入部希望が後を絶たない少年野球チーム「横浜金沢V・ルークス」は何が違う?

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2019年08月05日 17:03  ベースボールキング

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野球人口の減少が叫ばれて久しい少年野球。しかし、横浜にある創設3年目の横浜金沢V・ルークスというチームは入部希望者が後を絶たないという。一体、他の少年野球チームと何が違うのか? グラウンドを訪ねてみた。



■問題だらけの少年野球「このままでは…」
ルークスの発足は2017年3月。部員5人の船出だった。
当時周辺の野球チームでは子供たちにこんなことが起こっていた。

・肘の痛みを訴えても同日に2試合も投げさせられた → 右肘疲労骨折(その後、その子は野球を辞めた)
・足が速いからという理由でバントしかさせてもらえず、追い込まれるまでスイングを禁止された → ストレスからチック発症
・GW7試合、遠征に連れまわされたが試合でも練習でもずっとサポートのみ → 試合では応援していたが帰宅後には泣く毎日
・日常的な指導者からの罵声と人格否定発言

子供だけではなく、保護者にもこんなことが起こっていた。

・監督、コーチには両手を添えてお茶を出すなどのルールを上級生の親が下級生の親に押し付ける
・仕事の都合で合宿に参加できなかった親が仲間はずれにされる
・「うちの子のせいで負けてすみません」とLINEグループで謝罪合戦
・辛そうにしていたら子供に「お母さんが辛いならボク野球を辞めてもいいよ」と言われた
(横浜金沢V・ルークスホームページ「講演資料」より)

土日はまるまる練習や試合にあてがわれ家族で過ごす時間はなくなる。他の習い事に通う時間もなく、練習を休むことは「悪」とされる雰囲気。
子供をチームに預けるには親も子も相当な「覚悟」が求められた。
子供が野球をしたいだけなのに…

「このままでは子どもも親も耐えられない!」
そういった思いから立ち上げられたのが横浜金沢V・ルークスだ。

■掲げたビジョンは「PLAYERS CENTERD」(子供たちがいつも真ん中)
5人の子どもから始まったチームは1年後には部員が40人に。勧誘活動は一切行わず、口コミだけで集まってきた。チーム立ち上げから指導している松橋コーチは言う。
「(少年野球人口が減っていると言われているが)野球チームに入りたい、子どもを入れたいと思う親子は今でも沢山います。でも、子供を入れたいチームが少ないということなのだと思います。少年野球にはしがらみが多すぎます。気軽に始められず、覚悟を持って親子で臨まないといけません。共働きや、片親の家庭では当番制があるチームに入ることは難しいと感じる方もいるでしょう。うちは当番制がなく親の負担が少ないですし、勝利絶対主義ではないので厳しい練習もありません。他の習い事も大歓迎です。そういったことが評価され”野球難民”の方々の受け皿になっている部分もあると思います」

ルークスのミーティングではコーチが決して「答え」は言わない。子供達が「答え」を出すまで大人たちは待つ。また、家族との時間を大切にするため月一回、完全休日のファミリデーを設けている。練習の出席、欠席は自由。他の習い事はもちろん、他のスポーツとの掛け持ちもOK。そして勝利絶対主義ではないため、試合には全員が出場する。そのため、指導者が子供たちをしっかり見ることができるという安全確保の面ともあわせ、部員は1学年7人(6学年合計42名)までと定員を定めている。



こういった方針の核になるのは「PLAYER’S CENTERD(子供たちがいつも真ん中)」という考え方だ。少年野球界には「チームファースト」のケースが多く、個の意見や思いが尊重されにくいという問題点がある。子供のことを第一に考える「プレイヤーズファースト」を提唱するチームも最近は多いが、松橋コーチはこう言う。
「『プレイヤーズファースト』になると、どうしても子どもの身の回りのことを、親や指導者が全てやってあげなければならないという考えに囚われてしまいがちです。そうなると保護者の間でなくしたはずの当番制が自然と生まれてしまいます。なので、うちは”ねばならない”を排除しています。“ねばならない”というのは「○○をせねばならない」の“ねばならない”のことです。少年野球は子供だけのものではなくて親子の物語であると思っています。主役は子供であり親でもあるのです。親子が不満なく成長できる場こそ少年野球の本来あるべき姿ではないでしょうか」(取材:細川良介・写真:編集部)

次回へ続きます。

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