吉本芸人、ギャラ取り分が“ブラック”でも「生計成り立つ」? 関係者が語る意外な実態

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2019年07月30日 20:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

吉本興業公式サイトより

 闇営業事件を発端にして、吉本興業への批判が高まっている。そもそも所属芸人が反社会的な集団と関わりをもったことが問題だったはずなのに、いつのまにか吉本が「ブラック企業」だということに論点がすり替わっている。果たして吉本は本当に、芸人にとって契約やギャラの取り分が不利な「ブラック企業」なのか、関係者に話を聞いた。

■視聴者は芸人を下に見たい

 会見で岡本昭彦社長もブラック問題について語った。ギャラの取り分が「会社9:芸人1」といわれていることに対して、「5:5」「6:4」が本当のところだと反論した。

 テレビ制作会社の社員が言う。

「少なくとも僕が関与したテレビ番組に関しては、そのぐらいの割合だと思います。酒の席で芸人さんが口にしていたギャラは、まさに僕らが吉本に支払った額の半分より少し下回る額でした」

 では、なぜ、「9:1説」がこれだけ広まったのか?

「視聴者は芸人を下に見たい気持ちがある。そのニーズに合わせて、悲惨さを表現しようと、明石家さんまさんから千鳥さんまで、売れっ子たちが『搾取されている』と面白おかしく話す。芸人たちがそういう話をするのを吉本が放置していたのは、それが視聴者へのサービスだってわかっていたからです。エピソードトークとして盛り上がるなら、会社をネタにしてもかまわないと。そういう意味では、懐が深い会社ですよ」(前出・制作会社社員)

 その一方、9:1ならまだマシで、ギャラが1円ももらえないという若手芸人も実際にいるようだ。岡本社長の説明に、「品川で初単独やった時。445席即完して。グッズも完売して。ギャラ2000円だったなぁ」など、具体的な例を出して反撃した芸人もいる。これに対しては放送作家がこう答える。

「単独公演のギャラに関しては、吉本だけではなくて、ほかのプロダクションの芸人たちも不満を口にしていますから、それは吉本の問題ではなくて、お笑い界全体の問題だと思います。ただ、運営費を考えると、そうそうギャラは払えないんじゃないですかね。単独公演を打つのに、チケットノルマがないだけでもありがたいように思えますよ」

 吉本芸人たちの事務所への不満が爆発しているわけだが、それでも多くの芸人が吉本にいる理由は何なのか。

「吉本芸人の最大のメリットは、劇場に出ていれば食べられる点です。吉本はマネジメント企業であると同時に、多くの劇場を持つ興行主でもあります。2018年の『M-1グランプリ』でファイナリストに残った芸人のうち、バイトをしているのは非吉本芸人だったトム・ブラウンだけでした。つまり、『M-1』決勝戦に残るだけの実力があれば……いや、準決勝に残っている人たちも、吉本ならほぼ舞台の出番で飯が食えているはずですよ」(前出・放送作家)

 ちなみにトム・ブラウンは、翌年の『M-1』開催記者会見で、昨年『M-1』に出た後は、月の給与が「130円ぐらいだったのが200倍、300倍になった」とコメントしている。今でも月の給与が数万円ということだ。知名度は高まり、テレビにも出ているが、舞台のようなほかの仕事がないからだ。

 一方、18年の『M-1』敗者復活戦で注目を浴びた吉本所属の金属バットは、昨年とはまったく違う経済状態にあるという。ツッコミ担当の友保隼平は今年に入ってから給与明細をTwitterに投稿しているが、その額は徐々に増えていき、6月分からは30万円を超えている。彼らは『M-1』後に、吉本の劇場での出番を増やした。昨年はバイトをして生活費を稼いでいたというが、現在は、ほぼ毎日舞台に立つことで生計が成り立っているようだ。

「金属バットさんは『M-1』後に舞台出演料が上がったことで、さかのぼって18年分からの出演料が高くなり、過去1年間の差額が今年の年頭にまとめて支払われていると思います。同じく吉本のさや香さんも17年の『M-1』決勝に出た後に、やはり出演料がアップし、17年分の差額が何十万かまとめて支払われたのでは。それを見ていると、果たして、吉本が他事務所に比べてブラックとは思えない」(同)

■今後の問題点はYouTubeか

 また、他事務所の若手芸人がこう語る。

「僕らの事務所だと、無名の若手が立てる公式な舞台は月に1本です。もっと出たければ、地下ライブ(ファンや知名度を付けるために、ギャラなし、あるいは会場費自腹で出演するライブ)に出るしかない。ところが吉本なら無名の若手の子たちも月に何回も公式の舞台に立てるんですから、うまくなるためにはものすごく有利ですよ。結果、『M-1』の準決勝や決勝は、吉本芸人が占拠していく。賞レースは若手が売れるための最重要ツールですから、吉本にいることは、やっぱりエリートへの道なんですよ」

 一方で、前出の放送作家は、吉本の問題点も指摘する。

「最近、吉本の若手の子たちが不満を口にしているのはYouTubeの収益のマージンですね。YouTubeに関しては機材の手配からスタッフの手配まで芸人たちだけでやっているのに、吉本がしっかり5割ぐらいマージンを取っているそうです。テレビや営業の仕事は吉本が仕事を斡旋するんだから、マージンを半分取るのは当たり前ですが、YouTubeに関しては何もしないのにということで、これは筋が通った不満でしょう。ほかの事務所の中には、若手が食べられるよう、YouTubeに関してはマージンを少なく設定するところもあるそうですから」

 また、契約書を交わさないというのは、今後は通用しないだろう。吉本は特段のブラック事務所ではないように見えるが、変革の時期にあることは事実だろう。
(木原友見)

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