覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。
■刑務官にワイロを渡すのは、それほど珍しくはない
「今どき刑務所でワイロなんて、昭和のヤクザ映画みたいですね」
宮城刑務所で「受刑者が刑務官にワイロを渡して大福やロールケーキを差し入れさせていた」という事件があったそうで、編集者さんも驚いていました。
ホンマもう令和の時代やのに、ワイロなんて昭和モードですね。私が獄中(なか)にいた時も、さすがに現金はないですが、刑務官にゴマをすってる懲役(受刑者)はけっこういてました。そうすると、トラブルがあった時に大目に見てもらえたりしますからね。私は一貫して刑務官には媚びずに反抗的でしたが、私のことを思って厳しくしてくれる刑務官の言うことはちゃんと聞いてました。
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実はムショでは、刑務官にワイロを渡すのは、それほど珍しくはないです。時々めくれて(発覚して)、ニュースになっています。それに、獄中ではホンマに甘いものがめっちゃ食べたくて、夢にも出てくるくらいなので、この懲役の気持ちはわからないでもないです(笑)。
でも、1年くらいの間に1人の刑務官に「現金138万円」を渡すのは、高すぎる気もしますね。警察も怪しんでいるそうです。大福やロールケーキだけやなくて、別の目的があったかもしれませんね。この刑務官はもちろん懲戒免職ですが、サラ金で借金があったそうです。
それにしても、これがめくれたきっかけは「紙のメモ」やそうで、これまた昭和っぽいですね。お金をもらってた相手との「連絡メモ」が、なぜか職員の共用の机の書類に挟まってて、それを同僚に発見されたのだそうです。こんな危ないメモは、ソッコー捨てなあかんでしょう。
ニュースだけではわかりませんけど、もしかしたら、もう刑務官も関係を断ちたくて、わざと置いたのかもしれませんね。
もうひとつ気になったのは、京都刑務所の刑務官の事件です。懲役に熱湯をかけてヤケドをさせたり、「土下座」や「踊り」を強要したりしていた刑務官が懲戒免職されて、「特別公務員暴行陵虐致傷」などの容疑で書類送検されたそうです。
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こういうヘンなパワハラも昭和の匂いがしますが、これもムショでは珍しくないんですよ。残念ながら。ニュースによると、「受刑者に対して洗剤の容器に入れた熱湯をかけて全治15日間のやけどを負わせたほか、別の受刑者には土下座や踊りをするよう指示した」そうですが、その理由が「(懲役から)甘く見られたくなかった。自分の言うことを聞かせようと思った」からやそうです。
確かにほとんどの懲役は一筋縄ではいきません。刑務官もナメられてます。たとえば徳島刑務所では、懲役が文鎮や排水管パイプで懲役仲間や刑務官を殴る事件もありました。
せやから刑務官の「懲役のくせにナメんな!」的なマウンティングもわからなくはないんですが、ヤケドはやりすぎでしたね。でも、ヤケド以上に気になるのが「踊り」です。何の踊りやったんでしょうか(笑)。
こういうパワハラは、私のようなベテラン懲役(笑)でも、精神的に相当ダメージがあります。ムショはとにかく閉鎖されていて、窮屈やから、気持ちに余裕がないんです。普段では気にならへんことでもグサッとくるんです。今回の被害者がワルに染まってない人やったら、お気の毒ですね。
少子高齢化で懲役は減ってるのに、肝心なムショの処遇が昔と変わらないのですから、更生は簡単ではないですね。
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中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)」
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