【智弁和歌山】中谷監督が考える理想のリーダー、キャプテン像

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2019年07月24日 12:13  ベースボールキング

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97年夏の甲子園で、チームが全国制覇を果たした際はキャプテンとしてチームをまとめた中谷仁監督。中谷監督は、小学校、中学校、そして高校の全日本でもキャプテンを務め、常にチームの先頭に立ってきた。その一方で捕手として投手陣もけん引。あらゆる角度からチームを見続けてきた中谷監督が考える理想のリーダー、キャプテンとは?



■キャプテンは“気づく目”を持っていなければいけない
中谷監督は、高校野球のキャプテンは難しいことは考える必要はないと断言する。高校生の場合、キャプテンをやりながら徐々に人として成長していける子が多いからだ。
「リーダーとして理想的なのは、その場その場の状況に応じてチームの指標となるような背中を見せられることですね。あとは、変化に気づく力があること。変化に気づかずに鈍感力を押し切って突き進んでいく、というケースもありますが、それは時に応じてプラスやマイナスに出たりします。それでもチームが何を求めているのかを把握できていないといけないし、何をしないといけないかを考えて動けるかが大事です。そのためには“気づく目”は持っていないといけないと思います」。

そんな中でも注視しているのは“大人の目”を持てるかどうか。例えば指導者が不在で選手だけでいる時に、高校生だとどうしても選手だけで“馴れ合い”の空気になりがちだ。それでも気が緩まないよう、気がつくことがあれば大人のように叱咤できるかだ。
「ウチのチームは黒川(史陽)がキャプテンを務めていますが、自分がしっかりやらないと、と必死になって背負いすぎてる部分もありました。自分からミーティングをやって士気を高めたり、よくやってはくれています。ただ、どのキャプテンも完璧ではないですよ。それでも監督がこうやりたいのだから、自分はこういう準備をしないと、という考えは常に持つべきですね」。

中谷監督は高校時代、キャプテンとしてだけでなく、捕手としてチームの頭脳的な役割も担っていた。捕手は9人の中で唯一フィールド外にいるため外から試合を見ている。その役割を大いに生かし、普段から視野を広げてチームの動きを見ていた。当時、高嶋仁前監督がベンチで指示を送る中、高嶋監督はおそらくこう考えているだろうから自分はこれをやらないといけないと先を見据えながら行動していたという。その姿勢はのちにプロの世界に入ってからも生きる部分が多かった。



■キャプテンはプロ野球で言えばヘッドコーチ
最初に入団した阪神では野村克也氏、移籍した楽天では星野仙一氏、トライアウトを受けて入団した巨人では原辰徳氏と、球界を代表する監督の下でプレーした。
「こういう時に星野さんはこんなことをやるだろうなとか、野村さんならこうボヤキそうだなとか、今でも考えてしまうことがあるんですよ。自分は試合に出る機会が少なくてベンチでは監督の前に座ることが多かったので、監督とヘッドコーチの会話に聞き耳を立てていました。その中でも勉強になることは多かったですね」。

プロの世界でも自分の居る場での目配りを惜しまず続け、母校にコーチとして戻ってきた17年以降も、後輩となる選手らに常に周りを見ることの重要さを説いてきた。実際、「中谷監督に相手投手のクイックなどをしっかり見ておけと言われて、相手を読むことの大事さが分かりました」と話す選手もいる。
「キャプテンというのは、プロ野球でいうヘッドコーチのような役割だと思います。ピッチャーや内野手、外野手のカテゴリーにそれぞれリーダーがいるとして、監督の意見をキャプテンが間に入って聞いてそのリーダーに伝えて、情報を選手間にどんどん下ろしていく、という感じですかね。大きなものを動かす時、率先して引っ張るのがキャプテンで、周りから的確な指示をしてあげるのが監督の役目だと思うんです。そのキャプテンが、どれだけ大きな声を出して引っ張れるかでしょう」と話す。

高嶋監督の後を受け継いで就任した監督としての自己評価は「未熟ですね。まだまだです。今の自分は率先して体を動かして、キャプテンの上のキャプテンをやっているような感じです」と苦笑いを浮かべるが、監督であれキャプテンであれ、リーダーのあるべき明確な姿は「ちゃんとした答えはない」と中谷監督は言う。強いて挙げるとすれば、周囲を見渡せる観察力や鋭い嗅覚を持つことなのかもしれない。そういった感覚は、磨けば磨くほど野球界のみならず社会に出た時には必ず役に立つ時が来るはずだ。(取材・写真:沢井史)

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