中国のアリババ、通勤途中にアプリ注文&店舗受け取りの朝食サービス開始

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2019年07月31日 07:31  リアルサウンド

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リアルサウンド

提供=フライメディア

 2019年7月1日、アリババグループは、新たな業態として「Pick ‘n Go」をオープンした。


 「Pick ‘n Go」は、アリババグループのニューリテール戦略で有名な生鮮食品の次世代スーパー「盒馬鮮生(Hema Fresh)」グループの「盒馬菜市」、「盒馬mini」、「盒馬F2(Fast&Fresh)」、「盒馬小站」に続く第5の業態として、早くもそのサービスが注目を集めている。


(参考:タピオカミルクティー、中国で驚きの進化 無人スタンドでダンシングロボットから提供される!?


 「Pick ‘n Go」は、朝食を求めて、行列ができるという朝の光景を解消するため、「通勤途中にアプリ注文&決済し、店舗に着いたらピックアップするだけ」と、待ち時間ゼロをめざす朝食に特化した便利店という位置づけだ。


 中国は日本と違い、外で食べる朝食文化をもつため、巨大な朝食市場があるといえる。よく知られる大手ファーストフード店でも中国定番の朝食メニューがそろう。昔ながらの移動式朝食ワゴンもあり、朝食を買うために長蛇の列ができている店舗も多い。こうした中、「Pick ‘n Go」は、朝食を購入するビジネスマンをターゲットに、肉まん、煎餅(中華風クレープのようなもの)や豆乳といった朝食の定番を中心に約20種類をテイクアウトのみで対応している。


 ピックアップ用のボックスは、混雑する朝にその数で足りるのかという素朴な疑問はさておき、カウンターでのスタッフとのやりとりはなく、アプリに送信されたバーコードをかざし、ボックスからピックアップするので、効率はよい。


 アリババグループはこれまでも「盒馬鮮生(生鮮食品の次世代スーパー)」、「ROBOT.HE 機器人餐庁(ロボットレストラン)」と、次々と話題と斬新な業態を世に送り出してきた。


 「盒馬鮮生」は「もう家に冷蔵庫はいらない、盒馬があるから」というインパクトのあるキャッチコピーと30分以内のスピード配送という驚異のサービスで消費者の心をつかみ、利用するためにダウンロードが必要な盒馬アプリの普及にも一役買った。現在では、「盒馬」と名のつく業態や関連店舗でも必須となる盒馬アプリはすっかり定着している。


 「盒馬鮮生」の魅力は、何と言ってもオンラインとオフラインそれぞれで消費者のニーズを満足させる多様なサービスが整っていることにある。


 オンラインでいうと、「盒馬鮮生」の実店舗に行かずとも、盒馬アプリで注文ができ、半径3キロ以内なら30分で商品が届く。30分という時間で、新鮮なものをそのまま受け取ることができ、使いたいときに注文ができるので、消費者には使いやすく、便利なサービスである。


 一方で、あたりまえだが、オンライン購入は注文時、実際に商品を手にとることができないことが難点である。少なからず商品に不安を抱く消費者は、こうして実店舗があることで、食品の鮮度や安全性を実際に自分の目や舌で確かめることができる。しかも盒馬鮮生のデリバリーは、注文が入ると、店内でピックアップ店員が陳列棚から商品を選んで専用バッグに入れ、それを天井に設置したレーンでバッグヤードに運び、デリバリー配送するというしくみを導入しているため、実店舗に並んでいる商品が届くという安心感がある。


 また、店内には巨大な水槽がいくつも並び、ロブスターやカニなど自分で見て選んだ食材をイートインできるので、店内で新鮮な素材を味わえることも魅力のひとつとなっている。


 その進化系が、「ROBOT.HE 機器人餐庁」である。「盒馬鮮生」の中にオープンしているので、「盒馬鮮生」で注文したものや購入した総菜などをこの「機器人餐庁」で食べることができる。


 調理が必要な海鮮類の料理を運んでくるのがロボットカーであることや店内ディスプレイが近未来をイメージしていることで、未来型の「無人ロボットレストラン」としてエンターテイメント性も高く、週末は家族連れを中心に混雑している。


 こうして見ると、アリババグループの快進撃が続き、市場での勢いを感じるのだが、一方、「盒馬鮮生」で閉店する店舗も出ているし、陳列している商品の品質問題などがとりあげられるなど課題も多く抱えており、そのほかに打ち出している新しい業態全てが成功しているとは限らない。新しくオープンさせても市場に全く浸透しない業態もある。


 そもそもどうして、こう次から次へと新たな戦略を打ち出していくのか。


 それは中国の消費者市場の変化によるところが大きい。消費者ニーズの個性化、多様化により、様々なニーズに対応する戦略や業態を打ち出して、中国市場で生き残っていく必要があるからだ。


 そのためには、経営側もこれまでの「商品をつくり、販売するだけ」のスタイルから、「消費者ニーズを理解した商品、サービスを提供する」スタイルへの転換がせまられている。アリババグループで言うならば、それらが、前述の「盒馬鮮生」やコンビニの「盒馬F2」などであり、朝食特化の「Pick ‘n Go」になるわけだ。


 アリババが「ニューリテール戦略」という言葉を使い出したのは2016年。当時、「オンラインとオフラインの融合をめざすニューリテール戦略」という言葉を聞いてもなかなかそのイメージがつかめなかった。


 ところが、「盒馬鮮生」という実店舗ができたことで、このニューリテール戦略が明確にみえてきた。アリババグループも「盒馬鮮生」の誕生で、オンラインとオフラインの融合による新たな消費モデルの構築に成功したとも言える。


 今後もアリババグループのこうした方向性は揺るがず、オンラインとオフラインの融合による更なる相乗効果をめざし、驚くような仕掛けを展開していくことが期待できるので、アリババグループの動向からますます目が離せない。


〈参考〉
http://www.linkshop.com.cn/web/archives/2019/427510.shtml
https://new.qq.com/omn/20190502/20190502A016YF.html
https://www.jfdaily.com/news/detail?id=66632


(フライメディア)


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