入部希望殺到の少年野球チームが直面した「親の方が勝ちたがる問題」

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2019年08月07日 12:12  ベースボールキング

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入部希望者が後を絶たないという少年野球チーム横浜金沢V・ルークス。発足から1年で部員が40人を超えたこのチームだが、けっして順風満帆だったわけではない。月日が経つにつれて徐々に出てきた数々の問題。これらに対してどのように対応してきたのだろうか?



■「子どもよりも親の方が勝ちたがる」問題
発足当初は子どもが野球を楽しむということを大前提に、保護者の意思疎通ができていたルークス。しかし、「楽しい」と「勝つ」の両立は想像以上に困難だったと田畑コーチは振り返る。

「最初は純粋に野球を楽しむ我が子の姿を観ていた保護者たちでしたが、いざ負けが続いてしまうと徐々に子どもたちに対し態度が厳しくなっていくのです(笑)。つまり、プレーをする子どもよりも、大人が試合に勝ちたいと思ってしまうわけです。そうなると『もっと練習をした方がいいのではないか?』や『子どもたちを自由にさせ過ぎなのではないか?』『なぜあの子じゃなくてあの子を使うのか?』という意見が続々とでてきます。それがエスカレートすると、敗因を探すようになり、エラーをしてしまった個人を責めてしまうようになってしまいます」



1学年7人の定員は早い者勝ちで。そこに野球の上手い下手は関係ない。練習は土日(どちらかは半日のみ)だけ、試合には全員出場する、それがVルークスの方針。そんな方針に魅力を感じて子供を預けたはずの大人たちがいつしか「勝ちたい!」という思いを抑えられなくなる。

「チームを立ち上げて約2年半ですが、保護者から『試合である以上は勝ちたい!』という、人間の本能的な部分が出てくるのは仕方のないことだと理解しました(笑)。ですから、チーム全体が悪い方向に行きそうな時は代表を中心にひたすら保護者と話し合いをしました。時には代表から直球の質問がコーチや親の方に飛ぶこともあります。コーチ会議も頻繁にやるのですが、終わるのが深夜になってしまうこともしょっちゅうです。そういったことを繰り返し、実のところ子どもより大人の方が気づかされたり、反省することの方が多いんですよね(笑)」

■禁止のはずの当番制が復活の怪
ルークスの部員が急速に伸びている要因の一つは「保護者の当番制排除」。特にお母さんたちがその点に魅力を感じ、我が子を預けたいと入団を希望するケースが非常に多い。しかし、当番制が予期せぬところから復活してまったことがあるという。

「昨年の夏、ある下級生のお母さんが練習中にバケツに氷水を入れて子どもたちの身体を冷やしていました。それはそのお母さんの厚意だったのですが、その姿を見た違うお母さんが、良いアイディアだと思いまた違う日に行いました。そうなると他のお母さんも『私もやらないといけないのかな?』と思うようになり、それがいつしか”やらねばならない”に変わり、当番制が自然に復活していたんです(笑)。『ルークスは当番制がないと聞いていたのですが…』とコンシェルジュに相談が来て発覚したのですが」

当番制ナシと決めるのは簡単だが実際に実行してみないと分からないことも多い。

「ありがたいことに、このような取材も増え、私たちのやり方に賛同する他のチームの方と話す機会も多くなりました。そこで口を揃えて皆さん言われるのが『一度できてしまった制度や、昔からある係をなくすのは難しい』ということですね」
ゼロからチームを興したルークスだからこそ、このような問題にもしがらみなく迅速に対応がとれたともいえるだろう。
まだ創設3年目。行錯誤を繰り返しながら、チームは前に進んでいる。

最後に、この日グラウンドに来ていたあるお母さんの話を紹介してルークスの取材を締めくくりたい。
「以前にいたチームの息子のユニフォーム姿が記憶にないんです。それくらい当番や、保護者たちのしきたりに縛られて、じっくりとグラウンドで息子を見る余裕がなかったんだと思います。でも、今は息子の姿をじっくり見られる余裕がありますね。お母さん同士で談笑したりもできますし、ルークスは子どもだけではなく、親も楽しいです」(取材・細川良介/写真:編集部)

このニュースに関するつぶやき

  • クラブチームで金を払う。でも子供は試合にでない。何のために払ってるの?となる。だから全員試合に出す。でも裏を返せばそれは演劇で全員桃太郎やってるのと同じ。それが正解なのか
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