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大阪桐蔭、履正社に大阪偕星が待った!指揮官はぼやくけど自信あり

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2019年07月24日 18:02  webスポルティーバ

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「1戦目、2戦目をコールドで勝って、選手の気持ちが緩んでいるといけないから、今日はバントをできる場面ではきっちり送っていきました。ホント、ちょっと目を離すとすぐに気持ちが緩みますからね……」

 7月23日に万博球場で行なわれた大阪大会4回戦の北野戦のあと、大阪偕星の山本拭覆擦)監督は6対1で勝利した試合を振り返った。4回戦突破で「ようやった!」と喜ぶわけにもいかないが、ひとまず安堵感を漂わせながら、にこやかにぼやきが続いた。

「たまに打たせたらダブルプレー……もうちょっと考えて打ってくれよって思いますよ。北野高校の投手は、ウチが先に点を取っても集中力が切れない。淡々とコースを突いてきたところを、ウチの選手は雑になって攻めあぐねてね。もっと頭を使わないと」

 選手から「ボス」と呼ばれている山本のぼやきは、彼らに対する期待の表れでもある。今年の選手たちもボスによってたっぷりと鍛え込まれてきた。

「ハートだよ、ハート。素直な心を持てよ!」

「いつまで言い訳するんだよ。言い訳の人生で終わるのか! 心を磨くんだよ、心を!」

「苦労しないで身につくことなんかないんだから。やるのか、やらんのか、どっちなんだ!」

 山本が見据えているのは、もちろん4年ぶり2度目の頂点だ。大阪大会の抽選後、グラウンドを訪れた時も「今年はチャンス。2度目が大事ですから」と熱っぽく語っていた。

 4年前は、春の大阪大会決勝で大阪桐蔭に敗北。だからこそ、”打倒・大阪桐蔭”に闘志を燃やしていた。練習中は常にグラウンド脇に大阪桐蔭の試合映像を流し、相手選手の動きがすべて頭に入るぐらい繰り返し見た。この執念が実り、夏は準々決勝で大阪桐蔭を破り、甲子園まで一気に駆け抜けた。

 現チームは、昨年秋の大阪大会準決勝で大阪桐蔭に1対7と敗れ、今年の春は5回戦で履正社にコールド負け。ただ、2試合とも結果ほどの力差は感じられず、山本も「次やれば」の期待を口にする。

「大阪桐蔭、履正社と公式戦で戦ったのはウチの大きな強み。今年の大阪は混戦と言われていますけど、結局、この2つが上がってきますよ。ほかに気になるチームはありますけど、やっぱり大阪桐蔭、履正社が上がってくると思うし、上がってきてほしい」

 山本がそう語るには、2つの理由がある。まずひとつ目はこれだ。

「コイツらは練習試合でも、強豪と言われるチームのほうがいい試合をするんです。だから、この2つと対戦するとなったら力を出せるはず」

 もうひとつの理由はこうだ。

「今年は多くのチームが、例年よりもチャンスだと思っているはず。でも、いつもどおり大阪桐蔭と履正社が上に勝ち上がってきたら、『今年もか……』となって、ほかのチームがあきらめてくれるんじゃないかと思って(笑)」

 昨年秋は大阪3位で近畿大会に出場したが、初戦で智辯和歌山にコールド負け。あと少しのところで結果を残しておらず、そのため夏の注目度もそれほど高くなかったが、選手個々の能力は大阪桐蔭、履正社の2強にも負けていない。

 まずは投手陣。万全であれば「関西ナンバーワンクラス」と山本が評する坪井悠太と、もともとは二塁手だったが地道な努力と成長を重ね、この夏「背番号1」を託された福田慈己の強力2枚看板。ともにストレートは140キロ台中盤をマークし、坪井はスライダーの精度も高い。

 一方の攻撃陣は、破壊力と手堅さを兼ね備え、大阪でも屈指の力を持つ。1年夏から経験を積んできた辻野昂太、松山侑生(ゆうき)、そして坪井の3人が中心。春はこの3人がクリーンアップに並んだが、この夏は1番・松山、3番・坪井、4番・辻野となっている。

 辻野は高校通算60本塁打超えの長距離砲で、松山は勝負強さが絶品の職人タイプ。3番の坪井も、ツボにくればスタンドインする力と広角に打ち合わせる技術を兼ね備えた強打者。北野戦でも2本のタイムリーを左右に打ち分けていた。

 大阪偕星の野球は、イメージから豪快さを連想しがちだが、じつは超堅実である。その基礎、基本の部分を絶対的な練習量で体にしみ込ませるのが、山本流の指導法である。なかでも6月の “追い込み練習”は、大会前の恒例となっている。

 メンバー十数名が、1番から順に140キロを超すマシンの球をバントする。空振りやファウルはもちろん、ホームベースから8メートル内に打球が止まらないと失敗とみなされ、全員でベースランニング(ときにはグラウンド1周)を行なう。ひとりでも失敗すればまた1からやり直しとなり、全員がノーミスでようやく終わりとなる。

 そんなプレッシャーのなかで鍛えこんだ技は数字にも表われ、4年前の大阪大会は7試合で34犠打。この夏もここまで3試合で12犠打。北野との試合でも松山、坪井が見事な送りバントを決めている。

 このノーミスバントに、今年からは全員ノーエラーの内野ノック、145キロのマシンの球に対して全員が外野フライを打たなければならない練習も加えられた。つまり、この3つをすべてクリアしなければ終わらないわけだ。山本は「今年からは終わりの時間を決めたので、4年前のようにエンドレスということはなくなりました。ウチも甘くなりましたよ」と豪快に笑ったが、練習が夜遅くまで続くことも珍しくない。

 今の時代、いろいろな声も出るが「人と同じことをしていて日本一になれるのか」と、山本の軸がぶれることはない。

 大会前、山本は「個々の力は4年前と比べて間違いなく上」と語っていたが、同時に「心が足りない。4年前のチームはハートがあった」とも言っていた。山本の言うハートとは、負けん気、反骨心、勝負根性、熱……の意味が込められている。4年前のメンバーはヤンチャな面々も交じり、互いにぶつかり合いながら湧き出るエネルギーがひとつに集約され、最後に巨大な爆発力を生んだ。

 この”ハート”は大阪偕星の肝の部分である。今年もメンバーはまじめに日々の練習に取り組んできたが、夏を前に山本の表情はくもっていた。

「坪井がね……」

 夏の大会のキーマンと言い続けてきた男のことが、常に引っかかっていたのだ。山本も坪井の潜在能力の高さは十分に認めているのだが、取り組みの甘さや心の弱さが気になっていた。

 昨年秋は股関節を痛め、今年の春は右ひじの故障とコンディションの不安が続き、その面で本領発揮といかない部分はあったが、山本はそれも含め「甘さ」と指摘。6月半ばには「福田の成長、チーム一丸の雰囲気も感じて、ようやく必死になってきましたが、夏に間に合うかどうか……」とも語っていた。

 迎えた夏、初戦は出場機会がなく、2戦目に3番・センターで出場となった。3戦目となる北野戦では先発のマウンドに上がり、この夏、初登板を果たした。しかし1回1/3、打者4人に投げたところで交代し、レフトに回った。一瞬、アクシデントかと思ったが、5回の守備ではレフトからホームにダイレクト返球で走者を刺殺。試合後、山本が「予定どおり。夏の初登板で、最近あまり投げていなかったので今日は軽く。ここからです」と言うように、コンディションに不安はないようだ。

 だとすれば、ここからどこまで状態が上がっていくのか。ひじの違和感から、しっかりと投げることができたのは5月に入ってから。夏前の練習試合でも数えるほどしか投げておらず、ぶっつけに近いかたちで夏を迎えている。とはいえ「坪井がきっちり投げられるか。この先はそこです」と言うように、坪井の出来にチームの命運がかかっていると言っても過言ではない。

 技術面と精神面の両方で最後の成長に期待を込めつつも、「まだ甘いんだよなぁ」とまたしても山本のぼやきは続いた。その姿を眺めていると、ひとりの選手のことを思い出した。

 4年前の主力で、現在は日本ハムでプレーしている姫野優也だ。当時の姫野は、坪井と同じく投打にたっぷりのスケール感を持ちながら、野球に集中しきれないところがあり、たびたび山本と衝突していた。一部の選手たちと距離ができた時期もあった。しかし最後に目覚め、徐々に山本、チームメイトから信頼を取り戻し、夏は投打でチームの大きな力となった。

 山本に姫野の話を向けると、こんな答えが返ってきた。

「たしかに、あのチームにとって姫野が最後のピースで、それが夏にはまった。ただ姫野は、春から夏に向かう段階で変化が見えていたけど、坪井はまだ見えてこない。感覚が新人類というか、何を考えているのかよくわからない(笑)。どこかでスイッチが入るのか、それともこのまま高校野球が終わるのか……」

 そんな坪井は初登板となった北野戦のあと、いつもの感じで記者たちの質問に答えていた。

「状態は戻ってきています。今日はちょっと(前日の雨の影響で)下が悪かったのもあったので……。ここからまだ上がっていく感覚はあります。秋のいい時に比べると、今日は20パーセントぐらいです。投げ込めていない不安もちょっとありますが、気にせず、これからも低めのコントロール重視でいきたい。やる気スイッチですか? 最後なんで、もちろん入っています。ここからしっかり活躍して、監督の期待に応えたい」

 この先、山本をうならせ、チームを救う場面はやってくるのか。はたして、大阪偕星にとっても最後のピースははまるのか……。

「あと4つ、ここからが勝負。最後は根性、執念。夏は能力よりハートですから。そこをウチの選手がどこまで持っているか。これだけやってきたんだから負けられないですよ」

 ボスの思いに導かれ、4年ぶりの頂点まで一気に駆け上がれば、大阪桐蔭、履正社と並び”3強時代”の幕開けの予感さえ漂う。大阪大会も残りわずか、いよいよ佳境を迎える。

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