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吉本興業は下請法違反? ギャラの認識で芸人と食い違い、書面のやりとりもなし

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2019年07月24日 14:51  弁護士ドットコム

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芸人の闇営業問題をめぐり、吉本興業が7月22日に開いた記者会見で、岡本昭彦社長が、芸人たちのギャラについて、「会社が9でタレントが1とか、そういうことは全くない」として、平均で「5:5から6:4」と明かしたことについて、芸人たちから反発の声があがっている。


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キートンさんはツイッターで、「てことは、私が海外に約1週間行ったあの仕事は、吉本は2万円で引き受けたのか! 優良企業。」と皮肉を語った。



佐藤ピリオド.さんもツイッターで「9:1じゃなく5:5?ほほう。品川で初単独やった時。445席即完して。グッズも完売して。ギャラ2000円だったなぁ。御茶ノ水男子2人で4000円。9割9部9厘:1厘の間違いでは。それを社員さんに抗議に言ったら仕事減らされて。いい思い出だなぁ。」と振り返っている。



吉本興業と所属芸人との間では、そもそも契約書が作成されていないことが、会社側の説明で明らかになっており、社長と芸人の感覚の隔たりを見る限り、全てがあいまいなまま、ギャラの不透明な決定や、芸人への説明不足が起きている可能性もある。



芸人のような個人事業主と、吉本興業のような親事業者との間では、下請法の適用も考えられるが、下請法の問題はないのだろうか。



●そもそも下請法の適用対象なのか

下請法の適用対象となるのは、資本金1000万円超とされている。しかし、芸人のマネジメントをしている吉本興業株式会社(事業内容としては、タレントマネジメント・エージェント、ソフト・テレビ・ラジオ番組・演芸・演劇の制作・配給・興行)の資本金は1000万円。そのまま当てはめると、下請法の適用対象外となる。



ただ、吉本興業の親会社である吉本興業ホールディングス株式会社の資本金は1億円となっている。ここでポイントなるのが、「トンネル会社規制」と呼ばれるルールだ。親会社が子会社を通じて、実質的な委託者になっている場合に、親会社(今回の場合、吉本興業ホールディングス)を下請法の適用対象とするものだ。



適用対象の条件として、まず、親会社が、直接に下請事業者に委託したのであれば、下請法の適用を受けるものであることが大前提だ。そのうえで、親会社が子会社を実質的に支配し、子会社が、親会社から受けた委託の50%以上を下請事業者に再委託しているなどの場合に、親会社が下請法の適用対象となる。



では、吉本興業ホールディングスは適用対象となるのか。公正取引委員会の企業取引課は、「個別企業の具体的な話について、回答できない」としつつ、トンネル会社規制が適用されるかどうかは、「委託の内容や、やり方によって判断が分かれる」としている。



●下請法では、書面交付の義務が定められている

では、仮に下請法の適用対象となる場合、ギャラについて、書面でのやりとりがないと下請法違反になるのか。今井俊裕弁護士に聞いた。



「下請法3条では、親事業者が下請事業者に対して、内容や金額、支払期日、支払方法などを記載した書面を交付しなければならないとされており、違反した場合に、親事業者の代表者などが、50万円以下の罰金を科されます(下請法10条)。



結論からいうと、今回、下請法3条に違反するかどうかは、ただちには判断できません。番組を放映する放送局などと吉本興業との間の契約の種類や性質にもよるでしょう。



例えば、放送局から吉本興業が番組制作という役務を請け負って、その部分を芸人に委託して下請けに出した、というならば、下請法の適用もありえます。つまり、吉本興業が、番組制作会社、番組制作プロダクションと呼ばれるような法的な地位にある場合です。もちろん、下請法が定める他の要件、例えば親事業者としての資本金の額などの基準を満たした場合の話ですが。



しかし、放送局が作成した企画にしたがって、指名された所属芸人を番組に出演させることを引き受ける契約、となると下請法の適用がただちにあるかは考慮を要する問題です。



例えば米国で、芸能人のエージェント契約やマネージメント契約、などと呼ばれているような契約形態です。日本でも専属マネジメント契約や専属タレント契約などと呼ばれています。この場合ですと、下請法の適用はなく、契約書を作成してないからといって、ただちに法令に違反するわけではありません」



●取り分の割合や費用負担などを定めた契約書を作成すべき

では、専属マネジメント契約や専属タレント契約の場合、下請法の問題はないということか。



「芸能人もサラリーマンではなく、視聴率を気にしながら芸能活動する人気商売の個人事業者であり、放送局から受け取る収入の何%が自らの取り分になるのか、関心があって当然です。今回の一連の騒動で批判が噴出したように、取り分をめぐって、もめたり、信頼関係が壊れたりする場合もあるでしょう。



ですから、仮に下請法違反にならないような場合であったとしても、互いのために、取り分の割合やその他費用負担、あるいは番組の途中降板で損害が生じた場合の負担割合などについて、明確に契約書面を作成しておくべきです」




【取材協力弁護士】
今井 俊裕(いまい・としひろ)弁護士
1999年弁護士登録。労働(使用者側)、会社法、不動産関連事件の取扱い多数。具体的かつ戦略的な方針提示がモットー。行政における個人情報保護運営審議会、開発審査会の委員を歴任。
事務所名:今井法律事務所
事務所URL:http://www.imai-lawoffice.jp/index.html


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