように「自民党をぶっ壊す」と訴えた小泉政権が、支持を集めた例もあります。

 しかし、近年は、参院選のみならず、政権選択を迫る衆院選の投票率も低調傾向です。60%前後で推移してきた90年代、00年代に対し、14年の衆院選は52.66%、17年は53.68%と、参院選から見ても高いとはいえない投票率にとどまっています。

 今や、有権者の2人に1人しか、投票しない社会になってしまったのです。その状態は、安倍政権を強化する方向で、機能しています。なぜならば、確実に投票してくれる政権支持者の一票を相対的に強めるからです。

 有権者の半分しか投票しない社会とは、投票率を高める行為、それ自体が政権の脅威となります。政治や選挙を積極的に報道することは、それが政権の「提灯記事」であっても、反政権的なのです。よって、安倍首相が掲げた「政治の安定」という争点は、まさに記録的な低投票率によって「信任」されたことになります。

◆低投票率が高めるポピュリズムの影響力

 2019年の参院選では、48.80%の投票率でした。結果を一言で表現すれば「日本ポピュリズム元年」となります。

 ポピュリズムとは、短期的・直接的な利益分配を訴えることで、人々の支持を集める政治手法です。何らかの敵を設定し、そこから利益を奪って分配する主張も、含まれます。本来の意味は、政府や資本の権力強化に対する「一般民衆の反感や猜疑心を醸し出す思想的潮流」(『現代政治学小辞典』有斐閣)となります。

 特徴は、主張の根拠や整合性に対し、主張者も支持者もほとんど関心を払わないことにあります。そのため、論理的な矛盾が生じたり、カルト的な理論に飛びついたりしますが、そこを批判されても、平気なのです。人々の心にある漠然とした反感を煽り、自らの支持に結びつけることを重視するからで、主張の明快さと勢いを重視します。むしろ、論理性や長期的な視点は嫌われます。

 現在の日本政治で、最初の本格的なポピュリズム勢力は、10年に結成された維新です。維新の「大阪都構想」がどのように地域経済を発展させ、住民の生活を向上させるか、行政を効率化させるか、整合的に説明するのは困難です。実際、論理と根拠に基づく批判が繰り返されています。それでも、維新は、大阪府民から広く支持されています。地域ポピュリズムと言えるでしょう。

 次の本格的なポピュリズム勢力は、12年に安倍総裁となってからの自民党です。「改憲」を最終的な目標に掲げ、その地ならしとして異次元金融緩和・財政出動・規制緩和を「3本の矢」とする経済政策(アベノミクス)を展開しています。ところが、肝心の改憲の内容は二転三転し、改憲そのものが事実上の目標になっています。アベノミクスも、リーマンショック後の国際的な経済環境の回復や人口減少に伴う労働力減少に助けられ、日銀と年金基金による株爆買いで株価を高め、実体経済の改善にはつながっていません。

 自民党のポピュリズム政党化は、党内の非ポピュリズム派を制することでも進んでいます。過去3回の総裁選は、いずれも安倍氏が石破茂氏に勝利し、党内基盤を盤石にしてきました。石破氏は、地方創生相として、全国の自治体に長期人口予測を立てさせ、データに基づく論理的な政策を立てさせようと、ポピュリズムとは真逆の政策を実施しましたが、後に骨抜きにされてしまいました。

◆政党要件を獲得した2つの「ポピュリズム勢力」

 そして、19年の参院選では、安倍首相の自民党が改憲を訴えて勢力を微減にとどめ、維新が関東に勢力を拡大したことに加え、新たな2つのポピュリズム勢力が政党要件を獲得しました。まさに「日本ポピュリズム元年」といえます。

 2議席を獲得した「れいわ新選組」は、消費税の廃止と異次元の財政出動を訴えて、熱烈な支持を集めました。それらの財源は、高額所得者や企業への増税でとうてい賄えるレベルでなく、国債のさらなる大量発行で賄うとしています。通貨の信用崩壊による国民生活の窮乏リスクを恐れる既存政党にはできない独特の主張で、背景には「現代貨幣論(MMT: Modern Money Theory)」という、新たな経済理論があります。なおMMTについては、結城剛志さんの解説記事をご覧ください。他にも、火力発電の推進を訴えるなど、気候変動政策にも消極的です。短期的・直接的な利益分配を主張する点で、典型的なポピュリズム勢力といえるでしょう。

 選挙後、立憲民主党や国民民主党、日本共産党などの既存野党は、れいわに対して好意的な対応を表明しており、既存野党のポピュリズム化が進むのか、注目されます。

 1議席を獲得した「NHKから国民を守る党」は、NHKの受信料を払わない権利を訴えて、静かな支持を集めました。かつては、集金人が定期的に訪問して、公共料金を徴収するのが一般的でした。ただ、多くの公共料金が口座からの引落しに変わった今、NHKの集金人が相対的に残っています。その集金人に対する素朴な反感を支持に結びつける政治手法です。NHKの受信料の他は、多数政党に従うとしている点で、支持を集めること自体を目的にしている勢力といえるでしょう。

 こうした政治のポピュリズム化は、低投票率になるほど、効果を発揮します。そうした主張を先鋭化させるほど、熱心な支持者を惹きつけ、票を確保できるからです。投票率が下がれば下がるほど、政党・政治家にとって魅力的に映ります。

 典型的なのは、安倍政権による韓国への貿易規制の強化です。これまでならば、国内産業に悪影響を及ぼす政策を、選挙中に実施することはありませんでした。支持を失うからです。ですが、政権は、韓国に対する強硬姿勢こそが、支持を強めることになると考えたのです。政権が国益に反することを平気で行えるのは、韓国に対する漠然とした反感を利用するためです。まさに、ポピュリズムです。

◆ポピュリズムを民主主義の活力にするための「責任勢力」

 ポピュリズムが民主主義を深化させるか否かは、極めて論争的なアジェンダです。忘れられがちな少数派の意見を政治に注入し、民主主義に活力を取り戻すという肯定的な評価と同時に、熟慮や合意形成を政治から遠ざけ、英雄主義的な扇動政治によって民主主義を破壊するという否定的な評価が存在します。ただ、少なくとも、何らかの社会の病理がポピュリズムとなって表れているとはいえます。

 重要なことは、日本でポピュリズムが台頭している原因を考え、その原因を解決することです。筆者は、その原因について、経済成長と人口増加を前提としてきた社会システムの行き詰まりと考えています。それが、人々にしわ寄せされ、生きづらさや漠然とした不安につながっているのです。詳しくは、以前の寄稿記事「安倍政権とは何か?そして何を目指すのか?有権者に突きつけられる選択肢」で論じていますので、ご覧ください。

 また、長期的な利益の確保や本質的な課題の解決を担う「責任勢力」の存在も重要になります。ポピュリズムは、現実で失敗したとたん、雲散霧消します。そのため、ポピュリズム勢力が、後始末を担うことはありません。論理的な政策でポピュリズムの弊害を片づける責任勢力がしっかり存在してこそ、ポピュリズムは民主主義の活力となるのです。

 自民党がポピュリズム化している故に、責任勢力を担えるのは、与党だと公明党、野党だと立憲民主党と共産党になります。かつては、自民党の保守本流がその役割を担っていましたが、今や絶滅危惧種になっています。

◆立憲民主党と共産党、公明党が握る「カギ」

 創価学会を支持母体にする公明党には、ポピュリズムになびく必要がありません。創価学会は、熱心な支持者集団であり、平和と誠実さを重んじる宗教団体です。公明党がその理念に忠実で、安倍政権に対して諌言できる勇気を持ち続ければ、ポピュリズム化した安倍政権・自民党の暴走を防げるかも知れません。ただ、議席数の差からすれば、ブレーキ役が精一杯で、それもズルズルと引きずられながらになるでしょう。

 責任勢力としての公明党の課題は、政権と自民党に対する諌言力の向上です。改憲という国民生活の改善と無関係なテーマに注力するのを追認するのでなく、厳しく注文をつけて、経済や福祉、社会保障などのテーマに政権と自民党の目を向けさせる必要があります。

 立憲民主党は、結党の経緯から、ポピュリズムに批判的な文化を有しています。ポピュリズム的だった希望の党から排除された枝野幸男代表が、市民の支持を受けて立ち上げたからです。『枝野幸男、魂の3時間大演説』(扶桑社)でも明らかなように、やみ雲な支持を狙った言動や政策を避けています。ただ、市民の声で成立したからこそ、党内外からのポピュリズム化への圧力に抗せるのか、ポイントになります。

 責任勢力としての立憲民主党の課題は、民主的な党運営の確立です。選挙での候補者選定を含め、よりオープンで透明な運営手法を確立することにより、かつての主要政党のように中間団体(自治会や業界団体、宗教団体、労組など)を通じて民意を集約するのでなく、多様な民意を直接かつ丁寧に集約し、民意の取りこぼしを防いでいく必要があります。そのためには、党運営を担っている国会議員や地方議員の意識変革も必要になるでしょう。

 共産党は、学習会と議論を重ねる党の運営手法と思想性の強さによって、ポピュリズムへの耐性を有しています。近年は、正論を追求する孤高の野党から、現実と格闘することも辞さない社会民主主義政党に変化しつつあります。共産党が政権に参画すれば、ほとんどの政党が政権与党の経験を有することになり、現実の制約を踏まえた効果的な政策議論が深化していくと期待されます。

 責任勢力としての共産党の課題は、他の政党との妥協に対するポピュリズム勢力からの批判に対し、現場の党員たちが耐えられるかどうかです。かつての孤高の野党の記憶がまだ新しいなか、新たにその位置を占めるポピュリズム勢力が出現した場合、足元から崩れていくおそれがあります。共産党幹部のリーダーシップが重要になるでしょう。

◆民主主義の発展を望む市民にとっても正念場

 そして、民主主義の発展を望む市民にとっても、ポピュリズムの台頭は正念場になります。これまでの多くの仲間や支援者が、ポピュリズム勢力になびくなか、政党に政策提言し、候補者人材を供給していく必要があります。批判を浴びながらの苦悩の道になる可能性も、覚悟しなければなりません。

 次の政権交代で、野党勢力が政権運営に失敗した場合、おそらく数十年単位で、日本の民主主義は停滞するでしょう。立憲民主党と共産党、市民連合は、望むと望まざるとにかかわらず、その責任を負っています。

 公明党を含めた3党と市民連合が、そこを改めて覚悟できれば、ポピュリズムは民主主義の活力となり、この参院選が健全な民主主義を再生する機会になったと、後に評価されることでしょう。

【田中信一郎】

たなかしんいちろう●千葉商科大学准教授、博士(政治学)。著書に『国会質問制度の研究〜質問主意書1890-2007』(日本出版ネットワーク)。また、『緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説 「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』(扶桑社)では法政大の上西充子教授とともに解説を寄せている。国会・行政に関する解説をわかりやすい言葉でツイートしている。Twitter ID/@TanakaShinsyu

このニュースに関するつぶやき

  • 「増税しなくても財源はある!」とルーピーが言って政権簒奪した2009年がポピュリズム元年 今は野党の嘘が完全に信用を失った2周目
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  • 日本でも、ミンス政権というポピュリズムが横行したが、日本国民は引きずり降ろした。南鮮ポピュリズム政権は、国民がアホなので破綻一直線w
    • イイネ!33
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