『あなたの番です』Pが語る大反響の裏側とドラマ作りの極意 「コアなファンを裏切らないように」

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2019年08月03日 08:01  リアルサウンド

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『あなたの番です-反撃編-』(c)日本テレビ

 日曜ドラマ『あなたの番です』(日本テレビ系)の快進撃が続いている。


 日本テレビ25年ぶりの2クール連続ドラマとして、「毎週、死にます」というキャッチコピーとともに4月に放送スタートした本作。第1話から、マンションの管理人に扮する竹中直人が宙吊りから転落死するなど、衝撃的な死の光景が続いた。第1章の後半からは視聴率も上々で、「特別編」を挟み、そのまま第2章「反撃編」に突入。原案は、同局の『愛してたって、秘密はある。』(2017年)も手がけた秋元康。同作でもプロデューサーを務めた日本テレビの鈴間広枝氏に、現在の反響ぶりを聞いた。


「作品のテイスト上、どうしても途中から参入するのが難しいと思うのですが、考察など盛り上がっていただけてありがたいです。地上波の連ドラはいろいろな制約があるので、どうしても“想像の範囲内”の展開になってしまいがちですが、今回ストーリーの途中で主人公が死んでしまったりと、視聴者の方々の想像を裏切ったからこそ、ザワザワと広がってくれたのかなと。TVerなどでも全話配信をしましたが、わかる人だけわかればいいというのではなく、『話題になってるし、見てみようかな』と思ってくださった方にも途中参戦してもらえるような施策はやっていきたいと最初から話していました」


 その言葉通り、ポスターのとある重要人物を「日テレ」のロゴに隠し、絶妙なタイミングで完成版を公開したり、ヒント動画、田中圭演じる手塚翔太の主題歌「会いたいよ」など、連続的にサプライズを仕掛け、話題をさらっていった。


「2クール連続放送、そして途中から参入しづらいミステリーものということで、ハードルはかなり高かったです。だからこそ、1クール目の最後は、主人公である菜奈(原田知世)が死ぬという大きな事件にしました。秋元先生は、“ラストの引っ張り研究家”なんです。『着信アリ』などのホラー作品もやっているので、一番ビックリする方法をすごくわかってらっしゃって、『あそこにいる思ったら、実はここにいた』とか、『こう回り込んだら死体があったら怖い』とか。そういう魅せ方も細かいアイデアをたくさんいただいています。


 作品の宣伝においては、2クールなのでとにかく話題になり続けることを意識しました。外側から見ても、「『あなたの番です』っていうドラマがいろいろやってるらしいぞ」と感じてもらえるように。やっぱり期間が長いので、1クール終わった時点で全然話題になっていなかったら、残りのクールがつらくなる。人が死にますし、グロテスクな描写もあるので、見る人を選ぶ、『みんなが大好き』という作品ではないということはわかっていたので、『こういうふうに見てほしいんです』ということも込めた、ちょっと笑えるテイストの動画なども力を入れて作りました。でもまずは、今見てくれているコアなファンを裏切らないようにしようと」


 特に主題歌「会いたいよ」は、初オンエアのタイミングでは、誰が歌っているのかまだ明らかになっていなかったが、その数日後、同局の歌番組『THE MUSIC DAY 2019 〜時代〜』で正式発表された。


「田中さんに歌ってほしいと相談したのは、1月ぐらいでした。ただ、レコーディング自体は本当に最近で、特別編が放送(6月23日)の直前。田中圭ではなく、翔太として歌っていただけたと思います。レコーディングの途中で田中さんが『菜奈ちゃんとツーショットの写真ないかな』とおっしゃって。データから2人の写真を探してプリントアウトして、譜面台に貼って役に入ってくれましたね。もちろんプロの歌手ではないんですが、『ここは語りかける感じで』とか『ここは声を張って』というオーダーにも表現力で応えてくださいました。実はその頃、田中さんはずっと熱が出ていて。1クール終わってからの『特別編』、そしてレコーディングからの『反撃編』スタートという時期で、あまり表には出さないのですが、プレッシャーを感じてたと後でおっしゃってました」


 そして、現在盛り上がっているのが、TwitterやYouTubeをはじめとしたSNSでの犯人探しや謎解きなどの「考察ブーム」だ。「#あなたの番です」がTwitterの世界トレンド1位を獲得し、キャラクターや役者の名前までもが毎度ランクインするなど反響を呼んでいるが、この盛り上がりは製作陣も想定外だったという。


「考察は自然発生的に生まれてきたと思っています。私たちの戦略というよりは、みなさんそれぞれが持っている発信するメディアを使ってこのドラマと関わってくださったから親和性が高かったというか。ただ本当に気が抜けないです(笑)。小さなミスも許してもらえないですからね。こんなにいろんな説が出てくるとは正直思っておらず、私たちもびっくりしています(笑)。SNSでの考察を見ていて、もちろん大筋は変えないんですけど、説明が足りなかったかな、誤解されちゃったなという部分は、アイテムを再登場させたり、丁寧に説明し直すことは、正直ありますね。みなさん、筆跡とかもすごい見ていて、同じキャストの方に書いていただいたのも違うって言われちゃうので。考察のなかにはほぼほぼ合ってるものもあります。まったくすべてその通りというわけではなくても、これはいい線行ってる! というのがあって。ちゃんと伝わっているのは嬉しいですね」


 視聴者を欺けるのは、もちろん役者の演技のうまさこそだ。田中圭、西野七瀬、横浜流星ら旬のキャストのほか、木村多江、田中哲司、片桐仁などが、個性の光る役者たちも揃っている。


「最初から、たとえ視聴率が取れなくてもブレずにやろうという話はしていたんですけど、キャストのみなさんも周りの方から『犯人誰なの?』と聞かれることが多いみたいです。田中さんはキャリア20年ですが、こんなに周りから言われるのは初めてだと。キャストのみなさんには一番悪い犯人は伝えているんですが、生瀬(勝久)さんとかはあえて聞きたがらないです。台本に書かれている以上の“計算したお芝居”はやりたくなくて、『書かれていることを忠実にやったら、視聴者も自分も騙せる。素直にやることが作り手の意図を反映した芝居になるはずだから全力でやる』と。お芝居ひとつで、この人怪しい・怪しくないって出てくるものなので、今後も演技には注目してほしいです」


 全20話で完結ということで、残り6話となった『あなたの番です』。前話では、とある人物が危険にさらされることとなり、まだまだ先の読めない展開が続いている。鳴り物入りで始まった本作は、果たして今の時代に適したミステリーとして、傑作ドラマになれるだろうか。(取材・文=若田悠希)


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