Official髭男dism「宿命」、WANIMA「夏のどこかへ」……バンドによる今夏のアンセムは?

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2019年08月09日 19:41  リアルサウンド

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Official髭男dism『宿命』

 毎年、夏フェスの盛り上がりとともに、バンドによる夏の名曲がいくつも生まれている。そこで、この記事では今年の夏のアンセムになりそうな曲を幾つか取り上げ、紹介してみたいと思う。


(関連:Official髭男dismの隙のないポップセンスは楽曲にどう反映される? 「宿命」メロディを軸に考察


■Official髭男dism「宿命」


 2019 ABC 夏の高校野球応援ソング/『熱闘甲子園』テーマソングとして書き下ろされた「宿命」。Official髭男dismによるグッドメロディとキャッチーさが全面に押し出された歌である。今作は、アレンジャーとして蔦谷好位置が参加。躍動感のあるブラスアレンジが加わったことで、高校野球の試合風景にマッチした仕上がりになるとともに、楽曲全体の流れがよりドラマチックなものになっている。また、ミディアムテンポで進行するこの楽曲は、歌詞を噛みしめるように聴くことができる。


 また〈涙の足跡〉〈泥だらけの笑顔〉〈肩を組んで叫びたい〉といった、高校球児に寄り添うような希望と葛藤を描いたフレーズも。しかし、背中を押すような歌詞は、高校球児ならずとも、多くの聴き手に勇気を与えるのではないかと思う。また、単にメッセージ性が強いだけではなく、「い」の音を重点的に使っており、韻を踏むように構築されている。これによりメロディに独特のテンポが生まれており、藤原聡(Vo/Pf)の歌声の伸びやかさも相まって、曲全体のキャッチーさが際立っている。一聴するだけで口ずさめるほど、身体にメロディが染み込んでくる圧倒的ポップ感は、まさしく“アンセム”と呼ぶにふさわしいナンバーと言えるのではないだろうか。


■WANIMA「夏のどこかへ」
 三ツ矢サイダー2019 CMソングとしてオンエアされている「夏のどこかへ」。WANIMAらしい爽やかさに包まれた、疾走感のある楽曲である。細かなリズムフックやタメをいくつも作ることで、最後までノリノリな気分にさせてくれる。しかし、決して疾走感だけで駆け抜けるようなナンバーではないのも特徴である。例えば、Bメロでは“オーオーオーヘィ!”というコーラスを挿入しており、ライブで一緒に歌えるパートが挟み込まれている。掛け声に合わせ、雲ひとつのない空に向けて、右手の拳を突き上げるような、そんなイメージが喚起される。


 また、「夏のどこかへ」と先述したOfficial髭男dism「宿命」の歌詞には、共通したストーリーが描かれているように感じる。メロ部分ではネガティブな心情を歌い、夏に至るまでの“弱かった自分”を印象づける。そこからサビに至るまでの流れのなかで、そのモードを克服していく。やがて、雲ひとつない青空を象徴的に描いてみせることで、夏になった今こそ“迷うことなく進むべき”というメッセージを印象的なメロディに乗せて伝える。言葉に強さが宿っているわけだ。“夏ソング”とは言えども、軽やかさや爽やかさだけではない、泥臭い“克服”の物語をそこに見て取ることができるのである。


■KEYTALK「ブルーハワイ」
 そんな中、この記事のラストに取り上げたいのがKEYTALKの「ブルーハワイ」である。この曲は、ホットペッパービューティーWeb CM「夏、脱、いつものワタシ」のテーマソングに起用されている。


 KEYTALKは「Summer Venus」や「YURAMEKI SUMMER」など、これまでも“夏”をテーマにした名曲をリリースしている。今作もそんなKEYTALKのイメージに違わぬ、爽やかで瑞々しいナンバーになっている。「夏、脱、いつものワタシ」のWeb CMの世界観にマッチしており、青春感や甘酸っぱさが滲み出ている。「ブルーハワイ」も先ほど紹介した楽曲と同じように、単なる“夏のお祭りソング”ではない切なさを内包しているように感じる。特徴的なのは、楽曲全体のテンポやコーラスワーク。“イェーイ”というコーラスを部分部分で挟み、さらにサビ終わりではミディアムな流れの中で、“オーオーオー”という合唱パートを挿入している。これにより、哀愁にも似た雰囲気を醸成している。また、このパートは明確に、夏のライブで「全員で歌うこと」をイメージして作られているように感じる。


 数年前のバンドシーンでは、夏ソングはフェスやライブで盛り上がる=躍らせることを重視していたように思う。しかし、今回紹介した3曲は“躍らせる”よりも、合唱するイメージを喚起させる曲展開になっている。一緒に歌えるようなパートを入れ込んだり、歌詞をしっかりと聴き取れるテンポで曲を展開している印象だ。これは、今のロックフェスのムードも反映しているように思うし、バンドシーンの空気が変わってきていることの現れでもあると思う。アプローチは違えども、「合唱」「強い言葉」「軽やかさだけではない切なさやネガティブさ」を感じたこの3曲は、“今年の夏のアンセム”になるかもしれない。(ロッキン・ライフの中の人)


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