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「成果を生み出すデータ分析組織」はここが違う リクルートのマネジメント術

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2019年07月25日 07:12  ITmedia NEWS

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 「これからはデータ活用の時代だ。我が社でもデータ分析の専門組織を立ち上げるぞ。早急に戦力化したいから、あとはよろしく頼む」



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 さすがに後半の丸投げは多くないと信じたいですが、上層部から同じようなことをいわれた経験がある人が増えているのではないでしょうか。



 AIやデータを活用するために新しくデータ分析組織を立ち上げてみても、ノウハウがない企業がすぐに成果を出すのは難しいでしょう。多くの企業がデータサイエンティストの獲得に躍起になっていますが、果たして優秀なデータサイエンティストがいれば、何もかもがうまくいくのでしょうか。



 データサイエンティストが1人いれば売り上げが増え、新商品がヒットし、さまざまな経営課題が解決すると考えている経営者は、さすがにいないでしょう。しかし、データ分析組織全体としてどのように成果を上げればよいかは、いまだに十分な議論がされていない印象です。



 1人のパワーを、どのように増大させるか。そのためにどのように組織を設計すれば良いのか。考えなければならない問題は尽きません。



 今回は、データ分析組織を束ねるリクルートテクノロジーズの石川信行シニアマネジャー(ITインテグレーション本部 データテクノロジーラボ部)に、「成果を生み出すデータ分析組織の作り方」を聞きました。



●事業部との伴走を重視 「期待値ギャップ」どう埋めるか



 石川さんが所属するデータテクノロジーラボ部は、先端技術を研究しながら実用的なプロダクトを開発したり、その技術を実際のWebサービスに役立てたりする、ビジネスサイド寄りのR&D(研究開発)組織です。最近は、機械学習のアルゴリズムなら強化学習やGAN(敵対的生成ネットワーク)、テクノロジー全般でいえばIoTなどに注目しているそうです。外部パートナーを含めると180人ほどの規模で、PoC(概念実証)からサービスへの実装まで一貫して行っています。



 石川さんはビジネス課題をどう解決するかを重視しており、データテクノロジーラボ部としてどれだけ売り上げ増加やコスト削減などに貢献できたかをシビアに見るように意識しているそうです。



 業務の進め方ですが、エンジニアから活用できそうな技術を事業部に提案することもあれば、事業部が相談に来るケースもあるといいます。リクルートには多様な事業があるので、ある部署の成功事例を見た他の部署から声が掛かることもあります。



 一般的に、事業部と技術部の間の期待値ギャップやコミュニケーション不足などがよく問題になりますが、それをどう解決しているのでしょうか。



●「丁寧な議論」を大切に



 石川さんは、事業部の期待値をコントロールするには「丁寧な議論が大切です」と強調します。「そもそも事業部がどのような課題に向き合っていて、それを改善すればどれくらいの効果が見込めるかを、最初の段階で一緒に考えていきます」(石川さん)



 また、技術に詳しくない人にも伝わるような分かりやすい説明を心がけているといいます。「論文に書いてあるこのアルゴリズムが課題解決に合致します、と言っても当然通じません」と石川さん。例えば、レコメンデーションシステムの実装を提案するならデモ版を作って実際に使ってもらうなど、動くものを会議に持っていくことも多いようです。



 動くものがないと、よく分からないまま物事が進んでしまうという良くないパターンに陥るそうです。「実はそういう課題じゃなくて、こういう課題を解決したいという風に議論を発展させるためには、動くものが必要なんです」(石川さん)



 石川さんは「エンジニアはプレゼンすることが苦手な人も多いので、そういうときは話すのが得意な人を連れていくのも手だと思います」と笑います。事業部側も新しい技術への目利きを求められるので、両者で歩み寄る姿勢も大事でしょう。



●「一人一人が考え、動く」 チーム作りの思想



 ビジネス課題の解決に重きを置く組織では、どのようなメンバーを採用し、チームを作っているのでしょうか。



 意外にも、新卒・中途ともに現時点でのデータサイエンスやコンピュータサイエンスの高度な知識は必要ないそうです。石川さん自身が農学部出身で、コンピュータサイエンスなどの専門知識は後から身に付くと考えているからです。



 答えがない中で多くの仮説を立てなければならない仕事なので、「ビジネス課題の解決に目を向け、自分で考えて動ける人」を集めることを意識しているそうです。



 「新しい技術を扱うため、マネジャーの僕ですら道筋が分からないことがあります。ただ、それは僕が分からないだけで、他の人から良いアイデアが出てくるかもしれません。僕1人で判断するとチーム全体が間違った方向に進んでしまう可能性があるため、現場の一人一人が判断し、動いていけるような場作りを意識しています」(石川さん)



 そうした場作りのために石川さんが心がけているのは、「ジャッジを早くすること」だそうです。「ちょっと来週まで待ってもらえませんか」と返事を先延ばしにすることはせず、スモールスタートで小さいPoCをたくさん回すことを重視しているといいます。実際に手を動かすことで何らかの結果は出せるので、どうせならその結果を基に次につなげたいと石川さんは考えています。泥臭い検証を続けるには、因果(原因と結果)を説明する能力も求められます。



●マネジャー不足と若手の育成について



 優秀な若手エンジニアを束ね、組織を力強く率いるマネジャーは、どの企業も不足しているように感じます。石川さんも若手の育成には課題を持っているようです。



 石川さんは、「マネジャーやリーダーには、今後はこういう技術がはやりそうだ、この事業にこの技術を当てるとヒットするのでは、といった目利きが必要です。現場で経験をつませ、能力を発揮させるスパイラルがなかなかうまく回せていないところもありますね」と話します。



 企業によっては社内でマネジメント研修をしている場合もありますが、石川さんは実務を通して広い視野を身につけてほしいと考えています。



 「それぞれの得意不得意な点を見ながらタスクを振り分けていきますが、意図的にハードルの高い仕事や、責任を求められる仕事を担当させることもあります。サポート体制を整えた上で、若手に能力の限界を超える仕事をしてもらう。それが自信につながるので、その感覚をなるべく早く身に付けてもらいたいですね」(石川さん)



●取材後記



 取材の最後に、採用の面談も行うという石川さんに「今データサイエンティストの職に就きたいと考えている人たちは、何をすべきでしょうか」と尋ねると、次のような答えが返ってきました。



 「気になる会社があるなら、その会社が抱えていそうな課題を自分なりに考えて、目に見える形のデモを作って面接で見せてみましょう。自分の実力をアピールできます」



 簡単そうに聞こえますが、課題の発見からプロトタイプ開発までを行うのは、なかなか難しいものです。裏を返せば、面接官側もその内容やビジネスインパクトを正しく測る目利きが必要になるわけです。個人の採用も、組織作りの大切な要素です。こうした所からも組織作りの難しさが垣間見えるなと感じました。


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