阪神・近本光司、オールラウンダーの魅力〜ルーキーたちの中間通信簿〜

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2019年07月26日 19:01  ベースボールキング

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右越えに3点本塁打を放つ近本=甲子園
◆ 第4回:近本光司(阪神/ドラフト1位)

 阪神のドラ1ルーキー、近本光司が球宴明けに好ダッシュを見せている。直近のDeNA3連戦は1安打に終わったが、7月15日の中日戦から21日のヤクルト戦までの5試合で19打数9安打、実に5割近い打率で塁上を駆け回った。この間、4試合でマルチ安打、中でもヤクルト戦では20日にサヨナラの左犠飛で歓喜の主役になると、翌日も5回に逆転の7号3ランと中身も濃い。阪神の新人で2試合連続の決勝打は01年の藤本敦士以来18年ぶりの快記録となった。

 この勢いをもたらしたのは、もちろんあの快挙にある。地元・甲子園で行われたオールスターゲーム第2戦。「一番・中堅」で出場すると初回の先頭打者本塁打を皮切りに5打数5安打、中でも7回の左越え長打は三塁上でクロスプレーになるかと思われたが、中継が乱れて三塁打に。この瞬間、92年ヤクルト・古田敦也以来二人目となるサイクルヒット達成だ。強運と実力を併せ持っているからこその新MVP男の誕生となった。

 1メートル70センチ、72キロの小兵だが、決して非力ではない。俊足巧打の切り込み隊長だが以外にパンチ力もある。

 「野球の基本は強く振ること。当てるだけの打撃は僕に似合わない」とフルスイングの哲学を貫く。それでいて、場面状況に応じて「ここは引っ張り」「ここはセンター中心に打ち返す」と考えを整理して打席に臨めるのだから並みのルーキーではない。

 昨年のドラフトでは「外れ外れ1位」で虎の一員となった。藤原恭大(現ロッテ)、辰己涼介(現楽天)とクジを外した時にはファンからも大きなため息がもれたものだ。しかし、ここまでの働きを見れば、これ以上ない即戦力が残っていたと言える。


◆ 巻き返しに必要不可欠なピース

 キャンプでは、同じ社会人出身・木浪聖也の方が数字を残して評価も高かった。だが、実戦本番に入ると近本の勝負強さが際立っていく。4月末の時点で打率.327と首位打者をうかがう勢いで不動の一番打者の座をつかむ。5月には13試合連続安打をマークして、2001年赤星憲広が記録した球団新人記録を更新。この間に盗塁も量産して25日現在で20盗塁はリーグ3位で、この先の働き次第で十分に盗塁王も狙える。何より、チームにとって近年、固定できなかった俊足巧打の一番打者が誕生したことが大きい。

 「簡単に終わらないというのが近本の持ち味。チームの一つのピースとして、大きい働きをしてくれている」と、指揮官の矢野燿大も頼もしいルーキーの存在には二重丸の評価だ。

 チームはここのところ、AクラスとBクラスを行ったり来たり。首位の巨人からは大きく水をあけられている現状を考えれば、まずは3位以内を確保して、クライマックスシリーズに望みを託すのが重要となる。そのため、新外国人のY・ソラーテを緊急補強、故障で戦列を離れていた主砲・福留孝介も帰ってきた。斬り込み隊長の近本が塁上を賑わせば、得点力は今まで以上に上がってくるはずだ。

 走攻守、どれをとってもそつのないオールラウンダーの責任は、これまで以上に重くなる。昨年の都市対抗野球では大阪ガスの主力として大活躍、大会MVPにあたる橋戸賞に輝いた。東京ドームを熱狂させた男が甲子園でも主役の座を誓う。セ・リーグの新人王レースは、ヤクルトの村上宗隆やDeNAの上茶谷大河らがいるため簡単ではないが、3割に近い打率と盗塁王が加われば、ナンバーワン・ルーキーの称号も近づくはずだ。

<中間通信簿:90点>          

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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