『なつぞら』最終回と錯覚するほどの幸せの連続 泰樹がなつに初めて見せた涙

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2019年08月11日 06:11  リアルサウンド

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『なつぞら』写真提供=NHK

「あぁ、いい最終回だった……」


参考:広瀬すずの“ありえないような幸運”に刻まれた『なつぞら』の本質 なつと坂場の“開拓宣言”を受けて


 『なつぞら』(NHK総合)第19週「なつよ、開拓者の郷」第114回は、途中までそんな感想を胸いっぱいに抱きながら、ナレーションの「来週に続けよ」でハッとさせられる。もちろん、『なつぞら』は9月28日まであと2カ月近く続いていくのだが、一旦の最終回と思わせるほどに、8月10日放送分の第114回は終始、泣き笑いに幸せが溢れた回だった。Twitterのトレンドには「なつぞら最終回」がランクインしたほどだ。


 タイトルバックなし、これまでの朝ドラの最終回を踏襲した、エンドロールに主題歌のスピッツ「優しいあの子」が流れるといった形式が、最終回と錯覚させる一番の要因だが、第19週で積み上げられてきた幸せが一気に解放されていくのも最終回を印象付けた。第19週は、結婚を決めたなつ(広瀬すず)と坂場(中川大志)が、柴田家に挨拶をするため十勝にやってくる物語。農協の工場建設問題をきっかけに坂場が十勝の人々に馴染んでいくほかにも、門倉(板橋駿谷)と良子(富田望生)、信哉(工藤阿須加)とアナウンサーの道子(三倉茉奈)が結婚を、雪次郎(山田裕貴)が夕見子(福地桃子)にプロポーズをし、なつらと共に式を挙げるといった内容でもあった。


 第114回を細かく見ていけば、富士子(松嶋菜々子)がこれから母となるであろうなつに、子供の頃から食べてきた料理の作り方が載った愛情深いノートを渡し、「この家に奇跡を運んできてくれた」となつに感謝を告げる。なつが初めて十勝にやってきた時、嬉しさのあまりタンポポを口にしたシーンが乳製品「タンポポバター」に生き、坂場と天陽(吉沢亮)が価値観を共有する姿を目の当たりにすることでなつは2人に改めて尊敬の念を抱く。エンドロールが流れる中、親戚一同を囲み結婚写真と出来過ぎの最終回テイスト。中でも最も涙を誘うシーンが、白無垢で現れたなつに泰樹(草刈正雄)が感謝を述べるシーンだ。


 振り返れば、いつも泰樹はなつの節目になかなか姿を見せなかった。なつが勝農演劇部として演劇大会に出演した時、なつがアニメーターを目指し上京する前の送別会。千遥(清原果耶)を追ってなつが十勝に帰ってきた時、泰樹は「お前がおらんようになって、ずっと寂しい。寂しくてたまらん」とだいぶ素直になっていくが、なつを待ち続ける様子から、まだまだ本音を隠している心情が見て取れた。


「わしもお前に育ててもろた。たくさん……たくさん夢をもろた。ありがとう……。おめでとう、なつ」


 泰樹の開拓者精神は、なつのアニメーターとしての生き方に受け継がれている。東京を耕していくなつを、泰樹は自身の生き写しのように誇らしく思っていたはずだ。上京したての頃、泰樹にもらった懐中時計を握りしめ入社試験を受けていたなつにとっても、泰樹は今も目標とするかけがえのない人。結婚という人生の新たな門出に、今まで人知れずむせび泣いていた泰樹がなつの前で初めて涙を見せることは、なつという奇跡によって変わった泰樹を感じさせる。


 公式ホームページの登場人物相関図も、第19週を機に一新された。真の最終回に向けて動き出す第20週「なつよ、笑って母になれ」では、なつと坂場の新婚生活がスタート。十勝になつの式を見届けにきていた咲太郎(岡田将生)が、光子(比嘉愛未)にプロポーズをするという展開も。その陰には亜矢美(山口智子)の存在が。第20週からは、なつが母として新たな人生の岐路に立つ。(渡辺彰浩)


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