pH-1 からTWICE、NCT127まで全14曲! K-POP、サンプリングの元ネタを一挙解説

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2019年08月04日 01:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

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――毎月リリースされるK-POPの楽曲。それらを楽しみ尽くす“視点”を、さまざまなジャンルのDJを経て現在はK-POPのクラブイベントを主宰するe_e_li_c_a氏がレクチャー。7月にリリースされた曲から[いま聞くべき曲]を紹介します!

いま聞くべき1曲‖pH-1 - You don't know my name

 元2PM、Jay parkが設立したH1GHR Music所属のラッパー、pH-1のアルバム曲です。2000年代のアメリカのHiphop、R&Bを追っていた人には聞いただけで一発でわかる、冒頭の「You don't know my name〜round and round and round we go,will you ever know,will you ever know it? 」ですが、これはアメリカのシンガーソングライター・Alicia Keysの「You don't know my name」という曲のサビのフレーズで、1:09〜を早回し(※)しています。

□元ネタ:Alicia Keys-You don't know my name

 ということで今回はK-Popにおけるサンプリングについて説明したいと思います。その前に、まずはサンプリングの歴史・経緯について説明します。

 まず、手法でいう「サンプリング」は元々は1940〜1960年代にエクスペリメンタルミュージック(実験音楽)のミュージシャンによって開発されたもので、環境音やさまざまな物を使って出した音を録音し、テープを切り貼りして音のコラージュを作ったりするところから始まりました。70年代にターンテーブル(レコードプレイヤー)を2台使い、当時流行していたソウル・ファンク・ディスコなどの楽曲のドラムブレイク(歌がなくドラムとベースだけの部分)を、同じレコードのドラムブレイクにつなぎ、ブレイクの部分だけを繰り返したものがブレイクビーツと呼ばれ、Hiphopのビートとなっていきます。

 Hiphopの3大DJ、Kool HercによるDJプレイの2:45〜がわかりやすいです。

 このような成り立ちから、Hiphopはサンプリング技術に基づいた最初のポピュラー音楽ジャンルなどと呼ばれています。Hiphopの楽曲全てがサンプリングをしているというわけではないですが、前述のAlicia Keysの「You don't know my name」にもサンプリング元があります。

□さらに元ネタ:The Main Ingredient - Let Me Prove My Love to You(1:46〜)

※ レコードを再生するターンテーブルには再生速度が33回転と45回転の2種類があり、本来33回転で再生するものを意図的に45回転にしてかけるとピッチが高くなりBPMも速くなる。それを利用したサンプリングの手法の1つです。今はデジタルでどうにでもなるのでわざわざターンテーブルで律儀にこれをやっている人は少ないかもしれませんが……。

関連曲:K-Popにおけるサンプリング

 では、ようやくK-Popにおけるサンプリングについてです。
■god - 어머님께

 1999年リリースのgodのデビュー曲、JYPの社長パク・ジニョンが作詞作曲をしています。リリース当時は自身のみの作詞作曲としていましたが盗作疑惑をかけられ、後に2Pacの「Life goes on」をサンプリングしたものと明かされます。バックでかかっているカノンのようなシンセのメロディが「Life goes on」と一緒ですね。

□元ネタ:2Pac - Life Goes On

 先程と同じ流れですが「Life goes on」にもサンプル元があります。

□さらに元ネタ:O'Jays - Brandy(0:16〜)

■헤이즈 (Heize) - And July (Feat. DEAN, DJ Friz)

 2016年リリース、シンガー兼ラッパーのHeizeの曲、客演のDeanが作詞作曲をメインでしています。こちらに関しては併せてこの曲も。

iKON - 솔직하게 (M.U.P)

 サンプリングするパーツは曲によってさまざまですが、この2曲に関してはドラムの部分をこの曲からサンプリングしています。

□元ネタ:The Honey Drippers - Impeach The President

 この曲のドラムは数え切れないほどたくさんの曲からサンプリングされており、Hiphop界隈ではImpeachのドラムといえばこれ! というぐらいです。

■블락비 바스타즈 (BLOCK B Bastarz) - That's right

今まではメロディとドラムがサンプリングされていましたがこちらは声ネタ。Block Bの派生ユニット、BastarzのThat's right、0:10の「It's yours」部分がこちらです。

□元ネタ:T La Rock & Jazzy Jay - It's Yours(0:28)

■아이오아이 (I.O.I) - Whatta Man (Good man)

Produce101で結成された期間限定グループI.O.Iの2曲目の活動曲です。こちらは曲名も同じこちら。

□元ネタ:Salt 'N' Pepa - Whatta Man

曲のアイデンティティとなるサビが全く同じなのでこれをサンプリングとするかカバーとするか難しい所ですが、曲まるまる同じわけではないのでサンプリングに留まるのでしょうか。

 さて、ここからはリズムマシンやPCの作曲ソフト等で扱うサンプル・ループ素材について少し取り上げます。プリセットのサンプルとして元々ソフトや楽器に入っているものもあれば追加で買うようなパターンもありますが、基本は作曲ソフト等を購入すれば誰でも使えるもので、わざわざ使用許可を取る必要はありません。

楽器のサンプル例

■NCT 127 - Regular(0:36)
<span data-mce-type="bookmark" style="display: inline-block; width: 0px; overflow: hidden; line-height: 0;" class="mce_SELRES_start"></span>

■TWICE - FANCY(0:04)

 2曲の共通している音に気付くのが難しいかもしれませんが、表記の場所で聞こえる「Aaaah!」という声ネタです。Twiceのほうがわかりやすいと思います。

 次も冒頭のAlicia Keys世代の方には、なんか聞いたことあるな……? となるかもしれませんが、 この曲でも同じサンプルを使っています。

■Nelly - Dilemma ft. Kelly Rowland(0:24)

 これはRolandという楽器メーカーのシンセサイザーの拡張ボード(DANCE SR-JV80-06 Expansion Board)に入っている声サンプルです。サンプルはこちら

 同じパターンで、作曲ソフトのサンプルを使っている曲の紹介をいくつかしたいと思います。ちなみにこちらはサンプル元が何なのかは不明です……。

作曲ソフトのサンプル例:1

■JB(GOT7) - Sunrise

백현 (BAEKHYUN) - Ice Queen

この2曲はトラックの上ネタが同じで、JBの曲はイントロからその部分が聞こえるので分かりやすいと思います。

作曲ソフトのサンプル例:2

Sleepy - 잠겨(Fall in love)

■이달의 소녀 (LOOΠΔ) - ++

■피오 (P.O) - 소년처럼 (Comme des Garcons)

몬스타엑스 (MONSTA X) - Party Time

 これら4曲全て同じギターのサンプルが使われています。

 もちろん既存曲からのサンプリングの場合著作権などが絡んでくるため、上記パク・ジニョンの曲のように盗作騒動になったりもしますが、Crushの「Oasis」のようにリスナーが早とちりして騒いでしまうパターンもあります(Crushの「Oasis」はEric Bellingerの「Awkward」の盗作だという議論が浮上し、Eric Bellinger本人がそうは思わないと否定した経緯があります)。

 私のもとに、この曲とこの曲のフレーズが同じなんですけどそんなことありますか? と質問が来たこともあります。1970年代ぐらいから、そのような議論は絶えないですが、韓国のHiphopウェブマガジン「RHYTHMER」が2014年にサンプリングのことについて書いた記事があり、日本語訳もされているので興味がある方は読んでみて下さい。

<落選したけど……紹介したい1曲>
크나큰 (KNK) - SUNSET

 220ent所属の5人組グループKNKの新曲です。びっくりするぐらいめちゃくちゃテクノです。

<近況>
気付いたら家にWe in the zoneの同じCDがたくさんあって怖いです。
8/12(月・祝) 15時〜渋谷AsiaというクラブでK-Popをかけるクラブイベント、Todak Todakを開催します!
ゲストも豪華で広い所でやるので是非たくさんの方に来ていただきたいです!詳細はTodak TodakのTwitterアカウントを御覧ください。電子チケットの販売はこちら

e_e_li_c_a
1987年生まれ。18歳からDJを始めヒップホップ、ソウル、 ファンク、ジャズ、中東音楽、 タイポップスなどさまざまなジャンルを経て現在K-POPをかけるクラブイベント「Todak Todak」を主催。楽曲的な面白さとアイドルとしての魅力の双方からK-POPを紹介して人気を集める。

Twitter @e_e_li_c_a TodakTodak 
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