松本人志がゴマカシに終始した『ワイドナ』の裏で、『サンジャポ』は友近出演、吉本興業と安倍政権の癒着・公金投入を批判

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2019年07月29日 15:10  リテラ

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リテラ

吉本興業問題を鋭く批判した『サンジャポ』(番組HPより)

 大崎洋会長・岡本昭彦社長と結託して吉本興業を牛耳っていることに批判が集まり始めた松本人志。昨日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ)で何を話すかと思って見ていたら、結局、言い訳とごまかしに終始した。



 先週は自分が岡本社長に会見をするよう提案したことをさんざん自慢していたのに、その会見がボロボロに終わった今週は「俺が記者会見強引にさせたみたいな空気になっているけど、我々が吉本行ったときは、もう決まってたんです。月曜日の会場も押さえてある状態だった。別に我々が無理に記者会見させたんじゃないですよ」などと、言動を一変。また、現体制を批判した加藤浩次と友近について「マスコミは僕と(加藤・友近で)VS関係をつくろうとしているが、2人の言ってることはまったく同じ気持ち」などと必死で取り繕いながら、一方で「ただ、ゴールが少し違いはあるので」と、相変わらず大崎体制の続行支持をほのめかした。



 若手芸人から会社への批判の声が上がっていることに対しても「いろいろ言っていいとは思う」と懐の広さをアピールしながら、「あとはタイミングかな、今は黙っておいたほうが」などと、結局はしゃべるなと恫喝。あげくは、「吉本興業が会社として膿を出し改善しなければ、僕が芸人全員連れて出ますわ」。自らの作り上げた大崎体制=松本忖度体制こそが“膿”の根源であるにもかかわらず、被害者面でそれも省みず、「芸人全員連れて」などと男気アピールで、問題の本質をごまかしてみせた。



 とまあ、とにかくその場しのぎとごまかしだらけだった松本と『ワイドナショー』だが、一方、この吉本問題に他の番組にはない踏み込みを見せたのが、『ワイドナショー』の裏番組である『サンデー・ジャポン』(TBS)だった。



 ひとつは、先週、松本の〈プロ根性で乗り越えましょう〉というツイートに「私はこの気持ちまで追いついてない」「松本さんちょっと待ってください」と疑義を呈した友近が出演、再び吉本興業の現体制を批判したことだ。



 友近は松本に疑義を呈した発言について、「いま冷静に見たら言い過ぎてると思った」としながら、あらためて「気持ちが追いついていないのは本当」と、自分の思いを率直に告白した。



「あの発言をした前日が、岡本社長の会見で、その前日に松本さんが「大崎さんが辞めたら俺も辞める」って発言をされた。その二つがとにかく衝撃的でショックだったんですね。私の中で、じゃあその2トップのままで松本さんは「がんばろう、みんな」と、自分の中で解釈して、それならちょっと待ってくださいよ、松本さんと」



 また、大崎会長・岡本社長が辞めたほうがいいと思っているのか、という質問に対しても、「いまの体制を変えるには」と発言。そのあとに「その改善方法が明確に私たちにガラスばりにしてくれたりするんであれば、この体制のまんまみんなでがんばっていくことになると思うんですけど……」と加えたが、明らかにそれは難しいだろうという空気をにじませ、さらに「(大崎・岡本がトップのままでは)変われるかどうかはかりかねるってことだよね」という太田光の言葉に「そうです」と、大崎・岡本退陣を求めた真意を説明した。



 そして、ギャラの不透明さや、いろんなことに手を出しすぎて赤字事業が山ほどあることに触れ、「そこの赤字を、憶測ですよ、私たちの給料からやってんじゃないかって思われても仕方ないんです」と指摘した。



 松本の看板番組の裏に出演し、ここまで毅然と発言したというのは、さすが友近だが、この日の『サンジャポ』が出色だったのは、友近だけではない。



 番組として、吉本興業が政府の仕事に数多く携わっていることを取り上げ、「税金を得ている企業が反社会的勢力とつながっている疑惑を持たれるのは問題」と指摘。スタジオでも、杉村太蔵やテリー伊藤、デーブ・スペクターらが一斉に「政府の仕事を受注するということはオフホワイトじゃ困る」「政権との距離が近すぎる」「税金の無駄」と、批判の声をあげたのだ。



●吉本と安倍政権の異常な接近ぶり、100億円の補助金まで



 本サイトでは以前から、吉本の政府関係の仕事の多さ、そして安倍政権や維新との“蜜月ぶり”を繰り返し伝えてきた。たとえば、2017年には法務省のPRを吉本が会社をあげて請け負い、吉本芸人を大量投入。ダウンタウンが大阪万博誘致のアンバサダーになり、大阪市とも包括連携協定を結ぶ。それ以外にも、さまざまな公的プロジェクトに吉本芸人が担ぎ出されるように。また、大阪ダブル選のさなかの4月20日には、安倍首相がなんばグランド花月で吉本新喜劇に出演。闇営業問題で吉本が入江を契約解除したことが明らかになった6月6日には、今度は西川きよしら吉本興業所属芸人らが首相公邸を表敬訪問し、安倍首相の前でネタを披露したことがニュース番組で大きく取り上げられた。



 さらに、今年6月には、大崎会長が沖縄県の普天間基地や那覇軍港など返還が見込まれる米軍施設・区域の跡地利用に関する政府の有識者懇談会メンバーに選ばれた。



 極めつきが、吉本がNTTと共同でおこなう教育コンテンツなどを国内外に発信するプラットフォーム事業参入に、経産省が作った官民ファンド「クールジャパン機構」が最大100億円出資するとしていることだ。



 本サイトが報じてきたように、クールジャパン機構は日本アニメの海外配信事業の中止など出資事業の失敗が相次いでおり、赤字を重ねつづけてきた。その一方で、同機構は吉本関連事業に多額の出資をおこない、「現代ビジネス」7月27日付記事によると、2014年には〈吉本興業や電通などで構成されるコンソーシアムによるエンターテインメント・コンテンツの創作・発信事業に10億円が投入〉。さらに2018年には〈吉本興業が参加する大阪城公園でのエンターテインメント発信事業に対し、12億円が投資された〉と指摘している。



 その上、今度は最大100億円の出資──。つまり、吉本は大崎会長の体制下で政権との距離を縮め、政府からの巨額の出資によって公的事業に参入しているのだ。



 この日の『サンジャポ』はまずVTRで、こうした吉本と政府、安倍政権との関係を一つひとつ解説。担当大臣のコメントや「国と仕事をして、その税金とかを使っているのであれば、まあクリーンにやってもらっていいのかなっていうふうには思いますね」という街の声を紹介した。さらに、宮迫だけでなく、吉本興業が会社として、反社会的勢力がスポンサードしていたイベントにタレントを送り込んでいた問題を取り上げ、「(岡本社長が)フリップで解説していた関係図を見ると、宮迫さんと吉本興業は、同じ立場と言ってもいいんじゃないかなと思います」という街の声を紹介。「つまり両者は同じ状況にあったことから、吉本は宮迫さんを責められないのではという意見が出ている。政府の事業に数多く携わる吉本興業。きちんとした説明責任が求められている」と締めた。



●デーブは「普天間の跡地は、相当、動機は疑ってもおかしくない」



 これだけでも、今までのテレビではまったくなかった批判だが、スタジオではもっと踏み込んだ発言が飛び交った。口火を切ったのは、最近、リベラルな発言が目立っている杉村太蔵だ。太蔵はVTRの解説や担当大臣のコメントを受ける形で、こう一気に述べた。



「(関係省庁が記された)フリップを見ていただきますとね、ほぼ全省庁との関係あるわけですよ。当然のことながらやはり政府の仕事を受注するということは、それこそオフホワイトじゃ困るわけですよ。完全なクリーンでなければならないと。私がこの政府の立場でね、いま非常にショックを受けてるだろうなあと思うのは、今週、島田紳助さんがメディアで取材を受けていますよね。島田紳助さんというのはVTRにもありましたけど、8年前にまさに反社会的勢力との交際が理由で、吉本興業をおやめになった。その方がですね、未だにこの吉本興業に隠然たる影響力あるかのような印象をね、国民がもたれるというのは、やはり政府としてはこれは大きな問題で。だからこそ今回、国務大臣が。大臣がね、これだけ、あの現段階でコメントをするというのは、やっぱり政権にねやっぱり批判が向いてくるんではないかと、危機感が」



『バイキング』(フジ)など吉本御用マスコミが島田紳助発言を大崎会長擁護に利用し、賞賛しているのとは対照的に、太蔵は紳助が吉本に今も隠然たる影響力を持っていることの問題にしたのだ。



 この太蔵発言を受けて、デーブ・スペクターもこうつづけた。



「まず、こういうプロジェクトはやり過ぎ、意味ないものばっかりですよ。所詮、人のお金だと思って、役所の人たちは、官僚は、自分の実績をつくるためだけ。あと、天下りを考えたりして」



 さらに、デーブは吉本興業が反社勢力のイベントにタレントを派遣していた問題を取り上げ、「あくまでもイベント会社は窓口だけなんですよね。その依頼先はどういうものだかもっと調べます、普通。あのイベント会社が大丈夫って言ってるって、それ通用しません」と痛烈に批判したあと、沖縄利権の問題にまで踏み込んだ。



「あと、普天間。なんで沖縄と吉本、大阪の会社なんで、あんまり接点ないですよ、本来は。なんでそんなにヨダレを垂らして沖縄にいろんなことをやっているか。やっぱり普天間の跡地は、相当、動機は疑ってもおかしくないんですよね」



 本サイトの既報のとおり(https://lite-ra.com/2019/06/post-4794.html)、吉本興業は10年以上にわたって沖縄国際映画祭を運営しているが、この背後には沖縄や大阪のカジノ利権参入と関係があるのではないかともいわれてきた。そして、普天間基地跡地は沖縄のカジノ誘致の有力候補と言われている。大崎会長が有識者懇にメンバー入りしたのも、安倍政権下で普天間基地跡地へのカジノ(IR)誘致と吉本興業のカジノ参入のシナリオが進んでいる証拠ではないか、と見られているのだ。この問題について、これまでテレビは一切触れようとしてこなかったが、ついに疑義を呈したのだ。



●「安倍首相当人が吉本を気に入っているから、どうしようもない」の証言



 一方、太蔵はこんなことを司会の太田光に問いかけた。



「先ほど新喜劇の話、ありましたね。安倍さんが立ったという。この立つ数分前は、大阪の補欠選挙3か所、街頭演説してるんですよ。その翌日、大阪の補欠選挙の投票日なんです。でね、これ見てるとね、現政権がここまで、お笑い、というかエンターテイメントの会社と非常に近いわけですよね。日本のお笑い文化の観点からして、太田さんどのようにご覧になっているのかなというのはすごく気になるんですけど」



 最近、政治問題では弱腰が目立つ太田はまともに答えず、まぜっ返していたが、太蔵は明らかに、吉本が政府の仕事をたくさんやっているという背景に、安倍政権との癒着があることを示唆していたのだ。



 実際、前述した「現代ビジネス」記事では、政府関係の仕事が数多く吉本に流れていることについて、政府関係者がこんなコメントを寄せている。



「安倍首相当人が吉本を気に入っているから、どうしようもない」



 ようするに、吉本の問題は“安倍友”案件だからどうしようもない、というのである。これはつまり、森友・加計問題と同じということではないか。



 しかも、これはたんに、安倍政権と吉本興業だけの問題ではない。テリー伊藤はその背景にある経産省の問題も指摘した。



「もうひとつポイントは、経産省、すごくこれ予算を持ってる。クールジャパンって、響きいい言葉ですよね。でも経産省で使ってる予算、これはどれだけで活用されているか。正直言って無駄打ちが多い。っていうのは正直言って経産省の人はお笑いのことなんか、わかんない人多いですよ。その人たちが決定権を持って。たとえば韓国はもっとそういうところ、優秀で。たとえば少女時代とかああいうの、ロンドンでヒットさせるじゃないですか。日本のひとたちをクールジャパンで、向こうで知っているひといますか?」

「税金が死に金になっている。これはものすごく大きなこと」



 まさしくテリーの言うとおりだろう。というのも、前述した「現代ビジネス」記事では、クールジャパン機構の投資による累積赤字が178億円にものぼる一方、政府は生活保護受給額のうち食費や光熱費など生活費相当分を2018年10月から国費ベースで年160億円も削減する方針を決定したことに言及。ようするに、社会保障を削った分を上回る税金をドブに棄てているのだ。



●『ワイドナショー』はじめテレビこそが吉本・安倍政権の癒着ビジネスの共犯者



 そういう意味では、この日の『サンジャポ』の放送内容は「よくやった」というよりメディアとして「当然の姿勢」と言うべきだろう。むしろ、おかしいのは、税金も関わる吉本興業の不正に一切触れようとしない『ワイドナショー』や他のワイドショー、ニュース番組のほうなのだ。連中は触れないどころか、いま、「話が変わっている」と、問題を宮迫らの話だけに引き戻し、吉本批判を封じ込める役割さえ演じている。



 それは、結局、テレビ局がこの吉本興業の政権との癒着構造、税金ビジネスに組み込まれているからだ。在京5社・在阪5社のテレビ局が吉本の株主になっていることについては、先週、やはり『サンジャポ』で、デーブ・スペクターが「ありえない、テレビ局は即刻、株を手放すべきだ」と批判していたが、問題は株主ということだけではない。



 吉本興業は、安倍政権の公的ビジネスに食い込むのと同時並行的に、テレビ各局のワイドショーや情報番組の司会やコメンテーターに吉本芸人たちを大量に送り込むようになった。そして、そのほとんどが安倍政権に擁護的なコメントをしたことで、安倍政権から気に入られ、関係がどんどん深まっていった面は否めない。



 つまり、いまのワイドショーやその出演者は、吉本の公的ビジネス利権参入の共犯者なのだ。中でも最大の存在は、やはり松本人志と『ワイドナショー』だろう。松本は東野幸治やゲストともに安倍政権擁護を繰り返し、安倍首相を出演させ、さらには会食までおこなった。吉本の政権ビジネスが加速したのは明らかにこれ以降のことだ。



  しかし、こうした構造があるからこそ、テレビ局は絶対に吉本と安倍政権の癒着ビジネスを批判することなんてできない。吉本への血税投入もコンプライアンス違反やブラック経営体質とともに、ほとんど批判にさらされないままうやむやになり、事業はそのまま続くのだろう。



 そう考えると、この国の最大の元凶はテレビ局の体質と言うべきかもしれない。

(編集部)


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