V6・井ノ原快彦は、プライドが高い人間――デビュー当時の冷遇から「現在の成功」を手にした強さ

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2019年08月02日 00:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

ジャニーズ公式サイトより

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「負けじゃねえかよ!」V6・井ノ原快彦
『ダウンタウンなう』(フジテレビ系、7月27日)

 「プライドが高い人」とはどういう人のことを指すのだろうか。目上の人にも臆せず、自分の意見をはっきり言う、元TBSアナウンサーの宇垣美里のような人を連想する人もいるかもしれない。宇垣と言えば、TBS時代にプロデューサーから番組降板を告げられた際、あまりに直前の連絡だったために「私に失礼」とし、プロデューサーが用意してくれたコーヒーを「あなたからもらったコーヒーは飲めません」と流しに捨てたと『ダウンダウンなう』(フジテレビ系)で明かしている。

 上の立場の人間に自分の意見を強く主張する姿勢は、プライドの高さゆえと解釈する人もいるだろうが、「コーヒーを捨てる」という挑発的な行為はいかがなものかと見る人もいるだろう。これでは、プライドが高いというより、「常識がない人」とみなされてしまう。となると、プライドの高い人は、自分を持ちながらも、人に不快感を与えない礼儀正しさが必要になると言えるだろう。また、ある程度仕事で結果を出している人でないと、単なる「愚痴っぽい人」と思われる可能性もあるので、仕事での実績もマストである。

 プライドが高い人とは、実は「仕事で結果を出し、自分を持っていて、礼儀正しく抑制的な印象を与える人」と考えた場合、V6・井ノ原快彦が浮かぶ。『あさイチ』(NHK)では、有働由美子アナとの名コンビで、番組を高視聴率に導いた。現在は俳優として活躍するとともに、『出没!アド街ック天国』(テレビ東京系)の司会を務めている。誠実そうなイメージが視聴者から愛されている印象も強い。その井ノ原が、坂本昌行、長野博と共に『ダウンタウンなう』に出演し、V6結成25年の歴史を振り返っていたが、多くの葛藤を乗り越えてきた強さのようなものを感じた。

 V6は井ノ原、坂本、長野の年長者グループ・20th Century(トニセン)と、森田剛、三宅健、岡田准一の若手グループ・Coming Century(カミセン)で構成されている。ジャニー喜多川氏にトニセンとカミセンは「3対3のバーサスだよ」と言われていたそうだが、井ノ原は「やる前から(結果は)決まってるんじゃねえか! 負けじゃねえかよ!」と思ったそうだ。実際、扱いは明らかにカミセンの方が上。デビューシングルのジャケット写真で、トニセンは前列にいるものの、映りが小さい。セカンドシングルのジャケット写真では、トニセンは後列で、やはり映りも小さい。ほかにもカミセンだけが「ラジオ番組を持たせてもらえる」「合宿所まで送迎してもらえる」といったことがあったそうだ。

 そんな格差について、井ノ原以外のトニセンメンバーはどう思っていたのだろうか。2015年、V6デビュー20周年を記念して出演した『SONGS』(NHK)で、長野は入所9年、数々の後輩に追い抜かれて、23歳でのデビューが決まったため、「やっと」と思ったそうだ。坂本も24歳のデビューと、かなりのスロースタートなため、「やっとつかんだ栄光」「(チャンスを)離さない」としており、2人にはなりふり構わずしがみつこうという割り切りが感じられた。しかし、井ノ原はデビュー当時19歳と、トニセンの中ではカミセンに年齢が一番近い。ほかの2人のように割り切れないものを感じていたのではないか。

 井ノ原と言えば、『TOKIOカケル』(フジテレビ系)で、ジャニー氏を激怒させたエピソードを披露している。初の雑誌の表紙撮影で、カメラマンの言うままに笑っていたら、ぶさいくな顔になってしまい、ジャニー氏に「とんでもないことをしてくれたな」「YOU、ひどいよ」と怒られたそうだ。井ノ原がきちんとした地位を築いた今なら、いい笑い話になるが、ジャニーズ事務所が美少年を輩出する事務所であること、プロデュースの責任者がジャニー氏であることを考えると、ジャニー氏に見た目を叱責されるのは、タレントとして致命傷になりかねないのではないだろうか。

 トータルして考えると、デビュー当時の井ノ原の置かれた環境や評価は過酷と言える。デビューしたら前列、しかもセンターに行きたいと思うのは、芸能人なら当然のことである。しかし、デビュー時の雰囲気で言えば、井ノ原にセンターは無理そうだ。

 『ダウンタウンなう』で、トニセンのセカンドシングルでの扱われ方を見たダウンダウン・松本人志は、「終わりや」と言っていた。確かにあのジャケットを見て、トニセンが期待された存在であると思う人はほとんどいないだろう。しかし、“終わり”は違う何かの始まりを意味することもある。野球チームに4番バッターばかりを集めれば勝てるのかというと、そうは言えないだろう。なぜなら、1番バッター、2番バッターにそれぞれ役割があり、彼らがいるからこそ、4番が生きてくるからだ。井ノ原はセンターになることを諦め、一流の脇になろうとしたのではないだろうか。そこに、自身の信念を持つようになったと感じるのだ。

 井ノ原を「4番をあきらめた人」と仮定すると、井ノ原のかつての相棒、有働アナも同じ部分があるように見えてくる。有働アナは入局わずか4年で東京進出を果たした優秀なアナウンサー。その一方で、一緒にニュースを読む男性アナウンサーに外見をいじられることが多々あった。有働アナは民放によくいるミスコンの女王を経て鳴り物入りで入社する4番タイプの女子アナではない。しかし、自虐という新しいキャラクターを生み出すことで、親しみやすいアナウンサーとしての地位を確立した。つまり、有働アナと井ノ原は「4番ではない」というポジションが似ているわけで、脇に回ってV6を支えてきた井ノ原は、有働アナと波長が合ったのかもしれない。

 常識で考えると、一般人の世界で突出した魅力を持つ人が芸能人や女子アナになったりするのだろう。が、恵まれた人が集まれば、そこでまた新たな序列にさらされることになり、これまで味わうことのなかった挫折を経験するかもしれない。しかし、「損して得とれ」という諺があるとおり、損をすることは負けとは限らないのだ。

 かつて、トニセンへの冷遇に「負けじゃねえかよ!」と憤った井ノ原だが、その後、彼は信念をもって負けをあっさり認め、また別の勝ちを得た。プライドが高い人というのは、「負けをあっさり認められる人」のことも、指すのかもしれない。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

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